大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス 第4版 2019年12月

がんゲノム医療時代における大腸がん遺伝子関連検査の実施に必須!

編 集 日本臨床腫瘍学会
定 価 2,200円
(2,000円+税)
発行日 2019/12/25
ISBN 978-4-307-20407-1

B5判・104頁・図数:9枚

在庫状況 あり

がん遺伝子パネル検査の保険適用(2019年6月)を受け、大腸がん診療における遺伝子関連検査の重要性がより高まっている。本書は各種検査(RAS変異・BRAF変異検査、ミスマッチ修復機能欠損の判定、包括的ゲノムプロファイリング検査、リキッドバイオプシー、VEGF-Dの測定など)の適切な実施と治療への反映および新規検査技術の展望について解説。これからの大腸がん診療に欠かせないガイダンスとなっている。
略語表

要約

1 総論
1.1 大腸がんの分子生物学的背景
1.2 大腸がんに認められる遺伝子異常の臨床的意義
1.3 大腸がんの遺伝子関連検査に用いられる手法

2 RAS変異検査
2.1 背景
2.2 切除不能進行再発大腸がん患者に対し、抗EGFR抗体薬の適応判定を目的として、一次治療開始前にRAS変異検査を実施する。
2.3 切除可能進行再発大腸がん患者に対し、再発リスクに応じた治療選択を目的として、補助化学療法開始前にRAS変異検査を実施する。

3 BRAF変異検査
3.1 背景
3.2 切除不能進行再発大腸がん患者に対し、予後予測に応じた治療選択を目的として、一次治療開始前にBRAF V600E 変異検査を実施する。
3.3 切除可能進行再発大腸がん患者に対し、再発リスクに応じた治療選択を目的として、補助化学療法開始前にBRAF V600E 変異検査を実施する。
3.4 大腸がん患者に対し、リンチ症候群の診断の補助を目的として、BRAF V600E 変異検査を実施する。

4 ミスマッチ修復機能欠損を判定するための検査
4.1 背景
4.2 切除不能進行再発大腸がん患者に対し、免疫チェックポイント阻害薬の適応判定を目的として、投与前にミスマッチ修復機能欠損を判定する検査(MMR機能欠損を判定する検査)を実施する。
4.3 切除可能進行再発大腸がん患者に対し、再発リスクに応じた治療選択を目的として、補助化学療法開始前にMMR機能欠損を判定する検査を実施する。
4.4 大腸がん患者に対し、リンチ症候群のスクリーニングを目的として、MMR機能欠損を判定する検査を実施する。
4.5 ミスマッチ修復機能欠損を判定する検査の種類
 MMR機能欠損を判定する検査として、
  MSI検査を実施する。
  IHC検査を実施する。
  NGSを用いた検査を実施する。

5 次世代シークエンス法による包括的ゲノムプロファイリング検査
5.1 背景
5.2 切除不能進行再発大腸がん患者に対し、治療薬適応判定の補助として、包括的ゲノムプロファイリング検査を実施する。
5.3 包括的ゲノムプロファイリング検査は、分析的妥当性が確認された検査システムで実施する。

6 リキッドバイオプシー
6.1 背景
6.2 微小残存腫瘍の検出および再発モニタリングを目的としたctDNA検査
切除可能進行再発大腸がん患者に対し、再発リスクに応じた治療選択を目的として、ctDNA検査を実施する。
6.3 抗EGFR抗体薬の適応を判定するためのctDNA検査
切除不能進行再発大腸がん患者に対し、抗EGFR抗体薬の適応判定および治療効果モニタリングを目的として、ctDNA検査を実施する。
6.4 がん遺伝子異常のモニタリングを目的としたctDNA検査
 切除不能進行再発大腸がん患者に対し、治療薬適応判定の補助として、ctDNAを用いた包括的ゲノムプロファイリング検査を実施する。

7 血管新生因子
7.1 背景
7.2 切除不能進行再発大腸がん患者に対し、血管新生阻害薬の選択補助として、VEGF?D の測定を実施する。

8 その他の検査
8.1 結腸がん術後再発予測における多遺伝子アッセイ
8.2 CDX2
8.3 CIMP

9 検体に用いる試料
9.1 組織検体
体細胞遺伝子検査にはホルマリン固定パラフィン包埋組織を用いる。また、対応するH&E染色標本で、未染薄切標本内に十分な量の腫瘍細胞が存在すること、および組織学的に想定される核酸の質が保たれていることを確認する。病変のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックの選択とマクロダイセクション部位のマーキング、腫瘍細胞割合の評価は原則として病理医が行う。
9.2 血液検体
ctDNA検査では、使用する採血管、採血後の血漿の調製や保管を各検査法が指定する方法に準じて実施する。

10 検査精度の確保
大腸がん診療における遺伝子関連検査は、精度の確保された検査室で実施されなければならない。

11 備考
11.1 日本臨床腫瘍学会におけるガイドライン、ガイダンスなどの定義
11.2 2019年9月現在における各種検査の薬事承認・保険適用の状況
11.3 Voting の参加について

索引
「発刊にあたり」

 切除不能進行・再発大腸がんの治療に欠かせない抗EGFR抗体薬は、わが国では2008年7月に「EGFR 陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の治療薬」として保険承認されました。その後、臨床試験のRAS遺伝子変異の有無による後ろ向き層別解析の結果から、RAS遺伝子変異を有する大腸がんには抗EGFR抗体薬は無効であることが明らかになり、2015年4月に添付文書の効能・効果に関連する使用上の注意に「本剤の使用に際してはRAS(KRAS及びNRAS)遺伝子変異の有無を考慮した上で、適応患者の選択を行うこと」と追記されました。さらに、抗EGFR 抗体薬の効果は腫瘍のEGFR の発現に依存しないことから、2019年9月には効能・効果から「EGFR陽性」の文言が削除され、「RAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」へ変更され現在に至っています。
 公益社団法人日本臨床腫瘍学会は、この過程で、2008年11月に「大腸がん患者におけるKRAS遺伝子変異の測定に関するガイダンス第1 版」、2014年4月に「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス第2版」を刊行し、日常診療における治療方針決定にRAS遺伝子検査の重要性を啓発するとともに、添付文書改訂に対しても参照すべき学会コンセンサスとして重要な役割を果たしました。そして、当学会は2016年10月にはその後の内外の研究開発の進歩を取り入れた、「大腸がん診療における遺伝子関連検査のガイダンス第3版」を発刊しました。この改訂第3版ではRAS遺伝子に加えて新たに臨床上の重要なバイオマーカーとしてBRAF V600E遺伝子変異やDNAミスマッチ修復(Mismatch repair;MMR)機能欠損を取り上げ、ここでも2018年BRAF V600E 遺伝子変異(同年8月)およびMMR機能欠損を判定するMSI検査(同年12月)の保険適用においても参照すべき学会コンセンサスとして再び重要な役割を果たしました。
 2019年(令和元年)6月には2種類のがん遺伝子パネル検査(別称がんゲノムプロファイリング検査)が、さらに同年6月にはNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対してROS1/TRK阻害剤が保険適用され、切除不能進行・再発大腸がんのバイオマーカーとしてがん遺伝子パネル検査やコンパニオン診断薬等の体外診断薬による治療方針決定が欠かせなくなりました。がんゲノム医療元年となった令和元年に「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス 第4版」を発刊することは、正に時宜にかなうものです。この改訂第4版では、大腸がんの遺伝子関連検査の臨床的意義を深く理解できるように総論で大腸がんの分子生物学的背景、大腸がんに認められる遺伝子異常と臨床的意義ならびに大腸がんの遺伝子関連検査に用いられる手法について分かりやすく解説してあります。また、切除不能進行・再発大腸がんの治療感受性予測にとどまらず、予後や術後補助化学療法の視点からRAS遺伝子変異、BRAF遺伝子変異やMSI?Hの意義について解説を加えたほか、開発が進むBRAF V600E遺伝子変異を有する切除不能進行・再発大腸がんに対する新しい併用療法に関する海外情報を紹介しています。さらに、血管新生因子、多遺伝子による遺伝子発現プロファイルやDNAメチル化状態など、今後、臨床導入が期待される新しいバイオマーカーの開発状況についても言及を加え、第3版よりもさらに踏み込んだ内容に仕上がっています。このガイダンスが大腸癌治療に係わる多くの医療従事者に速やかに周知され、対象となる大腸がん患者に質の高い治療が速やかに提供されることを切に望みます。
 最後に衣斐寛倫委員長をはじめ、「大腸がん診療における遺伝子関連検査等のガイダンス第4版」作成ワーキンググループの委員の皆様には多大なるご尽力に心から感謝いたします。

 2019年11月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 石岡 千加史


「発刊によせて」

 日本や世界からの数多くの基礎研究、臨床研究成果の蓄積を基に、大腸がん治療は確実な進歩を遂げてきました。特に切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法では、現在、がんの遺伝子情報に基づいた様々な選択肢のある治療アルゴリズムが推奨されています。この進歩の最初の一歩は、大腸がんのKRAS遺伝子変異の有無により抗EGFR抗体薬の適用の判断が可能になったことです。2008年に初めて日本臨床腫瘍学会より、「大腸がん患者におけるKRAS遺伝子変異の測定に関するガイダンス第1 版」が発刊され、ここではKRAS遺伝子解析をいかに実施し治療に反映するかが中心に記載されました。その後、2014年の「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS)変異の測定に関するガイダンス第2版」では、RAS遺伝子変異に基づく治療選択の意義を記し、当時の保険未承認であったRAS遺伝子検査の必要性を強調しました。さらに2016年の「大腸がん診療における遺伝子関連検査のガイダンス第3版」においては、BRAF遺伝子変異とDNAミスマッチ修復機能欠損も治療選択や予後予測に重要な情報をもたらすことを国内の保険承認に先駆けて提唱し、その適切な実施方法と結果の判断について詳細に記載しました。これまでの本ガイダンスにより取り上げられたいずれの項目も、現在は国内で保険承認され大腸がんの実地診療に欠かせないものとなっています。このように本ガイダンスは技術の進歩と情報量の増加が著しい大腸がんの遺伝子検査の分野で、遅れることなく、かつ、より将来を見据えた最新の情報を臨床の場に届ける役割を担ってきました。
 第3版の発刊より3年を経て、このたび改訂第4版が完成しました。この間、次世代シークエンサーを用いた包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査が2019年6月に保険承認され、国内のがん薬物療法全般のあり方も変わりつつあります。大腸がんにおいても、RASやBRAFとは異なるより頻度の低いドライバー遺伝子変異に対する治療が進むことが予想されます。本ガイダンス第4版では、3学会(日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会)合同で発出された「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス(第1.0版)」の内容も十分踏まえて、大腸がんにおけるCGP検査の意義や適切な実施について詳細に記しています。さらに血漿中に存在するDNA(cell freeDNA)を対象にがんの遺伝子異常を低侵襲かつリアルタイムに検出するリキッドバイオプシーの取組みも今回広く取り上げています。これもまた近い将来の実臨床の姿を指し示すものと考えられます。
 本ガイダンス第4版は、作成ワーキンググループ委員長の衣斐寛倫先生をはじめとして各分野の専門家である委員の方々の献身的な努力によって作成されました。また日本臨床腫瘍学会事務局や金原出版の皆様にも多くのご尽力を頂きました。ここに深く御礼を申し上げます。本ガイダンスが大腸がん診療に関わる全ての皆様に利用され、実地診療の向上とさらなる研究開発のための基盤として役立つことを切に願っております。

 2019年11月
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
ガイドライン委員長 馬場 英司