がん免疫療法ガイドライン 第2版

免疫チェックポイント阻害薬の適正使用と副作用管理を主に解説!

編 集 日本臨床腫瘍学会
定 価 2,420円
(2,200円+税)
発行日 2019/03/29
ISBN 978-4-307-10195-0

B5判・162頁・図数:21枚

在庫状況 あり

新しい免疫チェックポイント阻害薬が承認され、適応が拡大されるなど、がん免疫療法はがん治療を急速に変革しつつある。一方、免疫関連有害事象(irAE)の発生や免疫療法が有効な患者の判定法、高額な薬剤費など課題も多い。第2版では、がん免疫療法の分類と作用機序、免疫チェックポイント阻害薬によるirAEの管理、癌種ごとのがん免疫療法のエビデンスについて、初版刊行後2年間の新たな情報に基づき改訂を行った。
がん免疫療法ガイドライン第2版作成にあたって

1 がん免疫療法の分類と作用機序
 1.免疫チェックポイント阻害薬
  1)CTLA-4阻害薬
  2)PD-1阻害薬
  3)PD-L1阻害薬
  4)その他の免疫チェックポイント阻害薬
 2.共刺激分子に対するアゴニスト抗体薬
 3.がんワクチン療法
  1)がんペプチドワクチン
  2)腫瘍細胞ワクチン
  3)樹状細胞ワクチン
  4)その他のがんワクチン
 4.エフェクターT細胞療法
  1)非特異的エフェクター細胞輸注療法
  2)標的抗原特異的エフェクターT細胞輸注療法
  3)非自己細胞を用いた細胞療法
 5.サイトカイン療法
 6.免疫チェックポイント阻害薬以外の免疫抑制阻害薬
 7.その他の免疫療法

2 免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理
 1.総論
 2.皮膚障害
 3.肺障害
 4.肝・胆・膵障害
 5.胃腸障害(下痢・大腸炎)
 6.腎障害
 7.神経・筋・関節障害
 8.1型糖尿病
 9.下垂体機能低下症
 10.副腎皮質機能低下症
 11.甲状腺機能異常症
 12.眼障害
 13.サイトカイン放出症候群
 14.インフュージョンリアクション
 15.心筋炎を含む心血管障害
 16.ステロイド不応性・難治性の免疫関連有害事象に対する免疫抑制薬の使用について

3 がん免疫療法の癌種別エビデンス
 1.造血器腫瘍
 2.食道癌
 3.胃癌
 4.大腸癌
 5.肝癌
 6.胆道癌
 7.膵癌
 8.胸部悪性腫瘍
  1)肺癌
  2)悪性胸膜中皮腫
 9.頭頸部癌
 10.婦人科癌
 11.腎細胞癌
 12.尿路上皮癌
 13.前立腺癌
 14.脳腫瘍
 15.皮膚悪性腫瘍
  1)悪性黒色腫
  2)メルケル細胞癌
 16.骨軟部腫瘍
 17.乳癌
 18.小児腫瘍
 19.高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(dMMR)を有する切除不能・転移性の固形癌

索引
◎第2版発刊にあたり

 イピリムマブにより悪性黒色腫患者の生存期間が延長することが2010年の米国臨床腫瘍学会で発表されたときは、時代が変わることを予感した。しかし、この内容を1カ月後の日本臨床腫瘍学会のBest of ASCOで紹介した時は、日本の研究者の多くはその重要性を実感していないようであった。ところがその後ニボルマブが肺癌でも有効性を示してからは、打って変わって免疫チェックポイント阻害薬に注目が集まった。肺癌に留まらず頭頸部癌、腎細胞がん、胃癌、尿路上皮がん、さらに最近では食道がん、乳がんに対しても免疫チェックポイント阻害薬の有効性が第III相比較試験で示された。第III相試験での検証的データはないもののホジキンリンパ腫、メルケル細胞癌、MSI-highの腫瘍でも一定の効果を示し実地診療で使用可能となった。このように免疫チェックポイント阻害薬は多くのがん種の治療体系を変えた。今後、肝細胞癌などの治療も変わると思われる。
 イピリムマブ、ニボルマブ以外にもペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬が臨床導入され、これら以外にも多くの薬剤が開発されている。治療の選択肢が増えることは良いことだが、製薬企業による開発競争が激化し、他の薬剤が三次治療で有効性を検証している間に、有効性のデータがないにも関わらず二次治療、さらには一次治療、あるいはいきなり補助療法で検証する臨床試験まで実施されている。このように抗悪性腫瘍薬の臨床開発における方法論を無視した結果、骨髄腫に対する一次治療において既存治療との併用の大規模比較試験をいきなり行い、むしろ予後を悪化させてしまった薬剤もある。このような非倫理的とも言える臨床試験を避けるためにも、がん免疫療法を適切に理解し臨床開発の考え方も学ぶ必要がある。
 免疫チェックポイント阻害薬は従来の殺細胞性の抗がん薬と比べれば副作用の程度も頻度も軽度であるが、免疫学的機序に基づいた特有の副作用を起こす。多くの免疫チェックポイント阻害薬が多くのがん種で使用されるようになると、稀ではあっても重大な副作用を起こすことも明らかになった。これらの副作用をきちんと管理し薬剤の有効性を引き出す必要がある。副作用およびその管理はがん種によらず共通である。がん種を問わず治療を担当するがん薬物療法専門医が中心となって免疫チェックポイント阻害薬を使用する体制を各施設で構築することが求められる。またこれらの薬剤は高額である。現在、世界中で精力的に研究されている効果や副作用のバイオマーカーが、今後明らかになると思われる。これらを有効に活用し本当に効果が期待できる患者に使用する必要がある。
 現在、多くの臨床試験が行われ数カ月ごとに新しい知見が加わり、多くのがんの治療体系が頻繁に変わっている。そのためがん免疫療法ガイドラインも2年で改訂することになった。情報量も増えているため本版では、がん免疫療法の分類、副作用管理、癌種別エビデンス、ともに章が増え全体のページ数も大幅に増加した。今後もこの早い変化は続くであろうし、効果や副作用のバイオマーカーが同定されるであろう。書籍としてのガイドラインでは最新の情報を把握することは困難となっている。実際に、このガイドラインを改訂している間に食道がんでニボルマブが、ホルモン受容体陰性HER2陰性乳がんに対してアテゾリズマブがそれぞれ有効性を示した。これらの情報を遅滞なく適切に実地診療に取り入れていく必要がある。本ガイドラインが実地診療の役に立つことを願うのはもちろんのことであるが、常に新しい情報の収集に心がけその情報の質を評価し実地診療に反映させる臨床および分析能力が求められる。個々の医師の力量が問われる時代となっている。

2019年3月
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会 理事長
神戸大学大学院医学研究科腫瘍・血液内科学教授
南 博信



◎第2版発刊によせて

 このたび、『がん免疫療法ガイドライン 第2版』を発刊することとなった。第1版は2016年12月の発刊であったため、2年を待たずしての改訂作業となる。このわずか2年の間にがん免疫療法のみならず、がん薬物療法そのものが大きな変容を遂げた。その中心となる免役チェックポイント阻害薬の登場は、従来の医薬が達成できなかった長期予後、予期せぬ副作用、より有効なバイオマーカー探索への課題、さらには複合免疫療法への期待など、がん薬物療法に大きな期待とインパクトを与え続けている。
 今回の改訂版は3つのパーツで構成されている。すなわち、1.がん免疫療法の分類と作用機序、2.免役チェックポイント阻害薬の副作用管理、3.がん免疫療法の癌種別エビデンス、である。
 分類と作用機序の項では、現状に於ける研究状況と主要論文が示されている。治療効果が不十分な領域も含めて記載があり、現時点でのがん免疫療法を俯瞰することができる。副作用管理は、免疫関連有害事象を中心に、詳細な記載がなされている。腫瘍内科医にとっては経験の乏しい領域ではあるが、非がん領域の専門家の力も借り、徐々に集積してきた知見も織り込んで、しっかりとした内容に仕上がっている。癌種別エビデンスに関しては、臓器別に簡潔かつ明確に記載されている。とはいえ、次々に新しいエビデンスが登場しているだけに、作成委員の苦労も大きかったと思う。
 奇しくも、2018年10月1日、本庶佑先生がノーベル医学生理学賞を受賞されたこともあり、がん免疫療法の新時代を記念する改訂になった感がある。本ガイドラインが、今後多くの癌種において中心的存在となることが想定されるがん免疫療法の適正使用に資することを祈念する。

2019年3月
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
ガイドライン委員会 委員長
九州大学大学院胸部疾患研究施設教授
中西 洋一