必ず読めるようになる医学英語論文 究極の検索術×読解術

英語論文検索・読解のノウハウを徹底解説。読まなければ、何も始まらない。

著 者 康永 秀生
定 価 3,520円
(3,200円+税)
発行日 2021/04/27
ISBN 978-4-307-00490-9

A5判・160頁・図数:16枚

在庫状況 あり

医学英語論文を読む目的は何か? その一つは、EBMの考え方に基づいてクリニカル・クエスチョンに答え、日常診療に役立てるためであり、もう一つは自ら研究を実践し、学会発表や論文執筆に備えるためである。本書ではPubMedを使った論文の検索方法とともに、斜め読みではなく論文全体を「精読」するために必要となる“予測読み”などの実践的な読解方法を詳細に解説。これから論文を読むすべての臨床家必読の書。


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【康永秀生先生 刊行記念 Special Interview】
I 医学英語論文を読む目的
 1 医学・医療の知識を身に付けるには
 2 クリニカル・クエスチョンに答えるために論文を読む
   1. クリニカル・クエスチョンが浮かんだら
   2. EBMとは
   3. EBMを実践する5つの手順
   4. EBMに対する誤解
 3 自ら論文を書くために論文を読む

II 文献検索のスキルアップ
 1 目的に沿った文献検索
   1. ガイドライン作成のための文献検索
   2. 研究者個人が行う文献検索
 2 PubMed検索の基礎知識
   1. 文献データベースの選択
   2. PubMedとは
   3. シソーラスとMeSH
   4. PubMed Advanced Search Builder
 3 PubMed検索の実践
   1.〈実例1〉体幹部外傷の治療
   2.〈実例2〉胃癌の手術
   3. 検索結果の保存
   4. 類似論文と被引用論文
   5. 読者コメントの参照
 4 PubMed Clinical Queries

III 医学英語論文の読み方スキルアップ
 1 論文精読の勧め
   1. 斜め読み厳禁
   2. 精読する時間がないとお嘆きの方へ
 2 速読即解トレーニング
   1. スラッシュ・リーディング
   2. 速読即解のコツ
   3. 音読
   4. わからない単語の意味を類推する
   5. 英英辞典を使う
 3 予測読みの極意
   1. 論文の予測読み
   2. Introductionの予測読み
   3. Methodsの予測読み
   4. Resultsの予測読み
   5. Discussionの予測読み
   6. Abstract再現トレーニング

IV 実践・臨床研究論文の読み方
 1 論文報告ガイドライン
 2 RCT論文の読み方
   1. RCTとCONSORT声明
   2. Title/Abstract
   3. Introduction
   4. Methods
   5. Results
   6. Discussion
 3 観察研究論文の読み方
   1. 観察研究とSTROBE声明
   2. Title/Abstract
   3. Introduction
   4. Methods
   5. Results
   6. Discussion

資料 医学英語論文読解に役立つ疫学・統計基礎用語集
 1 研究デザインと報告ガイドライン
 2 ランダム化比較試験に関連する用語
 3 観察研究に関連する用語
 4 疫学・統計の基礎用語

コラム
・SNSで医学知識を身に付ける?
・製薬会社が提供する食事が医師の行動変容を起こす
・パラシュートの効果を検証したランダム化比較試験
・Cochrane Library
・Core clinical journals
・Google Scholarの使い方
・Google翻訳の実力
・この処置は全くのルーチン・ワークです
・NEJM、Lancetの面白さ
・休日・夜間の論文投稿
・エビデンスの有効期限
・STROBEの遵守率
はじめに

 本書は、医学部学生・大学院生や若手の臨床家を対象に、医学英語論文の効率的な検索の方法と、医学英語論文を読解する技術を伝授することを目的としている。
 そもそもなぜ医学英語論文を読む必要があるのか、改めて考えてみよう。
 医学英語論文を読まなくても、他の資料を読めば医学・医療の知識を身に付けることはできる。たいていの医学部学生は、教科書や国家試験対策用テキストなどを用いて基礎知識の習得に励む。国家試験合格後に医療従事者になると、研修医マニュアルや種々の診療マニュアルを読めば、より実践的な医療知識を身に付けられる。少し意識の高い臨床家は、診療ガイドラインやUpToDateなど、専門家による文献レビューをまとめた二次資料に目を通す。
 医学英語論文を読まなくても、日常臨床のルーチン・ワークはほぼ問題なく実践できてしまいそうだ。ならばなぜ、医学英語論文を読む必要があるのだろう。
 医学英語論文を読む目的のひとつは、エビデンスに基づく医療(evidence-based medicine、EBM)の考え方に基づいて、クリニカル・クエスチョン(clinical question)に答えるために最新の文献を検索し、それらの知見を日常診療における個々の患者に対する医療に役立てることである。もうひとつの目的は、学会発表や論文執筆に挑む研究者や臨床家が、すでに分かっていることは何か(What is already known?)を知り、まだ分かっていないことは何か(What remains unknown?)を見出すことである。
 とは言え、かなり意識が高い臨床家でないと、ふだんから医学英語論文を読まないようである。自らPubMedで文献検索し原著論文をダウンロードしている臨床家は、周囲の同僚に「勉強熱心だなあ」と褒められたりする。
 たいていの臨床家は(かつて筆者自身がそうであったように)せいぜい抄読会の出番が回ったときにだけ、しょうがなしなし論文を斜め読みし、プレゼンテーションに何とか間に合わせる。論文を読むこと自体がひどく時間のかかる面倒くさい作業になり、日常臨床とは関係ないやっつけ仕事になっている。
 臨床家が誰でもふつうに論文を読みこなし、日常診療に役立てるようなシチュエーションがもっとあってもいいはずである。だが実際には、なかなかそのハードルは高いようである。論文を読みたいという意欲、あるいは読まなければならないという切迫感が少しはあっても、たいていの臨床家は忙しい日常臨床に阻まれて、なかなか行動に移せない。
 筆者は、前著『必ずアクセプトされる医学英語論文 完全攻略50の鉄則』(金原出版)において、論文をまだ書いたことが無い臨床家などを対象に、「医学英語論文の書き方」について解説した。しかしそもそも医学英語論文を書くには、「医学英語論文の読み方」がしっかりと身に付いていなければならない。そこで、金原出版の編集者の助言も受けて、「医学英語論文の読み方」に焦点を当てた本書を刊行するに至った。
 本書の執筆にあたり、先行の類書をいくつかレビューしてみたところ、目を疑うような記述を発見した。いくつかの書籍が、医学英語論文の「斜め読み」を推奨している。Introductionは最後のパラグラフだけ読む。Methodsは全部飛ばす。TableとFigureを眺めたら、Resultsは読まず、Discussionの最初のパラグラフとConclusionを読めばおしまい、などと書かれている。
――とんでもない話だ。そんな読み方をしていたら、100年経っても論文をきちんと読めるようにはならない。論文を読むまとまった時間が無いからと言って、「斜め読み」をしていては、論文の内容を深く理解することはできないし、臨床能力・研究能力を養うことにもつながらない。
 本書では一貫して、 論文の「精読」を推奨している。Title/Abstractだけ読んだつもりではダメ、「斜め読み」厳禁、Introduction・Methods・Results・Discussionの隅々まで読むことを強く勧めている。論文を読む時間が足りないならば、読むべき論文を厳選し、1本1本の論文を速く読めばよい。本書は、そのスキルを身に付けるためのヒントが満載である。
 本書の構成は以下のとおりである。第I章で「医学英語論文を読む目的」を概観した後、第II章「文献検索のスキルアップ」では、最も汎用される文献検索エンジンであるPubMed を用いた検索スキルを伝授する。第III章「医学英語論文の読み方スキルアップ」では、論文精読の勧め、速読即解トレーニング、予測読みの極意を伝授する。第IV章「実践・臨床研究論文の読み方」では、ランダム化比較試験(RCT)、観察研究の論文の読み方について解説する。さらに巻末の資料として「医学英語論文読解に役立つ疫学・統計基礎用語集」を配し、本文中に引用を付した。
 本書に書かれている内容を体系的に教わったことのある臨床家はほとんどいないだろう。特に第?章は多くの読者にとって初見であるに違いない。実を言うと筆者自身も、本書に書かれている内容を誰かに教わった経験は無い。筆者だけではないだろう。本書に書かれている方法論は、論文を日常的に読みこなしている方々にとっては、既に自然に身に付いてしまっているスキルである。本書はそのスキルを体系的に言語化したものである。
 逆に言えば、既に医学英語論文を読むことに慣れている方々が本書を読んでも、あまり得るものは無いかもしれない。しかしながら、医学英語論文の検索や読解に困難を感じていたり、億劫に思っている方々にとっては、目から鱗が落ちるような新鮮な情報が詰まった一冊である。
 慣れないうちは、医学英語論文の検索・読解の作業を効率的にできず、時間がかかりすぎてしまう。しかし、慣れてしまえば決して困難な作業ではなく、さほど時間もかからない。多くの臨床家が、本書を足掛かりに、医学英語論文を日常的に読みこなせるようになっていただければ幸いである。
 最後に、本書執筆のきっかけをいただき、執筆中にも絶えず細やかなご支援をいただいた、金原出版の編集者である須之内和也氏に心からお礼を申し上げる。

2021年3月
康永 秀生