乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編 2018年版 第4版

3年ぶりの全面改訂!新推奨方式を採用し医師と患者のShared Decision Makingを実現

編 集 日本乳癌学会
定 価 4,320円
(4,000円+税)
発行日 2018/05/16
ISBN 978-4-307-20388-3

B5判・316頁・図数:10枚・カラー図数:82枚

在庫状況 あり

「疫学・予防」「検診・画像診断」「病理診断」に関する臨床議題をバックグラウンドクエスチョン(BQ)・クリニカルクエスチョン(CQ)・フューチャーリサーチクエスチョン(FQ)に分類し、それぞれの科学的根拠、益と害のバランス、患者の希望の一貫性、経済的視点などを踏まえて最新の乳癌診療指針を示した。新設項目は「BRCA遺伝子変異保持者の予防的全乳房切除」「高濃度乳房の検診」「非浸潤性乳管癌の評価法」など。医師と患者のShared Decision Making実現を目指した新しいガイドラインを診療の傍らに。
■乳癌診療ガイドライン2018年版作成にあたって

疫学・予防
1.疫学総論
総説1 日本人女性の乳癌罹患率、乳癌死亡率の推移
総説2 日本人女性と欧米人女性の乳癌予後の比較
2.乳癌発症リスク―(1)生活習慣・環境因子
総説 食事関連要因と乳癌発症リスクとの関連
BQ1 アルコール飲料の摂取は乳癌発症リスクを増加させるか?
BQ2 喫煙(受動喫煙含む)は乳癌発症リスクを増加させるか?
BQ3 乳製品の摂取は乳癌発症リスクを減少させるか?
BQ4 緑茶の摂取は乳癌発症リスクを減少させるか?
BQ5 大豆、イソフラボンの摂取は乳癌発症リスクを減少させるか?
BQ6 サプリメントの服用は乳癌発症リスクを減少させるか?
BQ7 肥満は乳癌発症リスクと関連するか?
BQ8 運動は乳癌発症リスクを減少させるか?
BQ9 夜間勤務は乳癌発症リスクを増加させるか?
BQ10 電磁波は乳癌発症リスクを増加させるか?
BQ11 乳癌発症リスクに関連する心理社会的要因はあるか?
3.乳癌発症リスク―(2)既往歴・家族歴
BQ12 放射線被曝は乳癌発症リスクを増加させるか?
BQ13 良性乳腺疾患は乳癌発症リスクを増加させるか?
BQ14 乳癌家族歴は乳癌発症のリスク因子となるか?
4.乳癌発症リスク―(3)合併疾患・治療薬
BQ15 糖尿病の既往は乳癌発症リスクを増加させるか?
BQ16 スタチンの服用は乳癌発症リスクを減少させるか?
CQ1  低用量経口避妊薬(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)の使用は乳癌発症リスクを増加させるか?
CQ2  閉経後女性ホルモン補充療法は乳癌発症リスクを増加させるか?
FQ1  1不妊治療における排卵誘発は乳癌発症リスクを増加させるか?
5.乳癌発症リスクの評価と化学予防
BQ17  マンモグラフィの乳腺濃度は乳癌発症リスクと関連するか?
BQ18  乳癌の発症を予防するための薬剤を投与することは有用か?
FQ2  日本人の乳癌発症リスク評価にGailモデルは勧められるか?
FQ3  日本人の乳癌発症リスク評価として遺伝子多型情報を用いたモデルは勧められるか?
6.癌遺伝子診断と乳癌発症予防
総説  遺伝性乳癌と遺伝学的検査、遺伝カウンセリング
CQ3  BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ女性にリスク低減乳房切除術は勧められるか?
 CQ3a 乳癌未発症者における両側リスク低減乳房切除術(BRRM)の場合
 CQ3b 乳癌既発症者における対側リスク低減乳房切除術(CRRM)の場合
CQ4  BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ女性に予防的内分泌療法は勧められるか?
CQ5  BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ挙児希望のない女性にリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)は勧められるか?
CQ6  BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ女性が乳房温存可能な乳癌に罹患した場合であっても乳房全切除術が勧められるか?
7.乳癌患者の生活習慣・環境因子と予後の関連
総説 ライフスタイルと乳癌予後との関連
BQ19  妊娠期・授乳期の乳癌は予後が不良か?
 BQ19a 妊娠期の場合
 BQ19b 授乳期の場合
CQ7  肥満は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか?
 CQ7a 乳癌診断時の肥満の場合
 CQ7b 乳癌診断後の肥満の場合
CQ8  乳癌初期治療後の食事による脂肪摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか?
CQ9  乳癌患者に対して身体活動を高く維持することは勧められるか?
CQ10  アルコールの摂取は乳癌患者の予後と関連するか?
CQ11  喫煙は乳癌患者の予後と関連するか?
CQ12  食事によるイソフラボン摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか(診断後)?
CQ13  乳製品の摂取は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか?
8.乳癌患者に対する心理的サポート
CQ14  心理社会的介入は乳癌患者の予後改善に有用か?

検診・画像診断
1.乳がん検診
総説1 乳がんマンモグラフィ検診の被曝
総説2 対策型乳がん検診と任意型乳がん検診についての理解
総説3 高濃度乳房問題について
総説4 マンモグラフィガイドラインとBI-RADSのカテゴリー分類について
CQ1  Hand-held(用手的)超音波検査は高濃度乳房に対する対策型乳がんマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして推奨されるか?
CQ2  乳房トモシンセシスは高濃度乳房に対する対策型乳がんマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして推奨されるか?
CQ3  ABUS(乳房用自動超音波検査)は高濃度乳房に対する対策型乳がんマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして推奨されるか?
CQ4  日本人の未発症BRCA遺伝子変異保持者に造影乳房MRI検診は勧められるか?
FQ1  日本人の乳がんマンモグラフィ検診の至適上限年齢は何歳か?
FQ2  造影乳房MRIは高濃度乳房に対する乳がんマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして勧められるか?
FQ3  PET/乳房専用PETは高濃度乳房に対する乳がんマンモグラフィ検診の補助的乳がん検診モダリティとして勧められるか?
2.乳癌の精密検査(治療前)
BQ1  乳癌確定診断において、画像誘導下生検手技は外科的生検よりも推奨されるか?
CQ5  原発乳癌の精密検査として乳房エラストグラフィは推奨されるか?
CQ6  乳癌術前の治療方針決定に造影乳房MRIは有用か?
CQ7  StageI・II乳癌の術前にCT、PET、PET-CTによる全身検索は推奨されるか?
FQ4  マンモグラフィ検診の淡い集簇石灰化病変にマンモグラフィガイド下生検は必須か?
FQ5  造影乳房MRIのみで検出される病変(MRI-detected lesion)の精査は必要か?
FQ6  原発乳癌の術前腋窩リンパ節転移の評価に画像診断は勧められるか?
FQ7  術前化学療法のpCR予測と早期効果判定にPET/乳房専用PETは勧められるか?
3.乳癌の精密検査(治療後)
CQ8  再発リスクの低いStageI・II乳癌術後の定期的な全身画像検査は推奨されるか?
FQ8  乳房全切除後の対側乳房や乳房温存手術後の温存乳房に超音波検査や造影乳房MRIは定期的に必要か?
FQ9  乳癌術後のサーベイランスとして血清腫瘍マーカー測定は推奨されるか?

病理診断
乳癌診療ガイドライン「病理診断」領域について
総説1 Intrinsic subtype分類と病理診断
総説2 病理組織検体の適切な取り扱いについて
総説3 浸潤性乳管癌の病理学的グレード分類
総説4 細胞診や針生検で診断困難な病変について
BQ1  乳房の病変の確定診断のために、穿刺吸引細胞診(FNA)、針生検(CNB)、吸引式乳房組織生検(VAB)のいずれのアプローチを最初に行うのがよいか?
BQ2  乳癌の転移再発巣が疑われる病変の病理診断に免疫組織化学法は有用か?
BQ3  術前化学療法後、病理組織学的に治療効果を判定することは勧められるか?
BQ4  ホルモン受容体検査はどのような目的で、どのように行うか?
BQ5  HER2検査はどのような目的で、どのように行うか?
BQ6  乳房温存手術の病理組織学的断端診断はどのように行うか?
BQ7  センチネルリンパ節の病理学的検索はどのように行うか?
BQ8  針生検検体を用いたホルモン受容体やHER2の検索は勧められるか?
FQ1  浸潤性乳癌におけるKi67評価はどのような症例に勧められるか? 評価方法はどのようにしたらよいのか?
FQ2  非浸潤性乳管癌におけるホルモン受容体やHER2の検索は勧められるか?
FQ3  再発乳癌における治療方針決定にセルブロック標本を用いた検討は勧められるか?
FQ4  浸潤性乳管癌における腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)の検索は勧められるか?
FQ5  乳管内増殖性病変の良悪性診断に免疫組織化学法は有用か?
FQ6  非浸潤性乳管癌で核グレードや面疱壊死の有無を評価することは勧められるか?

略語一覧
索引
 日本乳癌学会の診療ガイドラインは、2004年に薬物療法ガイドラインを刊行したことに始まる。当初より、EBMに準拠し、さまざまなバイアスを排除すべくランダム化比較試験あるいは、それらを束ねたメタアナリシスやシステマティック・レビューの結果を重んじた推奨を行ってきた。しかしながら、多くの臨床試験の主たるエンドポイントは、全生存率(OS)の改善であったり、無増悪生存期間(PFS)の延長であり、効果、効用(益)に偏りがちの評価であった。しかし、個々の治療薬には、軽微なものから、時に重篤な副作用が起こるものまであり、負の側面(害)も加味した評価が求められる。また、近年、分子標的薬をはじめとする数多くの新薬の価格は高騰し、対費用効果も重要な要素となっている。
 これまでの診療ガイドラインの作成にあたっては、公益社団法人日本医療機能評価機構から出版された「Minds診療ガイドライン作成の手引き2007」に従ってきた。その手引きが、前述の「益」と「害」のバランスの情報を考慮したGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムという手法を取り込んだ、「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に改訂された。日本乳癌学会理事会は、診療ガイドライン委員会(岩田広治委員長)の答申を受け、GRADEシステムを用いた診療ガイドラインへの大幅改訂を承認し、同時に、本来、2年ごとの改訂版出版の予定(当初2017年に刊行を予定)を、1年延期することも決定した。したがって、今回の大幅改訂に携わった先生方には、GRADE システムを理解することに始まり、初版本に匹敵する労力を強いることとなったが、ここに完成版を手にし、深く感謝申し上げる次第である。
 また、これまでの表記と異なるために、利用者にとっては多少の違和感を生じたり、さまざまなご意見をもたれることも予想される。お気づきの点があれば、随時ご指摘いただき、改善すべき点があれば、まずはWEB版で対応を図る予定である。
 今後は、患者向けガイドラインを作成し、医療現場で、医師を含む医療者と患者の共通理解のもとで、個々の人生観、価値観に照らし合わせた治療方針決定がなされる、いわゆるShared decision makingがさらに浸透することに注力していきたい。

 2018年4月

日本乳癌学会 理事長
中村 清吾