臨床検査法提要 改訂第35版

臨床検査といえば「提要」! 5年ぶりの改訂!

監 修 金井 正光
編 集 奥村 伸生 / 戸塚 実 / 本田 孝行 / 矢冨 裕
編集協力 下澤 達雄 / 松田 和之 / 山内 一由
定 価 16,500円
(15,000円+税)
発行日 2020/05/10
ISBN 978-4-307-05053-1

A5判・2016頁・図数:768枚・カラー図数:589枚

在庫状況 あり

日々進歩を続ける臨床検査――長年、そのバイブルとしての役割を果たしてきた「臨床検査法提要」の、5年ぶりの改訂。検体検査から生理機能検査まで、臨床検査技師、臨床医に必要な検査のすべてを、最新の動向を踏まえてアップデートした。基準範囲、臨床判断値等も精査・更新し、試薬や機器の記載も最新の情報となっている。臨地実習から卒後教育までこの1冊で対応可能な、検査に携わるすべての医療者のための事典である。
第1章 臨床検査総論
I.臨床検査の標準化・精度保証・基準範囲
 A 標準化
 B 測定法の信頼性に関する妥当性確認
 C 精度保証・精度管理
 D 基準値・臨床判断値・臨床的有用性の評価
II.臨床検査室の第三者認定(ISO 15189)
III.検体検査の基本的測定法および測定装置
 A 光学的測定法
 B 自動生化学分析法
 C 免疫学的測定法(イムノアッセイ)
IV.採血と血液検体保存
V.POCT 検査

第2章 尿・糞便検査
I.尿検査
 A 尿の一般的取り扱い法
 B 尿の一般性状検査法
 C 試験紙法による尿スクリーニング検査
 D 異常尿成分の化学的検査法
 E 尿中化学成分の定量
 F 尿沈渣検査法
 G 尿による乱用薬物スクリーニング検査
 H 尿妊娠検査・尿排卵予知検査
 I 尿中肺炎球菌抗原検査・尿中レジオネラ抗原検査
 J 尿路結石検査法
II.糞便検査

第3章 穿刺液・髄液・精液検査
I.穿刺液検査
 A 漿膜腔液検査法
 B 関節液検査法
II.脳脊髄液(髄液)検査
III.精液検査

第4章 血球検査
I.血球計数検査
 A 用手法
 B 自動測定法
II.血球形態検査
 A 血液塗抹標本作製
 B 血液塗抹標本染色法―普通染色
 C 血球形態の観察
 D 骨髄検査
III.造血器腫瘍の臨床検査
 A 造血器腫瘍のWHO分類
 B フローサイトメトリーによる細胞表面マーカー検査
 C 染色体検査
 D 遺伝子検査
IV.溶血性貧血に関する検査
V.赤血球沈降速度

第5章 血栓・止血関連検査
I.血栓形成のしくみと検査
II.血管系および血小板機能検査
 A 検査法の種類、適応と進め方
 B 血管系検査法
 C 血小板機能検査法
III.血液凝固系の検査
 A 血液凝固検査に用いられる測定法の種類と特徴
 B 凝固系のスクリーニング検査
 C 血液凝固因子定量
 D 凝固・線溶の阻止因子
 E 凝固因子に対する獲得性抗体(凝固因子インヒビター)
 F ループスアンチコアグラント
IV.線溶系の検査
V.血栓・止血の分子マーカー
 A 凝固系の分子マーカー
 B 線溶系の分子マーカー
 C 血管内皮系の分子マーカー
 D 播種性血管内凝固
VI.血栓性素因の検査

第6章 臨床化学検査
I.血漿蛋白
 A 血漿蛋白の種類・機能・病態
 B 血漿蛋白測定法
II.非蛋白窒素化合物
III.糖質とその代謝関連物質(有機酸)
IV.血清脂質とリポ蛋白
 A 血清脂質・リポ蛋白の代謝と病態
 B 脂質代謝異常の臨床検査
 C 血清リポ蛋白分画の検査
 D 血清アポリポ蛋白の検査
 E リポ蛋白代謝関連酵素の検査
V.生体色素
VI.電解質・浸透圧・微量元素
 A 電解質(Na、K、Cl)
 B 浸透圧
 C その他の必須元素と微量元素
VII.酵素とアイソザイム測定法
 A 酵素測定法総論
 B 酵素測定法各論
VIII.腫瘍マーカー
IX.心不全マーカー・虚血性心疾患マーカー
X.骨代謝マーカー
XI.ビタミン
XII.血中薬物濃度
XIII.毒物
 A 総論
 B 各論2
XIV.栄養アセスメントとエネルギーアセスメント

第7章 体液・電解質・酸塩基平衡検査
I.体液量測定
II.電解質検査:電解質・浸透圧
III.酸塩基平衡検査
IV.輸液の基本

第8章 内分泌代謝機能検査
I.内分泌疾患の検査総論
II.視床下部―下垂体系機能検査
III.下垂体―甲状腺系機能検査
IV.副甲状腺機能検査およびその関連項目
V.下垂体―副腎皮質機能検査
VI.副腎髄質機能検査
VII.下垂体―性腺系機能検査
VIII.膵内分泌機能検査
 A 膵内分泌機能検査
 B 糖尿病の診断・治療と関連検査
IX.遺伝子検査

第9章 免疫血清検査
I.免疫グロブリン・補体系の検査
 A 免疫グロブリンの検査法
 B 補体に関する検査
II.リンパ球・食細胞(好中球)機能検査
 A リンパ球機能検査
 B 食細胞(好中球)機能検査
 C 原発性免疫不全症候群の検査
 D 自己炎症性症候群の検査
III.サイトカイン・ケモカイン・接着分子に関する検査
 A サイトカインおよびその受容体
 B ケモカインおよびその受容体
 C 接着分子
IV.アレルギーに関する検査
V.自己免疫疾患に関する検査
VI.感染症(非ウイルス性)の免疫血清検査

第10章 輸血・移植関連検査
I.輸血関連検査
 A 赤血球型検査
 B 血小板関連検査
 C 輸血の臨床
II.移植関連検査
III.HLA 検査
IV.キメリズム検査

第11章 臨床微生物検査
I.臨床細菌検査(含真菌)
 A 臨床細菌検査の基本技術
 B 抗酸菌検査
 C 真菌検査
 D 各種感染症の臨床細菌検査
II.ウイルス・リケッチア・クラミジア感染症と検査
 A ウイルス感染症と検査
 B ウイルス感染症検査法
 C 各種ウイルス感染症の検査
 D リケッチア・クラミジア感染症の検査
III.寄生虫・原虫検査
 A 寄生虫・原虫の基礎
 B 検体と検査法の選択
 C 寄生虫・原虫検査各論
IV.衛生動物
V.「感染症法」の基本構造と病原体種別・感染症類別

第12章 遺伝子関連検査・染色体検査
I.遺伝子関連検査・染色体検査総論
II.遺伝子関連検査
 A 遺伝子関連検査の実施にあたって
 B 遺伝子・核酸検査の基礎技術
 C 遺伝子・核酸検査の臨床応用
III.染色体検査
 A 染色体検査法
 B 遺伝学的検査としての染色体検査の臨床的意義

第13章 病理検査
I.組織学的検査(組織診)
II.細胞学的検査(細胞診)

第14章 消化機能検査
I.消化管検査
 A 胃機能検査
 B 吸収不良症候群関連検査
 C 蛋白漏出性胃腸症関連検査
 D 消化管内視鏡検査
II.膵機能検査
III.肝・胆道機能検査
 A 機能検査総論
 B 糖質代謝に関する検査
 C 蛋白・アミノ酸代謝に関する検査
 E ビリルビン代謝に関する検査
 F 解毒機能検査
 G 異物排泄機能検査
 H 酵素化学的検査
 I 血液凝固・線溶系の検査
 J 微量金属代謝に関する検査
 K 肝炎ウイルス関連検査
 L 免疫学的検査
 M 胆道機能検査
 N 腹腔鏡検査
 O 肝生検
IV.腹部(肝・胆・膵)画像検査
 A 肝画像検査
 B 胆道系画像検査
 C 膵画像検査

第15章 腎機能検査
I.基礎知識と検査計画
II.糸球体濾過値と腎血漿流量
III.尿細管機能検査
IV.腎・尿路の画像診断
V.泌尿器科的検査
VI.腎生検

第16章 循環機能検査
I.血圧測定法
II.末梢血管検査
III.心電図・心音図
IV.心臓超音波検査
V.心臓カテーテル法
VI.心不全マーカー検査
VII.虚血性心疾患マーカー検査
VIII.血管超音波検査(頸動脈、大動脈、腎動脈、下肢動脈、下肢静脈、バスキュラーアクセス)

第17章 呼吸(気管支・肺)機能検査
I.気管支鏡検査
II.呼吸機能検査
III.呼吸器疾患のバイオマーカー検査

第18章 神経・筋機能検査
I.筋電図
II.末梢神経伝導機能検査
III.脳波
IV.誘発電位
V.自律神経機能検査

第19章 感覚機能検査
I.聴覚機能検査
II.平衡機能検査
III.眼底検査
IV.味覚検査
V.嗅覚検査

巻末付録
各種臨床検査の基準範囲一覧
I.臨床血液検査
II.血栓・止血検査
III.臨床化学検査(血清または血漿)
IV.ホルモンと関連活性物質
V.低分子量物質のSI 単位換算基準範囲一覧
VI.免疫血清検査
VII.感染症の血清反応検査
VIII.尿検査
IX.腎機能検査
X.髄液検査
臨床検査用略語
mRNAにおけるコドン表とアミノ酸
索引
第35版 序

 本書の初版は、原著者 金井 泉(1895年生まれ、1993年没)が海軍軍医学校在職中に生物学的臨床診断学の教典として執筆し、1941年「臨床検査法提要」として金原商店(当時)から出版された。その内容は尿・血液・髄液・胃液などの検体検査のほか臓器の機能検査を含み当時のわが国における臨床検査をほぼ包括したものであった。戦後の厳しい状況下にあっても阿部 正和、小酒井 望、柴田 進、斎藤 正行、三輪 史朗ら諸先達の協力によって内容が更新され、アメリカの先端的な検査などが的確に収録され、改版が重ねられた。〔原著者 金井 泉は1983年(第29版)まで、編集者として本書の改訂に執念を燃やし続けた〕。
 監修者 金井 正光(原著者長男、1926年生まれ)は、臨床検査室としての中央検査システムが新設された1960年代より信州大学医学部附属病院中央検査部に勤務し、その管理運営・臨床検査技師の教育と研究に専念した。同時に検査の各領域の専門家の協力を得て本書の改訂・増補を続け、1993年の第30版では総頁1,984 頁の大著となり、ほぼ現在のスタイルに至った。
 この歴史ある著書を後世に受け継ぐため、2010年の第33版と2015年の第34版の改訂は奥村 伸生・戸塚 実・矢冨 裕の3名が編集を分担してきた。以来5年が経過し、臨床検査の進歩と医学・医療の発展に寄与するために、本田孝行を新たな編集者として迎え、さらに国際医療福祉大学の下澤 達雄教授、信州大学の松田 和之教授、筑波大学の山内 一由准教授の3氏に編集協力者とし加わっていただき、さらなる改訂を行ってきた。作業開始以来2年が経過し、初版刊行後80周年の節目であり、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催の記念の年に改訂第35版を上梓できることは、大変な喜びである。
 今回の改訂では、以下の4点を編集コンセプトとした。
 (1)最新の検査項目を取り入れ、臨床検査技師養成校の臨地実習や臨床検査技師の初期卒後教育に本書1冊で対応可能とする。
 (2)日本臨床検査標準化協議会(JCCLS)の「共用基準範囲」を取り入れた検査データの評価基準を採用し、必要に応じ日本人間ドック学会の「異常なし判定基準」と各専門学会の「臨床判断値」を併記する。
 (3)検体検査では読者の利便性を考慮して「コンパニオン診断と臨床検査」の章を廃し、それぞれ関係の章において遺伝子・ゲノム関連検査を記載することとし、関連して染色体・遺伝子関連検査を大幅に改訂する。また、尿沈渣検査・血液形態検査・輸血関連検査では関連専門学会のマニュアルを参考に、検査手技・判定の標準化に寄与する。さらに、臨床検査室の第三者認定(ISO 15189)について記載する。
 (4)生理検査では専門的すぎる内容は割愛し、広く行われている検査をバランス良く、わかりやすく解説し、医師・臨床検査技師以外のメディカルスタッフにも利用していただく。さらに、業務拡大により味覚検査、嗅覚検査を新規掲載する。
 改訂第34版刊行以降の臨床検査関連の主な動向は以下の通りである。
 (1)臨床検査技師の業務拡大により鼻腔拭い液や口腔粘膜など5つの検体採取と味覚検査、嗅覚検査が認められる(2015年)。
 (2)薬剤耐性対策アクションプランに基づき、院内に抗菌薬適正使用支援チームが作られる(2016年)。
 (3)造血器腫瘍のWHO 分類改訂第4版(WHO分類2017)が公表される(2017年)。
 (4)医療法改正により検体検査の分類改訂と臨床検査の品質保証・精度管理基準の明確化が法制化される(2018年)。
 (5)がんゲノム医療が開始され、中核拠点病院・拠点病院などが指定される。また、遺伝子パネル検査が保険適用となる(2019年)。
 (6)測定値の国際的利用のためにALP, LD測定法がJSCC法からIFCC法に変更される(2020年)。
 ご執筆いただいた次記(執筆者一覧)の諸先生には、本書の頁数の制約から貴重な原稿や図表の削除・修正などをお願いしたことをお詫び申し上げるとともに、ご協力に心から感謝の意を表したい。また、改訂34版までの執筆者である諸先生には貴重な写真・図・表などを転載させていただいたことに深謝する。
 現在「検査値の読み方」的な書籍は多数刊行されているが、原著者は実際に手にして検査ができる「マニュアル」であることを目指していた。このため本書の英文表記は“Kanai’s Manual of Clinical Laboratory Medicine”である。今回の改訂第35版が、臨床検査に携わる多くの臨床検査技師あるいは医師に幅広くかつ的確に利用されることを切望する。また、極力誤りのない記述に努めたが、より良い次期改編のために本書に対する忌憚のない意見をいただければ幸いである
 最後に、資料提供などで終始ご協力いただいた信州大学医学部病態解析診断学教室・附属病院臨床検査部の教職員、東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学・同医学部附属病院検査部の教職員各位に心より御礼申し上げる。また、本書の上梓に至るまで多大なご尽力をいただいた金原出版の福村 直樹社長、編集部長の吉田 真美子、芳賀 なつみ、藤嶋 也寸彦、校正担当の河合 佐知子の諸氏に深く感謝する次第である。

2020年3月
監修者 金井 正光
編者 奥村 伸生、戸塚 実、本田 孝行、矢冨 裕