JASCCがん支持医療ガイドシリーズ がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き 2017年版

実臨床で役立つ!CIPNに使用される薬剤のCQと推奨を掲載

編 集 日本がんサポーティブケア学会
定 価 2,160円
(2,000円+税)
発行日 2017/10/20
ISBN 978-4-307-20377-7

B5判・80頁・図数:5枚

在庫状況 あり

化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は頻度の高い有害事象であるが、現在のASCOのガイドラインのみでは日本国内での実臨床に十分対応できないことから、CIPNに対し国内で高頻度に使用されている薬剤についてCQと推奨を作成し掲載した。そのほか、各抗がん薬によるCIPN症状の違い、被疑薬の減量や中止、運動療法、看護などについても記載しており、実臨床に役立つ。CIPNに関するエビデンスの整理にも最適の一冊。
■本手引きについて 
1. 本手引き作成の目的
2. 文献検索
3. 文献の適格基準
4. エビデンスレベル
5. エビデンスレベルを決定する際に参考とした研究デザイン
6. 推奨度
7. 作成手順
8. 利益相反開示事項
9. 末梢神経障害のGrading(CTCAE v4.0)
10. 本書で汎用される略語、専門用語

■診断、治療アルゴリズム

第1章 総論
1. CIPNの頻度
2. CIPNの症候学的分類
3. 病理組織学的分類と症状
4. CIPNと神経障害性疼痛の関係
5. CIPNの患者側のリスク因子
6. 鑑別診断に用いられる検査項目
7. 各薬剤によるCIPNの症状
8. 臨床試験におけるCIPNの診断・評価
9. ASCOガイドラインにおけるCIPNの評価法

第2章 クリニカルクエスチョンと推奨
CQ1:オキサリプラチンによるCIPN症状(しびれ、疼痛)の予防にカルシウム/マグネシウム投与は効果があるか?
CQ2:オキサリプラチンによるCIPN症状(しびれ、疼痛)の予防に牛車腎気丸投与は効果があるか?
CQ3:CIPNの症状(しびれ、疼痛)の緩和にビタミンB12 製剤投与は効果があるか?
CQ4:CIPNの症状(しびれ、疼痛)の緩和にプレガバリン、ガバペンチン投与は効果があるか?
CQ5:CIPN の症状(しびれ、疼痛)の緩和にデュロキセチン投与は効果があるか?
CQ6:CIPN の疼痛に対する非ステロイド性消炎鎮痛薬投与は鎮痛効果があるか?
CQ7:CIPN の疼痛に対するオピオイド投与は鎮痛効果があるか?

第3章 臨床における諸問題
A. CIPNにおける被疑薬の減量あるいは中止について
B. 各薬剤の投与量、有害事象、薬物相互作用
 1.デュロキセチン
 2.ビタミンB12
 3.プレガバリン
 4.非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
 5.アセトアミノフェン
 6.オピオイド
C. 化学療法誘発性急性神経障害について
 1.オキサリプラチン
 2.タキサン系製剤
D. コースティング
E. 運動療法ほか
F. CIPNに関する看護
 1.治療前オリエンテーション
 2.アセスメント
 3.CIPN症状Grade 2、3の具体例
 4.日常生活の指導
 5.マッサージ
 6.症状評価のためのアセスメントスケール(苦痛・疼痛の評価スケール)

第4章 資料
A. 重要文献紹介
 1.成人がんサバイバーにおける化学療法誘発性末梢神経障害の予防と治療:ASCO 臨床ガイドライン
 2.がん薬物療法による末梢神経障害に対する治療薬のサーベイランス:日本臨床腫瘍学会
B. クリニカルクエスチョンにおける主要文献のバイアスリスクの評価

■索引
 がん薬物療法は、この40年の間に殺細胞性抗がん薬(いわゆる抗がん剤)の種類の増加、併用療法の進歩、分子標的治療薬の開発により、生存率の向上、QOLを維持しながらの延命に寄与してきた。一方、それは骨髄抑制をはじめとする臓器障害、悪心・嘔吐を筆頭とする身体的な障害や精神・社会的なつらさの犠牲のもとに得られた成果である。なかでも四肢の末梢ほど強く出現する感覚鈍麻、感覚異常は、外観から知り得ない末梢神経障害によって起こる症状である。抗がん薬に伴う末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy;CIPN)は、気持ち悪い異常感覚から日常生活に支障をきたし、重篤な状態では歩行、衣服の着脱ができなくなることもある。しかも、骨髄抑制のように休薬により速やかに回復する一過性のものは少なく、CIPNの多くが月あるいは年単位でしか改善せず、生涯何らかの障害が残ることが稀でない。
 情報の氾濫している現在、このような持続するつらい感覚異常を少しでも軽くしようと、患者・家族、知人は、エビデンスの明確でない「良いと思う治療」を薦め、実践することが多い。これらは高額であることも多く、効果が期待できないばかりか、かえって負の結果を招くこともある。そういったなかで、第一線で治療にあたっている医療者は、強弱は別として「エビデンスのある治療」、「有効性がはっきりしないもの」、どちらかといえば、「実施すべきではない治療」を記載した実地診療に役立つ手引書の必要性を感じていた。
 執筆者である平山(東札幌病院)、吉田(福岡大学病院)両氏は、CIPNに対する治療法の開発に取り組んでいるなかで、すでにprovisional statementをまとめていた。当初、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)の神経障害部会の部会長・副部会長の立場からJASCCのHPで公開予定であったが、よくまとまったinformativeな内容であり、冊子体として出版することにより多くの医療者に情報が提供できるのではないかとJASCC内から声があがり、金原出版の佐々木瞳女史に相談したところ、手引書として出版が可能であるとの評価を得、体裁を整え、このたび出版の運びとなった。
 第一線の病院で日常診療の忙しいなか、執筆していただいた両氏の努力に敬意を表するとともに、JASCC神経障害部会の部会員による査読ならびに齊藤光江ガイドライン委員長をはじめとするガイドライン委員の的確な問題点の指摘と執筆者による修正を複数回繰り返した結果、本冊子が完成した。本冊子は、現時点での手引書であり、今後、新規エビデンスが創出されるはずであり、定期的に改訂することが予定されている。また、今回はCIPNに対する治療薬が中心の記載であることから、次期改訂時には、CIPN全般にわたる総論的な部分や非薬物療法についてもさらに充実したものにすることが期待される。
 CIPNはエビデンスの少ない領域であり、執筆に多大の困難があったことが予想される。執筆者の多大な努力はもちろんであるが、査読、適切な評価をいただいた委員の方々、また冊子体として出版するにあたって種々の的確な助言をいただいた佐々木瞳女史に深謝し、本書の序としたい。

2017年9月
日本がんサポーティブケア学会
理事長 田村 和夫