小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2017年版

小児〜若年がん患者の妊孕性温存に関する本邦初のガイドライン!

編 集 日本癌治療学会
定 価 3,240円
(3,000円+税)
発行日 2017/07/20
ISBN 978-4-307-30129-9

A4判・240頁・図数:14枚

在庫状況 あり

治療による妊孕性の消失が予想されるがん患者(40歳未満で治療を開始したがん患者)において「妊孕性温存が勧められるか」、「どのような方法があるか」、「がん治療の遅延は許容されるか」、「治療後いつから妊娠可能となるか」などの観点から妊孕性温存に関するCQを策定。女性生殖器、乳腺、泌尿器、造血器、小児、骨軟部、脳、消化器の8つの領域に分けて解説している。
がん診療、生殖補助医療に携わる医療スタッフ必読の一冊。
作成者名簿
CQ、推奨グレード一覧

概説

総論
 CQ1 挙児希望を有するがん患者に対して、どのような妊孕性に関連する情報を提供すべきか?
 CQ2 挙児希望を有する女性がん患者に対して、どのような生殖補助医療が勧められるか?
 CQ3 挙児希望を有する男性がん患者に対して、どのような生殖補助医療が勧められるか?
 CQ4 遺伝性腫瘍患者に対して、どのような妊孕性に関連する情報を提供すべきか?

女性生殖器
 CQ1 どのような子宮頸がん患者が妊孕性温存療法の適応となるか?
 CQ2 子宮頸がんに対する妊孕性温存術式は?
 CQ3 どのような子宮体がん患者が妊孕性温存療法(高用量黄体ホルモン療法)の適応となるか?
 CQ4 どのような卵巣悪性腫瘍患者が妊孕性温存療法の適応となるか?
 CQ5 卵巣悪性腫瘍患者に対する妊孕性温存療法の術式は?
 CQ6 妊孕性温存療法後の妊娠サポートはどうすべきか?

乳腺
 CQ1 どのような乳がん患者が妊孕性温存療法の適応となるか?
 CQ2 乳がん患者が妊孕性温存を希望した場合、化学療法開始遅延は容認されるか?
 CQ3 乳がん患者が妊娠を希望した場合、予後の観点からは、治療終了後いつから妊娠可能となるのか?
 CQ4 乳がん患者が妊娠を希望した場合、催奇形性など薬物治療や放射線治療による安全性の観点からは、治療終了後いつから妊娠可能となるか?
 CQ5 挙児希望を有する乳がん患者に勧められる妊孕性温存療法にはどのようなものがあるか?

泌尿器
 CQ1 どのような泌尿器がん患者に妊孕性温存療法を説明すべきか?
 CQ2 泌尿器がん患者が治療開始に先立ち妊孕性温存を希望した場合、妊孕性温存療法に伴う治療開始遅延は容認されるか?
 CQ3 泌尿器がん患者が挙児を希望した場合、治療終了後いつから挙児または妊娠可能となるか?
 CQ4 挙児を希望する泌尿器がん患者に勧められる妊孕性温存療法にはどのようなものがあるか?

小児
 CQ1 どのような小児がん患者が妊孕性温存療法の適応となるか?
 CQ2 小児がん患者の妊孕性温存療法にはどのような方法があるか?
 CQ3 妊孕性温存療法のために、小児がん治療を調整することは可能か?
 CQ4 小児がん患者の治療後の妊娠・分娩について、どのような情報を提供すべきか?

造血器
 CQ1 どのような造血器悪性腫瘍患者が妊孕性温存の適応となるか?
 CQ2 造血幹細胞移植が妊孕性に及ぼす影響について、どのような情報提供をすべきか?
 CQ3 挙児希望を有する急性白血病患者に勧められる妊孕性温存療法は?
 CQ4 挙児希望を有するその他の造血器悪性腫瘍患者に勧められる妊孕性温存療法は?
 CQ5 挙児希望を有する造血幹細胞移植患者に勧められる妊孕性温存療法は?
 CQ6 造血器悪性腫瘍患者に対する治療後の妊娠・分娩について、どのような情報を提供すべきか?

骨軟部
 CQ1 どのような悪性骨軟部腫瘍患者が妊孕性温存療法の適応となるか?
 CQ2 悪性骨軟部腫瘍患者の妊孕性温存療法にはどのような方法があるか?
 CQ3 悪性骨軟部腫瘍患者が挙児を希望した場合、治療終了後いつから挙児または妊娠可能となるか?
 CQ4 骨盤悪性骨軟部腫瘍の治療後の妊娠・分娩は可能か?


 CQ1 脳腫瘍患者の妊孕性温存療法にはどのような方法があるか?
 CQ2 脳腫瘍患者が治療開始に先立ち妊孕性温存を希望した場合、妊孕性温存療法に伴う治療開始遅延は容認されるか?
 CQ3 脳腫瘍患者が挙児を希望した場合、治療終了後いつから挙児または妊娠可能となるか?

消化器
 CQ1 どのような消化器がん患者が妊孕性温存療法の適応となるか?
 CQ2 消化器がん患者の妊孕性温存に際し、どのような説明をすべきか?
 CQ3 消化器がん患者の妊孕性温存療法にはどのような方法があるか?
 CQ4 消化器がん患者が挙児を希望した場合、治療終了後いつから妊娠可能な時期となるか?

文献検索式
索 引
・妊孕性温存のガイドライン発刊に寄せて

 旧来のがん医療では、ともするとがんそのものに対する治療のみが重視され、日常生活における様々な要素を犠牲にしても治療を優先する傾向に陥りがちでした。しかし、近年では、がんの治療成績全般の向上とともにがんサバイバーシップの概念が広く認識され、治療期間中および治療後においても高い生活の質を保ち、より豊かな人生を追求することに焦点があてられるようになりました。このような意識の変化にともない、現在では小児、思春期・若年がん患者における妊孕性温存療法は、がん治療医の多くが考慮すべき極めて重要な課題であると認識さています。
 「妊孕性温存のガイドライン」は、これら時代の要請に応えるべき医療者が、最新の知見をもとにした、最善の医療を提供するための基盤となるべく、日本癌治療学会における、「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン作成ワーキンググループ」を中心として作成されました。「がん」といってもその性質や治療法は多様であり、がん治療の特徴によって、様々な原因で性腺機能不全による妊孕性の喪失が生じることが知られています。日本癌治療学会は領域横断的な学会として、本ガイドライン作成にあたり、各臓器・領域の専門家が、疾患特性にあわせたCQを設定し、その高い専門的な見地から、本邦の医療制度の現状に即した見解を提供しています。そのため、妊孕性の喪失が予想される疾患に関わる医療従事者が、日々の診療において実際に役立てることができる具体的な内容になっています。
 小児、思春期・若年がん患者に対する妊孕性温存療法は、前向きのランダム化比較試験などによりエビデンスを構築することが困難な領域であり、本ガイドラインはエビデンスベースではなく、コンセンサスベースで作成が行われた経緯があります。そのため、「ASCOガイドライン」・「FertiPROTEKTの指針」・「ISFPのPractice Committee Opinion」など、海外のエビデンスに基づいた指針を参照しながら、第54回日本癌治療学会学術集会におけるコンセンサスミーティングや、パブリックコメント等で寄せられた意見をふまえて慎重な討議が行われてきました。また、推奨文と推奨グレードについては、コアメンバー会議にて全ての委員の賛同が得られるまで討議を行った上で、最終決定されています。
 最後に、小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン作成ワーキンググループ委員長青木大輔先生、副委員長鈴木直先生、統括委員大須賀穣先生をはじめ、本ガイドラインの作成にご尽力いただきました委員会、ワーキンググループ委員の皆様に心から深甚なる敬意を表します。医療者の皆様には是非とも本ガイドラインをご活用いただき、人生の大きな喜びの一つを与えてくれる妊孕性温存という大切な手段の存在を、より多くのがん患者の皆様がしっかりと認識し、希望に応じて享受することのできる社会を形成していくことにご尽力いただけますよう心からお願い申し上げます。

2017年6月
日本癌治療学会
理事長 北川 雄光


・謝辞

 小児から若年成人のがん治療において妊孕性に配慮することは、患者自身、家族はもとより、それに係わる医療従事者にとってもその取扱い方、考え方が大きな課題でしたが、わが国ではこれまで各種がんを包含した指針はありませんでした。しかし悪性疾患に対する治療成績が向上し、治療中・治療後のQOLにも思いを馳せられるようになった今日では、こういった指針が待ち望まれていました。
 本ガイドラインの編纂にあたっては、各疾患領域の方々が一堂に集って一冊の書籍として完成させるためにご尽力いただいたことに、心からの謝意を表します。何より、共通の理念を持って各領域の疾患への対応を記載できたこと、そしてそれが一カ所にまとまっていることは患者や家族にとっても、医療従事者にとっても大きな利点であります。それぞれのバックグラウンドや疾患概念が異なる中で、約2年間という歳月をかけてじっくり協議を重ね、お互いの理解に務めながらの編み上げにご参加いただいた様々な方々に感謝いたします。それらは小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン作成ワーキンググループのコアメンバー、女性生殖器、乳腺、泌尿器、小児、造血器、骨軟部、脳、消化器の各グループメンバーであり、それぞれのグループに加わっていただいた生殖領域専門のメンバーや研究協力者の皆さまであり、本学会のがん診療ガイドライン作成・改訂委員会であり、がん診療ガイドライン評価委員会であり、パブリックコメント募集にご協力いただいた会員諸氏、さらに学術団体・患者団体の諸氏であります。これらの中のどれ一つがかけても今日の完成に漕ぎつけることはできませんでした。実際のガイドライン作成過程では、各グループ間の相互理解を図りながら、文言一つひとつを決定するという作業を繰り返し、はじめて推奨文や推奨レベルが徐々に収束していったことを感慨深く思い起こしております。コンセンサス形成のために払われた各位の惜しみない努力に改めて感謝申し上げます。
 そして本書を手に取り、がん治療と妊孕性温存に心を寄せてくださるすべての方々にも心からの謝意を表し、また本ガイドラインが医療現場で活用されていくことを強く願い、今後のがん・生殖医療の充実の礎になることを祈念しております。最後に、がん・生殖の専門家として不眠不休のご尽力をいただいたワーキンググループ副委員長の鈴木 直 教授に厚く謝意を表するとともに、各疾患グループの調整と編集の実務を担当してくれた、日本癌治療学会事務局の織田美佐緒氏、佐藤裕子氏、金原出版株式会社の安達友里子氏に深謝申し上げます。

2017年6月
日本癌治療学会
小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン作成ワーキンググループ
委員長 青木 大輔