よくわかるがん免疫療法ガイドブック
患者さんとご家族のために
がん免疫療法のメカニズムと治療効果について分かりやすく解説!
編 集 |
日本バイオセラピィ学会「よくわかるがん免疫療法ガイドブック」作成WG |
協 力 |
日本癌治療学会・日本臨床腫瘍学会 |
監 修 |
厚労科研 科学的根拠に基づいたがん免疫療法の評価とPublicity班 |
定 価 |
2,420円 (2,200円+税) |
発行日 |
2020/09/15 |
ISBN |
978-4-307-10204-9 |
B5判・128頁・カラー図数:23枚
適切ながん免疫療法を受けていただくことを目的とし、がん患者さんとそのご家族の様々な疑問・不安にこたえるために本書は企画されました。がん免疫療法のメカニズム、種類、副作用についてイラストをまじえて分かりやすく解説しました。各がんに対する治療効果についてはQ&A形式で解説し、正確な情報提供を心がけました。がん患者さんとそのご家族だけでなく、がん治療に携わる医療従事者やピアサポーターの皆様にもご活用いただける1冊です。
本ガイドブックの使い方
第1章 がん免疫療法について
1.正しい医療情報を得るためには
2.がん免疫のしくみ
3.がん免疫療法の作用メカニズム
4.がん免疫療法の種類
5.がん免疫療法の副作用
[総論]
[副作用の種類]
皮膚障害
甲状腺機能障害
副腎機能障害
下垂体機能障害
1型糖尿病
神経・筋・関節障害
肺障害
肝・胆・膵障害
胃腸障害(下痢・大腸炎)
腎障害
第2章 各がんのQ&A
1.血液のがん
Q1血液のがんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2その免疫療法の具体的な治療内容は何ですか?
Q3免疫療法の治療成績は?
2.食道がん
Q1食道がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2免疫療法の治療成績は?
3.胃がん
Q1胃がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2その免疫療法の具体的な治療内容は何ですか?
Q3免疫療法の治療成績は?
4.大腸がん
Q1大腸がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2その免疫療法の具体的な治療内容は何ですか?
Q3免疫療法の治療成績は?
5.肝がん
Q1肝がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2免疫療法の治療成績は?
6.胆道がん・膵がん
Q1胆道がん・膵がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2免疫療法の治療成績は?
7.肺がん
Q1肺がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2その免疫療法の具体的な治療内容は何ですか?
Q3免疫療法の治療成績は?
8.乳がん
Q1乳がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2免疫療法の治療成績は?
9.泌尿器科がん
Q1泌尿器科がんにはどのようながんがありますか?そのなかで免疫療法がよく用いられるのはどのようながんでしょうか?
Q2腎細胞がんに対する免疫療法について教えてください。
Q3尿路上皮がんに対する免疫療法について教えてください。
10.頭頸部がん
Q1頭頸部がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2その免疫療法の具体的な治療内容は何ですか?
Q3免疫療法の治療成績は?
11.婦人科がん
Q1婦人科がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2免疫療法の治療成績は?
12.皮膚がん
Q1皮膚がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2その免疫療法の具体的な治療内容は何ですか?
Q3免疫療法の治療成績は?
13.その他のがん(脳腫瘍、骨軟部腫瘍、小児がん)
・脳腫瘍
Q1脳腫瘍で免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2免疫療法の治療成績は?
・骨軟部腫瘍
Q1骨軟部腫瘍で免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2免疫療法の治療成績は?
・小児がん
Q1小児がんで免疫療法は標準治療となっていますか?
Q2その免疫療法の具体的な治療内容は何ですか?
Q3免疫療法の治療成績は?
14.がん性胸水・腹水
Q1がん性胸水・腹水に対して行われる治療は何ですか?
ここに、『よくわかるがん免疫療法ガイドブック』をご紹介いたします。
2018年、京都大学特別教授 本庶 佑先生はノーベル生理学・医学賞を受賞されました。
先生は、がんを見つけて攻撃するリンパ球という免疫細胞の表面に出る「ブレーキ分子」を発見されました。われわれの身体には、リンパ球が敵を見つけてやっつけてくれる監視機構が存在します。一方でリンパ球は、活性化し過ぎて自分の正常細胞をも攻撃してしまうことがあります。そんなときこのブレーキ分子は、自分のリンパ球が自分を攻撃しないようにブレーキをかけてくれています。ところが、がん細胞は自分の細胞ががん化して発生しますので、がん化しても「自分」の部分を持っています。自分のフリをしていると言ってもいいでしょう。がん細胞はこのブレーキ分子を逆手にとって、自分のフリをしてリンパ球からの攻撃を逃れ、進行し、人の命を奪うのです。
ブレーキ分子が働かないように、この分子をブロックするお薬が、現在、がん治療を革命的に進化させています。免疫チェックポイント阻害剤と言います。ブレーキ分子をブロックすると、リンパ球はがん細胞の自分のフリを見破り、まるで目覚めたかのようにがんを攻撃するようになるのです。2012年に初めて臨床成績が報告されて以来、世界はがん免疫療法の大合唱です。2014年、世界に先駆けて日本でお薬が承認され、新しい免疫療法が市民権を得た瞬間となりました。現時点で、13がん腫、1病態でがんの標準治療となっています。
新しいがん免疫療法が拡大する一方で、困ったことが見受けられるようになりました。現代は情報過多世界、市民の皆さんが入手されるがん免疫療法の情報の中には、未だ十分な有効性が科学的に証明されていないがん免疫療法も存在していて、しばしば誤解や混乱が生じているのです。がん免疫療法への期待が大きいが故に生じた問題と言えるでしょう。
そこで、今回の『よくわかるがん免疫療法ガイドブック』の発刊が計画されました。日本バイオセラピィ学会を中心に、多数の関係者のお力もいただきながら、2年の月日を経て発刊に至りました。関係の皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。このガイドブックには、がん免疫療法のしくみに始まり、その科学的な有効性についてがん腫別に、Q&Aを交え、わかりやすく記載されています。本書が、市民の皆さんのがん免疫療法の正しい理解に有効利用されることを確信しております。
これからも、がん治療の開発においては、免疫を駆使した治療戦略の追求が繰り返されるでしょう。市民の皆さん、がん免疫療法の正しい理解のもと、変わっていくがん治療の、共に目撃者となりましょう!
2020年8月
日本バイオセラピィ学会理事長
川崎医科大学臨床腫瘍学 山口 佳之