皮膚科の臨床

角化症・炎症性角化症

2010年12月号(52巻 13号)

企 画
定 価 2,916円
(本体2,700円+税)
在庫状況 なし
  • 定期購読のご案内
  • 次号予告
  • 最新号
  • 投稿規定
  • 臨時増刊号一覧

特集 角化症・炎症性角化症
Bath PUVA療法を併用しコントロールした尋常性乾癬の2例
藤井 麻莉子
乾癬性関節炎を伴い抗環状シトルリン化ペプチド抗体が陽性であった汎発性膿疱性乾癬の1例
河畑 知穂
低用量シクロスポリン内服が奏効した小児膿疱性乾癬の1例
森本 里江子
シクロスポリンが有効であった毛孔性紅色粃糠疹の1例
神谷 将吾
治療に苦慮した毛孔性紅色粃糠疹の1例
政次 朝子
掌蹠に病変を認めた扁平苔癬の2例
金澤 典子
線状扁平苔癬の2例
大島 昇
間擦部に生じたGranular Parakeratosisの1例
飯田 沙織
■Clinicolor
乳輪に生じた基底細胞上皮腫
横田 美樹
■巻頭言
これから皮膚科の道を歩む先生方へ
狩野 俊幸
■最終講義
私の色素細胞と悪性黒色腫に関する研究
富田 靖
■臨床研究
当院における難治性脱毛症患者39例の検討−第2報:Squaric Acid Dibutylester(SADBE)による局所免疫療法の治療成績−
岸本 和裕
■治療
放射線治療が著効した足底基底細胞癌の1例
柴山 慶継
■随想
杢太郎」落ち穂拾い(24)「米惣」
上野 賢一
■書評
『皮膚科の似たもの同士:目で見る鑑別診断』(学研メディカル秀潤社)
五十嵐 敦之
『Color Atlas of Chronic Arsenic Posoning−目で見る砒素中毒−』(特定医療法人 桜が丘病院出版部)
速水 真理子
■症例
ナジフロキサシンクリーム外用後に発症した接触皮膚炎症候群
岸本 和裕
急性腎不全をきたしたカルバマゼピンによる薬剤性過敏症症候群の1例
西脇 薫
カルバマゼピンによる薬剤性過敏症症候群に伴い発症した劇症1型糖尿病の1例
塩見 彩子
頭部に壊死性潰瘍を生じたCalciphylaxis
荒木 麻由子
片側眼瞼浮腫より診断に至った甲状腺機能低下症の1例
黒川 麻里子
皮膚Mycobacterium abscessus感染症の1例
竹腰 知紀
板状硬結を呈し塩酸ミノサイクリンとトラニラストの内服が奏効した皮下型サルコイドーシスの1例
重松 由紀子
Dermatosis Papulosa Albaの3例
奥村 優香
Benign Cephalic Histiocytosisの1例
福田 博美
筋周皮腫(Myopericytoma)の1例
村瀬 香奈
診断および治療に皮膚超音波検査が有用であったリンパ管腫の2例
正木 太朗
乳輪・乳頭に生じた基底細胞上皮腫の2例
横田 美樹
隆起性皮膚線維肉腫の1例−皮膚超音波カラードプラ所見の検討−
比留間 梓
■Mini Report
いわゆる妊娠線予防クリームによる接触皮膚炎の2例
小泉 秀華
ボルテゾミブにより生じた薬疹の1例
緒方 亜紀
好中球性紅斑の1例
角田 孝彦
浅側頭動脈上に生じたAngiolymphoid Hyperplasia with Eosinophiliaの1例
永瀬 浩太郎
Hyperkeratosis of Nipple and Areolaの1例
能登 舞
マキサカルシトール軟膏外用が著効したStucco Keratosisの1例
太田 美和
口腔内と皮膚に生じた顆粒細胞腫の1例
長谷井 麻希
術後8年目に多発転移を生じた悪性黒色腫の1例
谷口 友則
 発疹の形状や配置はいろいろな形容語句で修飾されます。それは、衆知な事象を想起させることによって、饒舌な記載抜きでもイメージが一瞬にして浮かぶという利点があるからです。
 
 網目状と聞けば、おそらく誰でもほぼ同じパターンを連想するでしょう。ただ、その網目が魚焼きの網か、餅焼き網か、魚網か、洗濯物を入れるネット、頭髪固定用のネットか、はたまた昆虫採取用の網か、それは個人個人が日常的にどのタイプの網になじんでいるかによって異なります。しかしいず
れにしても、一定の共通した認識は得られるはずです。
 
 ただし、言葉の発信者と受け取り手の認識・背景に差があるとそうとは限りません。ライラックリングと言われても、ライラック(リラ)の花を見たことがない人にはその色は想起できません。ヨーロッパ原産の樹木であり、アジアやアフリカなどには自生していなかったのですから、本来は限局的にしか通用しない形容語句となります。私(大原)も、札幌の北大植物園で実物を見るまでは具体的なイメージは浮かびませんでした。余談ですが、ライラックの開花時期の冷え込みを、札幌では"リラ冷え"と呼ぶそうで、これも"ご当地言葉"のひとつとなります。
 
 表皮内に腫瘍細胞が不規則に個別増殖する様子を、buck shotとたとえる言い方もあります。これとて"大粒の散弾銃の痕"なわけですから、猟銃保持者以外の一般人には西部劇やギャング映画でしかお目にかからない映像です。この用語をすんなり使う人は、普段から銃器に慣れているのだろうかと想像してしまいます。
 
 そして、クリスマスツリー様の配列という表現も、私にはいささか気になる言い回しです。左右対称性で、皮膚割線に沿って斜め方向に配列する、大きさのほぼ揃った多発性発疹、といったまわりくどい言い方をしなくても、発疹の性状がたやすく理解できる用語です。現代の日本では、12月ともなればクリスマスツリーはいたるところで見受けるようになったので、便利な表現であることはたしかです。しかし、クリスマスは本来イエスキリストの誕生祭であることを考えれば、はたして global地球規模・全世界的に受け入れられるのでしょうか。寛容な仏教徒はまだしも、赤道地域やイスラム圏内でもイメージできたり、用語としての使用が許されるのでしょうか。この用語を使う人がこれには宗教的な意味はないと言っても、受け取る側がそう考えなければ、解釈は平行線のままです。こんなことをあげつらうのは瑣末的と考えるか、大事なことと考えるか、それも様々かもしれません。ただ、自分が意識的に使う言葉が、相手に予期せぬ印象・効果を与える可能性に配慮しておくほうがよいでしょう。

 キリスト教的な考え方、事物は必ずしも普遍的なものではないので、それを無意識的であれ他者に強要するべきではありません。

(大原國章)