形成外科診療ガイドライン5 頭蓋顎顔面疾患(主に後天性) 顔面外傷/顔面変形(骨切り手術)

EBM視点で初めて作成された形成外科領域の診療ガイドライン。

編 集 日本形成外科学会 / 日本創傷外科学会 / 日本頭蓋顎顔面外科学会
定 価 3,850円
(3,500円+税)
発行日 2015/08/19
ISBN 978-4-307-25718-3

B5判・200頁

在庫状況 あり

本巻は2編で構成。「I編:顔面外傷」は上顎骨骨折、下顎骨骨折、頬骨骨折、眼窩底骨折、鼻骨・鼻篩骨骨折を取り上げた。「II編:顔面変形(骨切り手術)」は、一般的な対象疾患である上顎後退症、下顎後退症、下顎前突症を主対象とし、診療上の指針は、別途「顎顔面変形の診断」として取り上げた。上・下顎に関わる顎顔面外科的疾患への骨切り術が主対象だが、今後の発展を期待し「顎顔面変形」でなく「顔面変形」とした。

 ガイドライン作成にあたって
 ガイドラインについて

第I編 顔面外傷診療ガイドライン
 作成にあたって

1章 上顎骨骨折
 はじめに
 1.診 断
  CQ1 咬合異常・顔面変形・知覚障害は生じるか?
  CQ2 単純X線画像は有用か?
  CQ3 2次元CT画像は有用か?
  CQ4 3次元CT画像は有用か?
  CQ5 合併損傷が起こるか?
 2.手術適応
  CQ6 咬合異常の手術適応基準はあるか?
  CQ7 知覚異常は手術適応基準となるか?
  CQ8 形態異常の手術適応基準はあるか?
  CQ9 転位のない場合は手術を適応するか?
 3.アプローチと整復
  CQ10 Le Fort分類はアプローチの選択に有用か?
  CQ11 矢状骨折の整復に臼歯部の引き寄せは有効か?
  CQ12 整復に顎間固定は有効か?
  CQ13 整復が困難な症例に対して Le FortI型骨切り術は有効か?
 4.固定部位
  CQ14 Le Fort I型骨折に2点固定((1)梨状口縁部+(2)頬骨下稜部)は有効か?
  CQ15 Le Fort II型骨折に3点固定((1)上顎前頭縫合部+(2)眼窩下縁+(3)頬骨下稜部)は有効か?
  CQ16 Le Fort III型骨折に3点固定((1)上顎前頭縫合部+(2)頬骨前頭縫合部+(3)頬骨部)は有効か?
  CQ17 Le Fort骨折の固定に創外固定器は有効か?
 5.固定材料
  CQ18 上顎骨骨折の固定材料としての軟鋼線は有効か?
  CQ19 固定材料としてのチタンプレートは有効か?
  CQ20 固定材料としての吸収性プレートは有効か?
  CQ21 固定材料のチタンプレートや軟鋼線が合併症の原因と考えられる場合、除去は必要か?

2章 下顎骨骨折
 はじめに
 1.診 断
  CQ22 不正咬合は診断に有用か?
  CQ23 単純X線画像は有用か?
  CQ24 CT画像は有用か?
  CQ25 MRI画像は有用か?
  CQ26 合併損傷は起きるか?
 2.手術適応
  CQ27 咬合異常は手術適応基準となるか?
  CQ28 開口障害は手術適応基準となるか?
  CQ29 年齢は手術適応基準となるか?
  CQ30 関節突起骨折の手術適応基準はあるか?
 3.治療法の選択
  CQ31 転位のない骨折に包帯固定は有効か?
  CQ32 転位がないか少ない骨折に、顎間固定およびプレート固定は有効か?
  CQ33 転位がある骨折に顎間固定およびプレート固定は有効か?
 4.手術的アプローチ
  CQ34 体部、角部、下顎枝の骨折に口腔内・経皮的アプローチは有効か?
  CQ35 関節突起骨折に口腔内・経皮的アプローチは有効か?
 5.固定法・固定材料
  CQ36 術後の顎間固定にIMF(intermaxillary fixation)スクリューは有効か?
  CQ37 骨折の内固定材料として金属プレートは有効か?
  CQ38 骨折の内固定材料として吸収性プレートは有効か?
 6.小児の下顎骨骨折
  CQ39 保存的療法は有効か?
  CQ40 手術適応はあるか?
  CQ41 吸収性プレートは有効か?
  CQ42 関節突起骨折受傷後のリモデリングは起こるか?

3章 頬骨骨折
 はじめに
 1.診 断
  CQ43 頬部の扁平化は頬骨骨折を疑う根拠となるか?
  CQ44 上口唇の知覚異常は頬骨骨折を疑う根拠となるか?
  CQ45 開口障害は出現するか?
  CQ46 眼球運動障害は出現するか?
  CQ47 診断に有用な単純X線画像撮影法は何か?
  CQ48 診断において2次元CT画像はどのような点で有用か?
  CQ49 3次元CT画像は他の診断・評価方法と比較して有用か?
  CQ50 エコーは診断において有用か?
 2.手術適応
  CQ51 骨片の転位による顔面形態異常の基準は存在するか?
  CQ52 骨片の転位がない場合は保存的に治療可能か?
  CQ53 顔面形態異常(眼球陥凹、眼球低位、外眼角下垂、頬部扁平化、顔面横径拡大)に整復固定術は有効か?
  CQ54 眼窩下神経領域の知覚異常に整復固定術は有効か?
  CQ55 開口障害に整復固定術は有効か?
  CQ56 眼球運動障害に整復固定術は有効か?
  CQ57 整復固定術を行うべき時期はいつか?
 3.アプローチと整復
  CQ58 Knight and North分類(K&N分類)は治療法の選択に有用か?
  CQ59 眼窩外側縁へのアプローチ法に優位性はあるか?
  CQ60 眼窩下縁へのアプローチ法に優位性はあるか?
  CQ61 上口腔前庭切開は頬骨下稜へのアプローチに有効か?
  CQ62 tripod 型骨折において冠状切開は頬骨弓へのアプローチに有効か?
  CQ63 観血的整復は非観血的整復に比べて治療成績が良いか?
  CQ64 眼窩外側縁の整復法に優位性はあるか?
  CQ65 眼窩下縁の整復法に優位性はあるか?
  CQ66 頬骨下稜の整復法に優位性はあるか?
  CQ67 頬骨弓の整復法に優位性はあるか?
  CQ68 術中整復の確認は何カ所で行うとよいか?
  CQ69 画像診断(単純X線、エコー、CTなど)は術中整復の確認に有用か?
 4.固定部位
  CQ70 頬骨tripod骨折に、3点固定((1)頬骨前頭縫合部、(2)眼窩下縁、(3)頬骨下稜部)は有効か?
  CQ71 頬骨 tripod骨折に、2点固定((1)頬骨前頭縫合部+(2)眼窩下縁、または(1)頬骨前頭縫合部+(3)頬骨下稜部、または(2)眼窩下縁+(3)頬骨下稜部)は有効か?
  CQ72 頬骨 tripod骨折に、1点固定((1)頬骨前頭縫合部、(2)眼窩下縁、(3)頬骨下稜部のいずれか) は有効か?
  CQ73 頬骨 tripod骨折に、頬骨ピンニングによる骨固定は有効か?
  CQ74  頬骨 tripod骨折に、頬骨弓の固定は必要か?
  CQ75 頬骨弓単独骨折に固定は必要か?
 6.固定材料
  CQ76 固定にミニプレートは有効か?
  CQ77 固定にマイクロプレートは有効か?
  CQ78 チタンプレートの抜釘は必要か?
  CQ79 固定に吸収性プレートは有効か?
  CQ80 固定にチタンプレートと吸収性プレートを併用することは有効か?

4章 眼窩底骨折
 はじめに
 1.診断
  CQ81 頻度の高い症状は何か?
  CQ82 Forced Duction Test(FDT)は術前検査として有用か?
  CQ83 診断に有用な画像検査は何か?
  CQ84 CT撮影で有用な撮影方法は何か?
 2.治療
  CQ85 自覚症状から手術適応を判断することができるか?
  CQ86 眼球運動障害の程度から手術適応を判断することができるか?
  CQ87 眼球陥凹の程度から手術適応を判断することができるか?
  CQ88 画像検査から手術適応を判断することができるか?
  CQ89 骨折型によって手術適応の判断基準は異なってくるのか?
  CQ90 受傷後いつまでに手術の適否を決めるべきか?
  CQ91 経結膜アプローチは、経皮アプローチより推奨されるか?
  CQ92 瞼縁切開法は下眼瞼切開法より推奨されるか?
  CQ93 経上顎洞法は経結膜法や経皮法と比べて推奨されるか?
 3.再建材料
  CQ94 自家硬組織と人工物はいずれが有効か?
  CQ95 自家硬組織はどこから採取するのがよいか?
  CQ96 適切な人工物の材質は何か?
 4.小児眼窩底骨折
  CQ97 下直筋の嵌頓を鑑別するには、CT画像とMRI画像とのいずれが有用か?
  CQ98 下直筋の嵌頓があった場合、手術までに許される時間はどれくらいか?
  CQ99 下直筋の嵌頓がない場合、手術適応はあるか? あるとすればどれくらいの時間的余裕があるか?
  CQ100 骨移植による眼窩底再建の必要性はあるか?

5章 鼻骨・鼻篩骨骨折
 はじめに
 1.臨床症状・合併損傷
  CQ101 鼻変形は、鼻骨・鼻篩骨・鼻中隔骨折の診断の根拠となるか?
  CQ102 鼻閉は、鼻骨・鼻篩骨・鼻中隔骨折の診断の根拠となるか?
  CQ103 鼻篩骨骨折では鼻涙管損傷は生じるか?
  CQ104 鼻篩骨骨折では内眼角靱帯損傷は生じるか?
 2.画像診断
  CQ105 鼻骨・鼻篩骨骨折の診断に、単純X線画像は有用か?
  CQ106 鼻骨・鼻篩骨骨折の診断に、CT画像は有用か?
  CQ107 鼻骨骨折の診断に、エコーは有用か?
 3.治療法の選択・手術適応
  CQ108 鼻骨骨折の骨折型によって手術適応は異なるか?
  CQ109 鼻篩骨骨折の骨折型によって手術適応は異なるか?
  CQ110 鼻骨骨折に伴う鼻中隔転位の整復は有効か?
 4.鼻篩骨骨折の手術法
  CQ111 アプローチでは、冠状切開法と局所切開法とのいずれが有効か?
  CQ112 粉砕骨折の手術では、一期的骨移植が有効か?
  CQ113 手術では、内眼角間固定(intercanthal fixation)は有効か?
 5.鼻骨骨折の固定法・固定材料
  CQ114 整復後には鼻腔内固定は有効か?
  CQ115 整復後には鼻腔外固定は有効か?
  CQ116 整復後の固定に、キルシュナー鋼線刺入法は有効か?

第II編 顔面変形(骨切り手術)診療ガイドライン
 作成にあたって

 1章 顎顔面変形の診断
  CQ1 顎顔面変形の診断と手術適応決定に頭部X線規格写真(セファログラム)分析は有用か?  118
  CQ2 顎顔面変形の診断と手術適応決定に2次元、および3次元CTは有用か?
  CQ3 顎顔面変形の診断と手術適応決定にMRIは有用か?
  CQ4 顎顔面変形の診断に顎模型を用いた咬合分析は有用か?
  CQ5 顎顔面変形の診断に咀嚼機能検査、顎運動検査は有用か?
  CQ6 顎顔面変形の診断に顔貌の写真分析は有用か?
  CQ7 顎顔面変形の診断に3Dモデルは有用か?

2章 上顎後退症
 1.手術適応
  CQ8 一期的前方移動術(Le Fort I型)は有用か?
  CQ9 上顎後退症に骨延長術は有効か?
  CQ10 一期的前方移動術を行う適応年齢はあるか?
  CQ11 混合歯列期に骨延長術を行うことは可能か?
  CQ12 下顎骨骨切り術の併用は有効か?
 2.骨切り手技
  CQ13 上顎骨骨切り術において、両側の大口蓋動脈を損傷しても上顎の血流に問題はないか?
  CQ14 上顎骨骨切り術による一期的な前方移動量の限界はどれほどか?
  CQ15 上顎骨骨切り術による前方移動後の固定に吸収性プレートは有効か?
  CQ16 上顎骨切り術後の骨延長において内固定型延長装置は外固定型骨延長装置よりも有効か?
 3.術前術後管理
  CQ17 術前矯正は有効か?
  CQ18 上顎の前方移動により生じる鼻翼間距離の開大の予防に鼻翼間縫合は有効か?
  CQ19 口蓋裂に伴う上顎後退症に前方移動を行う際、骨延長法は一期的前方移動法に比べて鼻咽腔閉鎖機能の悪化を避ける方法として有効か?
  CQ20 口蓋裂などの上顎劣成長の強い場合に上顎前方移動を行う際、骨延長法は術後の後戻りを防ぐ手段として一期的前方移動法に比べて有効か?
  CQ21 上顎の骨切り術において、低血圧麻酔は術中の出血量の減少に有効か?

3章 下顎後退症、小顎症
 1.手術適応
  CQ22 気道閉塞症状のない下顎後退症では成長終了後に手術を行うことが望ましいか?
  CQ23 下顎後退症の手術治療において下顎枝矢状分割術は有効か?
  CQ24 下顎後退症の手術治療において仮骨延長法は有効か?
  CQ25 下顎後退症の手術治療において頤形成術は有効か?
 2.骨切り手技
  CQ26 下顎後退症に対する骨固定法において吸収性材料による固定は勧められるか?
  CQ27 下顎後退症に対する骨固定法では、チタンプレートによるmonocortical固定はスクリューによるbicortical固定と同等の下顎安定性があるか?
CQ28 下顎後退症に対する下顎枝矢状分割術骨での固定法では、rigid fixationの方がワイヤーによるloose fixationより下顎安定性に優れているか?
  CQ29 頤形成術にシリコンインプラントの適応はあるか?
  CQ30 下顎後退症に対する下顎枝矢状分割術術後には rigid fixationを行っていても顎間固定は 勧められるか?
  CQ31 下顎後退症に対して下顎前進術を行う場合、下顎枝矢状分割術単独と比べて、頤形成術の併用は後戻りを増大させることはないか?
 3.術前術後管理
  CQ32 下顎骨矢状分割骨切り術後の神経障害の治療法として知覚の再教育訓練は
推奨されるか?
  CQ33 下顎後退症の手術的治療において自己血輸血の準備をすることが有効な症例はあるか?
  CQ34 下顎後退症に対する下顎前進術後は下顎頭の吸収に注意が必要か?
 4.気道閉塞に対する治療
  CQ35 小顎症による気道閉塞に対する手術適応決定に複数の検査は必要か?
  CQ36 小顎症における気道閉塞に対して舌固定術や経鼻エアウェイは気管切開の回避に有効か?
  CQ37 下顎仮骨延長手術は小顎症における気道閉塞改善に有効か?
  CQ38 小顎症に伴う気道閉塞改善を目的とする下顎骨延長手術の適応年齢はあるか?
  CQ39 小顎症の気道閉塞改善を目的とする下顎仮骨延長において、内固定型延長器と外固定型延長器による効果に差があるか?
  CQ40 頤形成(頤前進術)は小顎症の気道閉塞の改善に有効か?
  CQ41 小顎症の気道閉塞改善に対して口腔底筋の剥離は有効か?
  CQ42 小顎症の気道閉塞改善に対する治療アルゴリズムは勧められるか?

4章 下顎前突症
 1.手術適応
  CQ43 下顎枝矢状分割術は、下顎枝垂直骨切り術と比較して下顎頭の良好な復位に有効か?
  CQ44 下顎枝矢状分割術は、下顎枝垂直骨切り術と比較して下顎の術後安定性に有効か?
 2.骨切り手技
  CQ45 下顎枝矢状分割術におけるloose fixationとrigid fixationではどちらが下顎頭関節頭の良好な復位に有効か?
  CQ46 下顎枝矢状分割術におけるrigid fixationは、loose fixationと比較し、下顎位の安定に有効か?
  CQ47 SSRO(sagittal split ramus osteotomy)における近位骨片の復位法とこれをしない方法では どちらが下顎頭関節頭の良好な復位と下顎の安定性に有効か?
  CQ48 Rigid Fixationを行った下顎枝矢状分割術後における術後安定性に、1週間以上の顎間固定期 間は必要か?
  CQ49 吸収性デバイスは非吸収性デバイスと比較し、術後の下顎位の安定に有効か?
3.術前術後管理
  CQ50 下顎前突症の手術に際して、同種血輸血の可能性を低くするために自己血輸血の準備は有効か?
  CQ51 下顎前突症に対する骨切り手術後の下歯槽神経麻痺の発生に骨固定法の違いは影響するか?
  CQ52 下顎前突症に対して下顎枝垂直骨切り術を選択することは、下顎枝矢状分割術と比較して、術後下歯槽神経麻痺の発生率を下げるか?
  CQ53 下顎骨骨切り術後の下歯槽神経麻痺の軽減にビタミンB12製剤の内服薬投与は有効か?


 この度、金原出版のご協力をいただき、日本形成外科学会診療ガイドラインを刊行する運びとなりました。本ガイドラインの作成にご尽力いただいたガイドライン作成部会の清川兼輔部会長をはじめ委員の先生方に厚く御礼を申し上げます。
 この診療ガイドラインは2009年に具体化いたしました。きっかけは、経験が重視されがちであった形成外科診療について、エビデンスに基づいた標準的診断・治療を示す時期が来ているとの認識からでした。まず、委員会が作られ、それぞれの領域ごとに担当していただく責任者、担当委員を選任し、クリニカルクエスチョン(CQ)の設定、文献のエビデンスレベルからみた推奨度の決定まで、先生方には大変ご尽力をいただきました。また、形成外科学会に加えて関連学会である日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会にも分担をお願いいたしました。そして、ガイドライン作成を通して形成外科学会とその関連二学会との密接な連携がはかられました。今後も三学会が連携して日本の形成外科の発展に貢献していければと思います。
 2010年からは、領域ごとのガイドラインシンポジウムを日本形成外科学会、日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会で開催し、その後、会員からのパブリックコメントを募集し、最終案の決定にいたっております。そして、シンポジウム開始より約5年を経て形成外科がカバーするすべての領域のガイドラインが完成いたしました。今回刊行するガイドラインシリーズは全7巻で構成されます。ただし、熱傷、褥瘡および血管腫の3分野に関してはすでに完成され、日本形成外科学会も関わって他の機関で公開されておりますので、このシリーズには含まれておりません。ご理解のほどをお願いいたします。
 従来、経験に基づく診療が主な領域であったために、エビデンスレベルに基づいた推奨度も残念ながらCレベルが多い結果となりました。今後の課題としては、形成外科診療にとって重要なCQのエビデンスレベルを明確にしていかなければならないと思います。そして、この課題を個人的な研究だけに任せるのではなく、日本形成外科学会および関連学会が主導する立場でこの課題に取り組まなければならないと思います。今回のガイドラインは標準的な形成外科診療を明らかにする端緒であります。この後、会員および学会の努力によってこのガイドラインがさらに充実していくことを切に願って、刊行のご挨拶といたします。

平成27年8月
日本形成外科学会
日本頭蓋顎顔面外科学会
理事長 川上 重彦


 日本形成外科学会のサブスペシャルティの学会として2008年7月に設立された日本創傷外科学会の使命は、急性・慢性の創傷からケロイド・肥厚性瘢痕まで含めた外表の創傷全般の診断と治療の専門医を育てることと、病態解明の研究成果に基づいた新治療法の開発を進め、さらなる治療成績の向上を図り、社会に貢献することです。
 社会に貢献するためには、日本創傷外科学会専門医が創傷治療の第一線を担わなければならないことはもちろんですが、創傷外科学会専門医の技術や知識を形成外科医以外の医師にも啓蒙することにより、創傷治療全体の成績を上げることも重要な使命です。
 このような使命を掲げて日本創傷外科学会が設立された頃、日本形成外科学会にガイドライン策定の機運が高まり、2009年に日本形成外科学会と、もう1つのサブスペシャルティの学会である日本頭蓋顎顔面外科学会、本学会の3学会合同でのガイドライン作成作業が始まりました。
 医療者と患者が特定の臨床状況で適切な判断を下すためには、標準的な治療法が示されていなければなりません。ガイドラインは、エビデンスを集積・整理し、医療者に対し現時点での一般診療に有用な情報を提供し、標準レベルを理解させることを目的として作成されています。
 昨今、疾患の治療に関しては多くの情報がネット上に流れ、患者も何を信じていいのかわからない状態です。特に急性・慢性の創傷や、ケロイド・肥厚性瘢痕に関しては情報があふれ、必ずしも正しくない情報を信じている患者も見受けられます。私は、形成外科医、創傷外科医のみならず、メスを持つすべての外科系医師、さらにメスを持たない内科系医師や看護師などの医療従事者にも創傷の標準的治療を理解していただきたいと思っています。すべての医療者が形成外科学、創傷外科学の正しい知識を持ち、最新の情報を得て標準的治療を患者や家族に説明し、実践するためのツールとして、この形成外科診療ガイドラインを利用されることを願っています。

平成27年8月
日本創傷外科学会
理事長 鈴木 茂彦


ガイドライン作成にあたって

 近年、エビデンスに基づいた医療(EvidenceBasedMedicine:EBM)の実践が求められるようになり、形成外科領域においてもその視点に立った診療ガイドラインの作成が必要となりました。このため、日本形成外科学会は、その二階建ての学会である日本創傷外科学会と日本頭蓋顎顔面外科学会との三学会で合同ガイドライン作成委員会を組織し、形成外科が携わる疾患や外傷に対する診療ガイドラインを作成することとなりました。
 本ガイドラインは、形成外科に携わる疾患や外傷の臨床上の問題に関する国内外の論文からエビデンスを収集し、若い医師や関連科の医師の理解を促すことを目的としたものです。各章や項目では、まず診療の指針となる「ClinicalQuestion(CQ)」を作成し、そのCQに対する論文のエビデンスレベルに基づいたAnswerとその推奨度を記載し、その次に「根拠および解説」について述べ、さらに「今後の課題」についても記載しています。形成外科領域の論文には、正直、エビデンスレベルの高い(?〜?)論文が数少ないため、推奨度としては低いもの(C1:根拠はないが、行うよう勧められる)となるのがほとんどです。「今後の課題」は、今後エビデンスレベルの高い研究を行ううえでの重要な指標になると考えています。
 なお、今回の作成にあたって「血管腫・血管奇形」、「褥瘡」、「熱傷」については項目からは除外しました。その理由は、「血管腫・血管奇形」のガイドラインが平成21-23年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「難治性血管腫・血管奇形についての調査研究班」(佐々木班)によって、また「褥瘡」と「熱傷」のガイドラインが日本褥瘡学会および日本熱傷学会によってすでに作成されているためです。その構成メンバーには数多くの形成外科医(日本形成外科学会会員)が関与しており、新たなガイドラインの作成は必要ないと判断しました。したがって「血管腫・血管奇形」と「褥瘡」および「熱傷」については、それらのガイドラインに準拠するものとし、すでに発刊されているそれぞれのガイドラインを参照していただくこととしました。
 EBMを実践するということは、この診療ガイドラインで推奨されたものをすべての患者に実践することではありません。それぞれの形成外科医が、専門的知識と経験および患者の状態を考慮したうえで総合的に判断を下すことが重要です。したがって、保険医療の審査基準や維持紛争、医療訴訟の資料として用いられるべきものではないことに言及しておきます。本診療ガイドラインを日常の臨床の一助として大いに活用していただければ、作成に携わった人間として幸甚です。
 終わりに、本ガイドラインの作成にあたり、長期にわたり献身的かつ無償の御尽力をいただいた先生方、編集にあたって御協力くださった金原出版編集部の方々、膨大な原稿を収集・整理していただいた学会事務局と久留米大学形成外科・顎顔面外科学講座の秘書の方々に、この場をお借りして深甚なる謝意を表します。

平成27年8月
日本形成外科学会、日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会
三学会合同ガイドライン委員会
委員長 清川 兼輔