中皮腫瘍取扱い規約

中皮腫瘍に関する初めての取扱い規約が刊行!

編 集 石綿・中皮腫研究会 / 日本中皮腫研究機構 / 日本肺癌学会
定 価 4,400円
(4,000円+税)
発行日 2018/11/30
ISBN 978-4-307-20392-0

B5判・152頁・図数:43枚・カラー図数:68枚

在庫状況 あり

中皮腫に詳しい臨床医、放射線診断医、病理医がチームを組み、単独では初となる中皮腫瘍取扱い規約を著した。UICC TNM分類第8版に基づいた病期分類を採用し、画像診断、胸腔鏡所見、病理像、細胞像を多数掲載。
石綿曝露の評価法、労働者災害補償保険法、石綿健康被害救済法、さらには胸膜中皮腫、腹膜中皮腫の疫学、症状、治療等についてもまとめた。
1.TNM分類
 I.はじめに
 II.胸膜中皮腫の病期分類(UICC-TNM第8版)
  1.TNM臨床分類
  2.病期分類
  3.TNM分類補足

2.画像診断
 I.画像診断指針
  1.胸部単純X線撮影
  2.胸部CT
  3.胸部MRI
  4.FDG-PET/CT
 II.記載の実際
  1.cT因子
  2.cN因子
 III.典型例の画像所見
  1.胸部単純X線写真
  2.胸部CT
  3.胸部MRI
  4.FDG-PET/CT
 IV.非典型例の画像所見
  1.胸水貯留のみの症例
  2.早期例
  3.単発腫瘤例(限局性胸膜中皮腫)
  4.縦隔腫瘍類似例
  5.胸壁腫瘍類似例
  6.高度石灰化・骨化例
  7.気胸発症例
 V.鑑別診断
  1.偽中皮腫性肺癌
  2.石綿関連良性胸膜病変
 VI.胸膜以外の中皮腫の画像
  1.腹膜中皮腫
  2.心膜中皮腫

3.組織採取法と胸腔鏡所見
 I.胸腔鏡による観察方法と組織採取法
  1.胸腔鏡の適応
  2.観察方法と組織採取法
 II.胸腔鏡所見
  1.正常胸膜
  2.胸膜中皮腫
  3.高分化乳頭状中皮腫
  4.中皮腫と鑑別を要する疾患

4.手術記載
  1.悪性胸膜中皮腫手術記載の対象
  2.手術
  3.原発巣
  4.リンパ節転移
  5.切除断端および合併切除臓器における癌浸潤の有無の判定
  6.切除術の根治性(切除後の遺残腫瘍)の評価
  7.胸膜プラーク
  8.手術関連死亡
  9.生存解析
  10.悪性胸膜中皮腫の進行程度(Stage)
  11.組織学的分類

5.細胞診
 I.緒言
 II.検査方法
 III.成績の報告と細胞判定規準
  1.報告様式
  2.中皮腫細胞診断の判定規準

6.病理診断
 I.中皮腫検体の病理診断報告様式(チェックリスト)
 II.組織分類の方針
 III.検体の取り扱い・切り出し方法
  1.切り出し方法
 IV.組織分類
  1.胸膜腫瘍の規約分類
  2.腹膜腫瘍の規約分類
 V.定義と解説
  1.びまん性悪性中皮腫
  2.限局性悪性中皮腫
  3.高分化乳頭状中皮腫
  4.アデノマトイド腫瘍
 5.腹膜中皮腫

7.modified RECISTガイドラインを用いた悪性胸膜中皮腫の治療効果判定の手引き
 I.はじめに
 II.治療効果判定規準
  1.ベースラインにおける腫瘍の測定可能性
  2.腫瘍縮小効果の判定

8.胸膜中皮腫レビュー
  1.疫学
  2.発症リスク
  3.胸膜中皮腫における遺伝子異常
  4.症状
  5.腫瘍マーカー
  6.腫瘍の進展
  7.内科治療
  8.外科治療
  9.放射線治療

9.腹膜中皮腫レビュー
  1.概要および疫学
  2.発症要因
  3.臨床的特徴と診断
  4.進行期および臨床病型分類
  5.組織型
  6.治療
  7.予後因子

10.石綿曝露評価
 I.石綿曝露
  1.石綿
  2.石綿曝露の機会
  3.中皮腫での石綿曝露
  4.石綿小体
  5.含鉄小体
  6.組織切片中の石綿小体
 II.石綿曝露の評価
  1.BALFによる評価
  2.肺組織切片による評価
  3.肺組織の評価

11.労働者災害補償保険法と石綿健康被害救済法
  1.はじめに
  2.労災保険法による給付
  3.石綿救済法による救済措置

索引
 我が国における中皮腫の発症数は年々増加し、2016年の中皮腫患者数は1,550名に達しました。中皮腫は労働者災害補償保険法、石綿健康被害救済法による補償、救済の対象疾病ですが、中皮腫として申請された症例のうち、約10%は専門家の診断によると中皮腫ではありません。中皮腫の病理診断についてまとめた書物がなく、一般の病理医に診断法が普及していないことがその一因と考えられます。
 中皮腫に関して肺癌取扱い規約には、病理は第5版(1999年)より、細胞診は第7版(2010年)より記載されていますが、鑑別疾患についての記載は十分ではなく、中皮腫のTNM分類、画像診断、胸腔鏡所見、手術記載などについての記載はありません。卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約 病理編(2016年)には卵管腫瘍、腹膜腫瘍の項に中皮腫瘍の記載がわずかにあるのみです。中皮腫に関しても胃癌、大腸癌、乳癌、卵巣腫瘍など各臓器の腫瘍取扱い規約と同様の取扱い規約が必要であると考え、2017年11月に「中皮腫瘍取扱い規約」の出版について検討を始めました。
 「中皮腫瘍取扱い規約」は、石綿・中皮腫研究会、日本中皮腫研究機構、日本肺癌学会の共同編集とし、中皮腫に詳しい臨床医、放射線診断医、病理医がチームを組み、執筆を行いました。日本病理学会、日本産科婦人科学会、中皮腫細胞診研究会には後援をしていただきました。
 中皮腫の病期分類は、長らく1995年に提唱されたIMIG分類が用いられていましたが、本書では、2017年に大幅に改訂したUICC TNM分類第8版の分類を記載しました。画像診断や胸腔鏡の章では多数の中皮腫の写真を掲載し、石綿曝露の評価方法、労働者災害補償保険法、石綿健康被害救済法についても解説をしました。胸膜中皮腫、腹膜中皮腫の疫学、症状、治療などについても、簡単にまとめました。なお、最新の胸膜中皮腫の診療ガイドラインについては日本肺癌学会編集の「肺癌診療ガイドライン」の中の悪性胸膜中皮腫診療ガイドラインをご覧ください。
 「中皮腫瘍取扱い規約」が他臓器の腫瘍取扱い規約と同様に、全国の病院に配備され、日常診療の参考にしていただくことを期待します。石綿・中皮腫研究会と日本中皮腫研究機構はそれぞれ2018年の秋に解散し、同年12月に日本石綿・中皮腫学会を設立します。取扱い規約は絶えず、修正、変更、追加などが行われるべきものですので、日本石綿・中皮腫学会および日本肺癌学会が中心となり、今後も改訂を重ねていくことを期待します。

2018年11月
石綿・中皮腫研究会 代表幹事
特定非営利活動法人日本中皮腫研究機構 理事
特定非営利活動法人日本肺癌学会 胸膜中皮腫小委員会委員
廣島 健三