形成外科診療ガイドライン4 頭蓋顎顔面疾患(主に先天性) 口唇・顎・口蓋裂・顔面先天異常/耳介先天異常/眼瞼

EBM視点で初めて作成された形成外科領域の診療ガイドライン。

編 集 日本形成外科学会 / 日本創傷外科学会 / 日本頭蓋顎顔面外科学会
定 価 3,300円
(3,000円+税)
発行日 2015/07/17
ISBN 978-4-307-25717-6

B5判・156頁

在庫状況 あり

本巻は4編で構成される。「I編:口唇・顎・口蓋裂・その他の顔面先天異常診療」は口唇裂、口蓋裂、その他の顔面形態異常に分けた。「II編:耳介先天異常」は治療機会の多い小耳症、埋没耳、立ち耳、折れ耳、先天性耳ろう孔に絞った。「III編:眼瞼」は眼瞼下垂を除く3つの疾患・病態を選択した。「IV編:頭蓋(骨)縫合早期癒合症」は症候群性と非症候群性を区分せず、頭蓋と顔面に対し診断、手術適応・方法を検討した。
ガイドライン作成にあたって
ガイドラインについて

第I編 口唇・顎・口蓋裂・その他の顔面先天異常診療ガイドライン
 作成にあたって
 1章 口唇裂
  1.疫学・診断
   CQ1 非症候性口唇口蓋裂の易罹患性診断に遺伝子検査は有用か?
   CQ2 口唇口蓋裂発症に環境因子は影響するか?
   CQ3 血族が口唇口蓋裂に罹患している場合、口唇口蓋裂の罹患率は上がるか?
   CQ4 出生前診断は口唇口蓋裂のマネジメントに有用か?
   CQ5 他の外表形態異常を伴わない口唇口蓋裂児に対して、合併先天異常のスクリーニングは有用か?
  2.治療
   CQ6 口唇口蓋裂に対する術前顎矯正は、良好な歯槽堤形態の獲得に有効か?
   CQ7 口唇口蓋裂に対する術前顎矯正装置は、哺乳の改善に有効か?
   CQ8 口唇口蓋裂に対するPNAM法は、初回口唇鼻形成術後の良好な口唇鼻形態の獲得に有効か?
   CQ9 口唇口蓋裂に対しての術前顎矯正は、長期的な観点での良好な顎発育や咬合の獲得につながるか?
   CQ10 口唇口蓋裂に対して術前顎矯正を行うことは、GPP(歯肉骨膜矯正)施行に有効か?
   CQ11 片側口唇裂初回形成術に至適時期はあるか?
   CQ12 片側口唇裂において初回同時外鼻形成は有効か?
   CQ13 Millardのrotation-advancement法は片側口唇裂初回形成術に有効か?
   CQ14 片側口唇裂初回形成術において、赤唇縁近くでの三角弁の挿入は有効か?
   CQ15 両側口唇裂に対して、初回口唇形成術の前にlipadhesionを行うことは有効か?
   CQ16 両側口唇裂に対する初回口唇形成術で両側同時法は有効か?
   CQ17 両側口唇裂に対する初回口唇形成術で二期法は有効か?
   CQ18 両側口唇裂に対して初回口唇形成術と同時に外鼻形成を行ってもよいか?
   CQ19 口唇裂二次修正術(口唇変形)に至適時期はあるか?
   CQ20 口唇裂外鼻修正術に至適時期はあるか?
   CQ21 口輪筋、赤唇などの口唇固有の組織欠損を伴う口唇変形に下口唇反転皮弁(Abbeflap)は有効か?
   CQ22 二次的顎裂骨移植は、口唇裂外鼻形態改善に有効か?
   CQ23 術後鼻孔レティナの使用は有効か?

 2章 口蓋裂、顎裂部骨移植
  1.診断(臨床診断)
   CQ24 チームアプローチは口唇口蓋裂の治療に有効か?
   CQ25 口蓋裂・粘膜下口蓋裂に合併しやすい先天性疾患(染色体異常を含む)はあるか?
   CQ26 口唇口蓋裂児に哺乳や摂食の障害は生じるか?
   CQ27 口蓋形成術の手術時期について基準はあるか?
   CQ28 粘膜下口蓋裂および先天性鼻咽腔閉鎖機能不全症に対する手術適応の基準はあるか?
  2.治療
   CQ29 Pushback法では口蓋瘻孔が発生しやすいか?
   CQ30 Pushback法は上顎発育を障害するか?
   CQ31 Pushback法では良好な言語成績が期待できるか?
   CQ32 Pushback法に伴い鼻腔側の延長を行うことは有効か?
   CQ33 Furlow法は良好な言語機能の獲得に有用か?
   CQ34 Furlow法では良好な顎発育が期待できるか?
   CQ35 Intravelarveloplasty法は口蓋裂初回手術での鼻咽腔閉鎖機能の獲得に有効か?
   CQ36 粘膜弁法による口蓋形成術は粘骨膜弁法よりも顎発育抑制が少ないか?
   CQ37 二段階口蓋形成術は口蓋裂手術として有効か?
   CQ38 Two-flap口蓋裂初回手術法は術後口蓋瘻孔発生率の軽減に有効か?
   CQ39 保存的治療(言語療法、プロテーゼなど)は鼻咽腔閉鎖機能の改善に有効か?
   CQ40 咽頭弁手術(他のVPI改善手術を含め)の術前評価に鼻咽腔内視鏡検査は有用か?
   CQ41 咽頭弁手術(他のVPI改善手術を含め)の術前評価にX線検査は有用か?
   CQ42 鼻咽腔閉鎖機能不全の改善手術に適応年齢の基準はあるか?
   CQ43 口蓋延長術は鼻咽腔閉鎖機能不全症に対する治療として有効か?
   CQ44 咽頭弁手術は鼻咽腔閉鎖機能不全症に対する治療として有効か?
  3.顎裂部骨移植術
   CQ45 顎裂部の骨移植術は矯正歯科治療の歯牙誘導に有効か?
   CQ46 顎裂部の骨移植は上顎発育に有効か?
   CQ47 移植骨として腸骨海綿骨が有効か?
   CQ48 顎裂部の骨移植術の術後評価にCTは有用か?
   CQ49 両側の顎裂において、両側に一期的な骨移植術は可能か?
   CQ50 顎裂の術前矯正は有効か?
 3章 その他の顔面先天異常
  はじめに
  1.巨口症
   CQ51 巨口症患者においてよく見られる併発症は何か?
   CQ52 巨口症において形成する口角の位置はどう決めるのか?
   CQ53 巨口症において推奨できる手術法はあるか?
  2.斜顔面裂
   CQ54 顔面裂の分類にTessierの分類は有用か?
   CQ55 斜顔面裂において定型的手術はあるか?
  3.正中裂
   CQ56 偽の正中裂の手術適応を決める判断基準に何があるか?
   CQ57 正中唇裂の定型的なもしくは推奨される初回手術はあるか?
  4.舌小帯短縮症
   CQ58 舌小帯短縮症の手術適応となる症状はあるか?
   CQ59 舌小帯短縮症の手術療法は保存療法より有効か?

第II編 耳介先天異常診療ガイドライン
 作成にあたって
 1章 小耳症
  1.診断・検査
   CQ1 治療にあたり画像検査は有用か?
  2.治療
   CQ2 手術に自家肋軟骨移植は有効か?
   CQ3 手術に適切な時期はあるか?
   CQ4 治療に外耳道・鼓室形成術は有効か?
   CQ5 年齢、体格、採取方法で肋軟骨採取による胸郭変形の程度に差があるか?
 2章 埋没耳
  1.治療
   CQ6 非観血的治療は有効か?
   CQ7 手術に至適時期はあるか?
   CQ8 手術に皮弁を用いた方法は有効か?
 3章 立ち耳
  1.治療
   CQ9 非観血的治療は有効か?
   CQ10 適切な手術時期は存在するか?
   CQ11 対耳輪形成術は有効か?
 4章 折れ耳
  はじめに
  1.治療
   CQ12 保存的治療は有効か?
   CQ13 手術療法は有効か?
   CQ14 絞扼耳に軟骨移植は必要か?
 5章 先天性耳瘻孔
  1.治療
   CQ15 無症候性(非感染性)耳瘻孔に手術適応はあるか?
   CQ16 耳瘻孔の至適手術時期はいつか?
   CQ17 非感染性耳瘻孔において推奨される術式はあるか?
   CQ18 感染性耳瘻孔において推奨される術式はあるか?

第III編 眼瞼診療ガイドライン
 作成にあたって
 1章 眼瞼内反症
  1.診断
   CQ1 睫毛内反の程度は診断に有用か?
   CQ2 発症に遺伝は関係するか?
  2.治療方針
   CQ3 手術治療は必要か?
  3.手術
   CQ4 手術治療は有効か?
 2章 内眼角贅皮
  1.診断
   CQ5 診断基準はあるか?
   CQ6 発症に人種差は関係するか?
  2.治療方針
   CQ7 手術治療は必要か?
  3.手術
   CQ8 手術治療は有効か?
 3章 瞼裂狭小症候群
  1.診断
   CQ9 診断基準はあるか?
   CQ10 診断に有用な検査はあるか?
  2.治療方針
   CQ11 手術治療は必要か?
  3.手術
   CQ12 手術治療は有効か?

第IV編 頭蓋(骨)縫合早期癒合症診療ガイドライン
 作成にあたって
 1章 頭蓋(骨)縫合早期癒合症
  1.診断
   CQ1 頭蓋内圧測定検査は有用か?
   CQ2 遺伝子診断は有用か?
   CQ3 術前の気道評価は必要か?
   CQ4 単純X線撮影は診断に有用か?
   CQ5 CTは診断に有用か?
   CQ6 MRI検査は診断に有用か?
  2.適応
   CQ7 頭蓋形成術は頭蓋内圧亢進の改善に有効か?
   CQ8 早期の頭蓋形成術は、頭蓋の形態の改善に有効か?
   CQ9 精神運動発達と頭蓋内圧亢進は関連があるか?
   CQ10 頭蓋骨の固定に推奨される固定材料はあるか?
  3.治療
   CQ11 頭蓋形成術で縫合切除術は有効か?
   CQ12 頭蓋形成術で一期法は有効か?
   CQ13 頭蓋形成術で骨延長法は有効か?
   CQ14 上顎低形成、咬合不全に対する早期手術は有効か?


 この度、金原出版のご協力をいただき、日本形成外科学会診療ガイドラインを刊行する運びとなりました。本ガイドラインの作成にご尽力いただいたガイドライン作成部会の清川兼輔部会長をはじめ委員の先生方に厚く御礼を申し上げます。
 この診療ガイドラインは2009年に具体化いたしました。きっかけは、経験が重視されがちであった形成外科診療について、エビデンスに基づいた標準的診断・治療を示す時期が来ているとの認識からでした。まず、委員会が作られ、それぞれの領域ごとに担当していただく責任者、担当委員を選任し、クリニカルクエスチョン(CQ)の設定、文献のエビデンスレベルからみた推奨度の決定まで、先生方には大変ご尽力をいただきました。また、形成外科学会に加えて関連学会である日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会にも分担をお願いいたしました。そして、ガイドライン作成を通して形成外科学会とその関連二学会との密接な連携がはかられました。今後も三学会が連携して日本の形成外科の発展に貢献していければと思います。
 2010年からは、領域ごとのガイドラインシンポジウムを日本形成外科学会、日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会で開催し、その後、会員からのパブリックコメントを募集し、最終案の決定にいたっております。そして、シンポジウム開始より約5年を経て形成外科がカバーするすべての領域のガイドラインが完成いたしました。今回刊行するガイドラインシリーズは全7巻で構成されます。ただし、熱傷、褥瘡および血管腫の3分野に関してはすでに完成され、日本形成外科学会も関わって他の機関で公開されておりますので、このシリーズには含まれておりません。ご理解のほどをお願いいたします。
 従来、経験に基づく診療が主な領域であったために、エビデンスレベルに基づいた推奨度も残念ながらCレベルが多い結果となりました。今後の課題としては、形成外科診療にとって重要なCQのエビデンスレベルを明確にしていかなければならないと思います。そして、この課題を個人的な研究だけに任せるのではなく、日本形成外科学会および関連学会が主導する立場でこの課題に取り組まなければならないと思います。今回のガイドラインは標準的な形成外科診療を明らかにする端緒であります。この後、会員および学会の努力によってこのガイドラインがさらに充実していくことを切に願って、刊行のご挨拶といたします。

平成27年7月
日本形成外科学会
日本頭蓋顎顔面外科学会
理事長 川上 重彦


 日本形成外科学会のサブスペシャルティの学会として2008年7月に設立された日本創傷外科学会の使命は、急性・慢性の創傷からケロイド・肥厚性瘢痕まで含めた外表の創傷全般の診断と治療の専門医を育てることと、病態解明の研究成果に基づいた新治療法の開発を進め、さらなる治療成績の向上を図り、社会に貢献することです。
 社会に貢献するためには、日本創傷外科学会専門医が創傷治療の第一線を担わなければならないことはもちろんですが、創傷外科学会専門医の技術や知識を形成外科医以外の医師にも啓蒙することにより、創傷治療全体の成績を上げることも重要な使命です。
 このような使命を掲げて日本創傷外科学会が設立された頃、日本形成外科学会にガイドライン策定の機運が高まり、2009年に日本形成外科学会と、もう1つのサブスペシャルティの学会である日本頭蓋顎顔面外科学会、本学会の3学会合同でのガイドライン作成作業が始まりました。
 医療者と患者が特定の臨床状況で適切な判断を下すためには、標準的な治療法が示されていなければなりません。ガイドラインは、エビデンスを集積・整理し、医療者に対し現時点での一般診療に有用な情報を提供し、標準レベルを理解させることを目的として作成されています。
 昨今、疾患の治療に関しては多くの情報がネット上に流れ、患者も何を信じていいのかわからない状態です。特に急性・慢性の創傷や、ケロイド・肥厚性瘢痕に関しては情報があふれ、必ずしも正しくない情報を信じている患者も見受けられます。私は、形成外科医、創傷外科医のみならず、メスを持つすべての外科系医師、さらにメスを持たない内科系医師や看護師などの医療従事者にも創傷の標準的治療を理解していただきたいと思っています。すべての医療者が形成外科学、創傷外科学の正しい知識を持ち、最新の情報を得て標準的治療を患者や家族に説明し、実践するためのツールとして、この形成外科診療ガイドラインを利用されることを願っています。

平成27年7月
日本創傷外科学会
理事長 鈴木 茂彦


ガイドライン作成にあたって

 近年、エビデンスに基づいた医療(EvidenceBasedMedicine:EBM)の実践が求められるようになり、形成外科領域においてもその視点に立った診療ガイドラインの作成が必要となりました。このため、日本形成外科学会は、その二階建ての学会である日本創傷外科学会と日本頭蓋顎顔面外科学会との三学会で合同ガイドライン作成委員会を組織し、形成外科が携わる疾患や外傷に対する診療ガイドラインを作成することとなりました。
 本ガイドラインは、形成外科に携わる疾患や外傷の臨床上の問題に関する国内外の論文からエビデンスを収集し、若い医師や関連科の医師の理解を促すことを目的としたものです。各章や項目では、まず診療の指針となる「ClinicalQuestion(CQ)」を作成し、そのCQに対する論文のエビデンスレベルに基づいたAnswerとその推奨度を記載し、その次に「根拠および解説」について述べ、さらに「今後の課題」についても記載しています。形成外科領域の論文には、正直、エビデンスレベルの高い(?〜?)論文が数少ないため、推奨度としては低いもの(C1:根拠はないが、行うよう勧められる)となるのがほとんどです。「今後の課題」は、今後エビデンスレベルの高い研究を行ううえでの重要な指標になると考えています。
 なお、今回の作成にあたって「血管腫・血管奇形」、「褥瘡」、「熱傷」については項目からは除外しました。その理由は、「血管腫・血管奇形」のガイドラインが平成21-23年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「難治性血管腫・血管奇形についての調査研究班」(佐々木班)によって、また「褥瘡」と「熱傷」のガイドラインが日本褥瘡学会および日本熱傷学会によってすでに作成されているためです。その構成メンバーには数多くの形成外科医(日本形成外科学会会員)が関与しており、新たなガイドラインの作成は必要ないと判断しました。したがって「血管腫・血管奇形」と「褥瘡」および「熱傷」については、それらのガイドラインに準拠するものとし、すでに発刊されているそれぞれのガイドラインを参照していただくこととしました。
 EBMを実践するということは、この診療ガイドラインで推奨されたものをすべての患者に実践することではありません。それぞれの形成外科医が、専門的知識と経験および患者の状態を考慮したうえで総合的に判断を下すことが重要です。したがって、保険医療の審査基準や維持紛争、医療訴訟の資料として用いられるべきものではないことに言及しておきます。本診療ガイドラインを日常の臨床の一助として大いに活用していただければ、作成に携わった人間として幸甚です。
 終わりに、本ガイドラインの作成にあたり、長期にわたり献身的かつ無償の御尽力をいただいた先生方、編集にあたって御協力くださった金原出版編集部の方々、膨大な原稿を収集・整理していただいた学会事務局と久留米大学形成外科・顎顔面外科学講座の秘書の方々に、この場をお借りして深甚なる謝意を表します。

平成27年7月
日本形成外科学会、日本創傷外科学会、日本頭蓋顎顔面外科学会
三学会合同ガイドライン委員会
委員長 清川 兼輔