卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2020年版 第5版

5年ぶりの改訂!卵巣がんに関する最新情報をアップデート

編 集 日本婦人科腫瘍学会
定 価 3,740円
(3,400円+税)
発行日 2020/08/30
ISBN 978-4-307-30143-5

B5判・224頁・図数:3枚

在庫状況 あり

5年ぶりの改訂となる2020年版では、検索式を用いた網羅的な文献検索を行いアップデート。妊孕性温存や漿液性卵管上皮内癌(STIC)、分子標的治療薬、PARP阻害薬などに関する新たな情報も追加され、手術療法、薬物療法に関するCQが大幅に更新されたほか、「推奨の強さ」の表記は「推奨する」「提案する」に一新された。臨床現場ですぐに役立つ治療フローチャート、計45のCQを収載している。
CQ、推奨一覧
フローチャート 1 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の治療
フローチャート 2 再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の治療
フローチャート 3 上皮性境界悪性卵巣腫瘍の治療
フローチャート 4 悪性卵巣胚細胞腫瘍の治療
フローチャート 5 性索間質性腫瘍の治療

■本ガイドラインにおける基本事項
I 進行期分類/II リンパ節の部位と名称/III 組織学的分類/IV 治療/V Oncofertility/VI 緩和ケア

■第1章 ガイドライン総説

■第2章 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌
総説
CQ 01 I期からIIA 期と考えられる患者に対して、どのような進行期決定開腹手術が奨められるか?
CQ 02 術前にIIB 期以上と考えられる患者に対して、primary debulking surgery(PDS)は奨められるか?
CQ 03 IIB 期以上と考えられる患者に対する初回手術で、骨盤・傍大動脈リンパ節郭清は奨められるか?
CQ 04 初回手術(PDS)でsuboptimal surgeryとなった進行例に対して、interval debulking surgery(IDS)は奨められるか?
CQ 05 進行例に対して、primary debulking surgery(PDS)の代わりに術前化学療法(NAC)+interval debulking surgery(IDS)を行うことは奨められるか?
CQ 06 妊孕性温存を希望する患者に、温存治療は奨められるか?
CQ 07 卵巣癌に対して、開腹手術の代わりに腹腔鏡下手術は奨められるか?
CQ 08 腹腔内播種を有すると考えられる患者に対して、診断目的の腹腔鏡下手術は奨められるか?
CQ 09 術式を決定するために、術中迅速病理診断を行うことは奨められるか?
CQ 10 術後に卵巣癌と判明した患者に対して、どのような追加治療が奨められるか?
CQ 11 初回薬物療法を行う場合、どのようなレジメンが奨められるか?
CQ 12 初回手術とその後の化学療法により完全寛解が得られた場合、維持療法は奨められるか?
CQ 13 初回手術とその後の化学療法により腫瘍が残存した場合、追加治療は奨められるか?
CQ 14 初回化学療法としてパクリタキセルとカルボプラチン併用療法(conventional TC療法、dose-dense TC療法)を施行できない場合に、どのようなレジメンが奨められるか?
CQ 15 I期患者に対して、術後化学療法の省略は奨められるか?
CQ 16 組織型別に化学療法のレジメンを変更することは奨められるか?
CQ 17 進行例に対して初回化学療法を行う場合、腹腔内化学療法は奨められるか?
CQ 18 化学療法による過敏性反応(HSR)が生じた場合、同一あるいは同系統の薬剤の投与は可能か?
CQ 19 治療後の経過観察で推奨される間隔は?
CQ 20 治療後の問診、内診、腫瘍マーカー測定、画像検査は奨められるか?
CQ 21 経過観察中に無症状でCA125が上昇した場合、治療は奨められるか?
CQ 22 卵巣癌治療中や治療終了後にホルモン補充療法(HRT)は奨められるか?
CQ 23 乳癌未発症のBRCA1 あるいはBRCA2 変異保持者に対して、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)は奨められるか?

■第3章 再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌
総説
CQ 24 プラチナ製剤抵抗性再発で推奨される薬物療法のレジメンは?
CQ 25 プラチナ製剤感受性再発で推奨される薬物療法のレジメンは?
CQ 26 再発患者に対して手術療法は奨められるか?
CQ 27 手術適応のない再発患者に対して放射線治療は奨められるか?
CQ 28 腸閉塞に対して手術療法、薬物療法は奨められるか?
CQ 29 腹水貯留に対して薬物療法、腹水ドレナージは奨められるか?
CQ 30 3rdライン以降の化学療法が検討される患者に対して、化学療法をさらに行うことは奨められるか?

■第4章 上皮性境界悪性腫瘍
総説
CQ 31 片側付属器摘出術後に境界悪性腫瘍と判明した場合、追加手術は奨められるか?
CQ 32 腫瘍核出術後に境界悪性腫瘍と判明した場合、どのような妊孕性温存治療が奨められるか?
CQ 33 上皮性境界悪性腫瘍患者に、術後化学療法は奨められるか?
CQ 34 上皮性境界悪性腫瘍治療後は、長期間の経過観察が奨められるか?
CQ 35 上皮性境界悪性腫瘍治療後の再発に対して、手術は奨められるか?

■第5章 胚細胞腫瘍
総説
CQ 36 悪性卵巣胚細胞腫瘍に対して、腫瘍減量手術は奨められるか?
CQ 37 悪性卵巣胚細胞腫瘍に対して、妊孕性温存を必要とする患者では妊孕性温存手術は奨められるか?
CQ 38 悪性卵巣胚細胞腫瘍に対して、術後化学療法は奨められるか?
CQ 39 悪性卵巣胚細胞腫瘍の初回化学療法後の再発例に対して、化学療法、手術療法、もしくは放射線治療は奨められるか?
CQ 40 悪性卵巣胚細胞腫瘍に対する化学療法後の経過観察で留意すべき点は?

■第6章 性索間質性腫瘍
総説
CQ 41 性索間質性腫瘍に対して、どのような術式が奨められるか?
CQ 42 性索間質性腫瘍に対して、妊孕性温存を必要とする患者では妊孕性温存手術は奨められるか?
CQ 43 性索間質性腫瘍に対して、術後化学療法もしくは術後放射線治療は奨められるか?
CQ 44 性索間質性腫瘍の初回化学療法後の再発例に対して、薬物療法、手術療法、もしくは放射線治療は奨められるか?
CQ 45 性索間質性腫瘍治療後の経過観察で留意すべき点は?

■第7章 資料集
I 略語一覧
II 日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会業績
III 既刊の序文・委員一覧

索引
 日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会が2002年に設置され、初版の『卵巣がん治療ガイドライン2004年版』、『子宮体癌治療ガイドライン2006年版』、そして『子宮頸癌治療ガイドライン2007年版』が刊行され、婦人科がんの中で最後に残っていた『外陰がん・腟がん治療ガイドライン2015年版』が発刊されました。現在は卵巣がん2015年版(第4版)、子宮頸癌2017年版(第3版)、子宮体がん2018年版(第4版)が臨床の現場で活用されております。今回5年の歳月を経て、名前を変更し『卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版(第5版)』の発刊に至りました。最初のガイドライン発刊より16年が経過しており、とても感慨深く感じられます。

 今回の改訂では、「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」にできる限り準拠して行うことを目標にいたしました。そのポイントは、(1)作成委員として医師以外に看護師、薬剤師、患者、一般の方(女性、男性)に参加頂いたこと、(2)CQにPICO形式を導入したこと、(3)推奨グレード・エビデンスの表現法を変更したこと、(4)エビデンス総体の考え方を導入したこと、(5)参考文献は研究デザインで分類したこと、(6)一部のCQについてSystematic Reviewを施行したこと、(7)各CQ・推奨について投票を行い、合意率を推奨の後に記載したこと、などです。第1章 総説にその作成手順が詳細に記載されております。是非お読み頂きたく思います。

 診療ガイドラインとは、診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考慮して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書と定義されています。つまり、医療とは、臨床研究によるエビデンス、医療者の専門性・熟練度と患者の価値観、状況・環境(個々の患者の臨床状況と、医療の行われる場)の4要素を統合し意思決定の上、よりよい患者ケアを目指し行われるものであります。この意思決定は、医療における協働意思決定(shared decision-making in medicine;SDM)といわれています。以前は、医師が患者に何をすべきかについて指示し、患者が治療における決定に参加することは、めったにありませんでした。これからのガイドラインは、上記のSDMを支援するための最適な推奨を提示するものであります。現在のこの新しい考え方が、子宮体癌治療ガイドライン2006年版(第1版)の序文に「実際の臨床における治療法の選択は、個々の症例や患者および家族の意向にも考慮して、ガイドラインを参考にしたうえで医師の裁量で行われるべきものと考える」とすでに記載されており、婦人科がんのガイドラインを作成してきた先輩方の思慮の深さに感嘆しております。

 最善を尽くして完成させたガイドラインでありますが、日本婦人科腫瘍学会会員諸氏、本書を手にされた多くの方々、そしてご後援頂いた日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産科婦人科内視鏡学会、婦人科悪性腫瘍研究機構、日本放射線腫瘍学会、日本病理学会にさらなるご叱正を請いながら、次の改訂に繋げていくことは申すに及びません。

 今回の作成にあたり、前委員長 片渕秀隆教授には常に貴重で的確なご助言を頂きました。また、作成のパートナーである永瀬智副委員長、そして、小林陽一担当理事、田畑務担当理事、佐藤豊実、平嶋泰之、松村謙臣、横山良仁、川名敬、京哲の各小委員長、金内優典主幹事、徳永英樹幹事、各CQ担当ガイドライン作成委員、Systematic Review担当作成委員、外部作成委員各位の懸命且つ献身的なご尽力に深甚なる謝意を表します。さらに、理事会、代議員会、会員の皆様の暖かいご支援に心からお礼申し上げます。最後に、編集の過程で昼夜を問わずご苦労頂いた本学会事務局の安田利恵さん、ならびに金原出版株式会社編集部の安達友里子さんをはじめ関係の方々に感謝申し上げます。

2020年7月
日本婦人科腫瘍学会ガイドライン委員会
委員長 三上 幹男