臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版

臨床、病理の両面にわたり近年の研究成果を広く取り入れて改訂!

編 集 日本肝癌研究会
定 価 3,780円
(3,500円+税)
発行日 2015/07/23
ISBN 978-4-307-20347-0

B5判・100頁・図数:11枚・カラー図数:76枚

在庫状況 あり

今改訂では、胆道系の区分が変更され、穿刺局所療法と化学療法の項が新設された。進行度分類は、肝細胞癌では癌破裂の扱いが変更され、肝内胆管癌ではT因子項目の変更、T1-3でN1の場合の進行度が変更された。肝癌集学的治療効果判定基準はRECIST v1.1と整合性をとり、肝外病変の評価が加えられた。病理組織学的事項ではWHO分類の改訂(2010)を受け、IPNB、BilIN、MCN等が記載された。
略語表

総説
I.目的
II.対象
III.記載法の原則

第I部 臨床的事項

A.解剖学的事項
I.肝葉と肝区域
II.リンパ節
 1.肝・胆道のリンパ節
 2.リンパ節群分類
III.胆管

B.画像診断所見
I.占居部位(Image-Lo)
II.腫瘍個数(Image-Number)
III.大きさ(Image-Size)
IV.辺縁(Image-Border)
V.腫瘍内部(Image-Inside)
VI.血管侵襲(Image-V)・胆管侵襲(Image-B)
VII.遠隔臓器転移(Image-M)

C.臨床検査所見
I.肝障害度(liver damage)
II.食道・胃静脈瘤の内視鏡所見(EV)
III.針生検による肝線維化の組織所見(f)

D.肉眼分類
I.肝細胞癌
II.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
III.粘液?胞腺癌

E.手術所見,切除標本肉眼所見
I.占居部位(Lo)
II.大きさ,個数,存在範囲(H)
III.肉眼所見
 1.発育様式
 2.被膜形成(Fc)
 3.被膜浸潤(Fc-Inf)
 4.隔壁形成(Sf)
 5.漿膜浸潤(S)
 6.リンパ節転移(N)
 7.血管侵襲(V)
 8.胆管侵襲(B)
 9.腹膜播種性転移(P)
 10.切除断端の浸潤(SM)
 11.非癌部の所見

F.肝切除術
I.肝切除範囲(Hr)
II.リンパ節郭清(D)
III.癌の遺残(R)

G.局所療法

H.肝動脈カテーテル療法

I.化学療法

J.進行度分類(Stage)
I.肝細胞癌
II.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
参考:肝癌統合ステージング

K.肝切除術の治癒度
I.肝細胞癌
II.肝内胆管癌(胆管細胞癌)

L.肝癌治療効果判定基準
I.対象
II.記載法
III.標的結節の直接治療効果判定
IV.治療効果の総合評価
V.細則
VI.参考

M.再発肝癌

N.肝癌症例の統計的処理


第II部 病理組織学的事項

A.材料の取扱い
I.手術材料の取扱いおよび検索方法
II.剖検材料の取扱いおよび検索方法

B.肝癌の分類
I.分類の総則
II.肝細胞癌
 1.概要
 2.肉眼分類
 3.組織分類
  i.組織学的分化度
  ii.組織構造
  iii.細胞学的性状
 4.特殊型
 5.肝内転移と多中心性発生
  i.肝内転移(im)
  ii.多中心性発生
 6.被膜浸潤,血管侵襲,胆管侵襲などの記載のしかた
 7.早期肝細胞癌とその類似病変の診断基準
III.肝内胆管癌(胆管細胞癌)
 1.概要
 2.肉眼分類
 3.組織分類
  i.腺癌
  ii.特殊型
付記.胆管上皮内腫瘍性病変
 i.胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)
 ii.胆管内上皮内腫瘍(BilIN)

IV.細胆管細胞癌
V. 粘液嚢胞腺腫・粘液嚢胞腺癌(粘液嚢胞性腫瘍:MCN)
 1. 分類
  i. 粘液嚢胞腺腫
  ii. 粘液嚢胞腺癌
 2. 付記
VI.混合型肝癌(肝細胞癌と肝内胆管癌の混合型)
VII.肝芽腫
VIII.その他

C.非癌部の組織学的所見(f)

病理写真
第6版 序

 2009年6月に原発性肝癌取扱い規約第5版補訂版が刊行されてから6年が経過した。この間、肝癌の治療は手術、穿刺局所療法(ラジオ波焼灼療法)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)の3大治療法に加えて分子標的薬が登場し、集学的治療のための選択肢がさらに広がった。肝癌集学的治療効果判定については前回改訂されたが、さらにPD判定などについてRECIST v1.1と整合性をとり、肝外病変の評価も加えて日常診療での不都合がないような改訂が加えられた。また、穿刺局所療法と化学療法についての用語が整備された。
 肝細胞癌の進行度分類では「破裂」と「リンパ節転移」の予後へのインパクトについて、それぞれ日本肝癌研究会全国原発性肝癌追跡調査データを用いた研究が行われ、その結果を受けて委員会で討議した。「破裂」は本来、潜在的な腹膜播種という状態であり、予後不良と予想されるので、これまでは自動的にT4(すなわちStage IVA以上)と扱っていた。解析結果によると、確かに破裂を伴うと0.5から2 Stage分、予後が悪化するが、一律Stage IVA相当になるわけではないことがわかった。また、破裂があれば1 Stageアップするという案も出されたが、一律に1 Stage分アップするほど一定の予後悪化を示すデータでもなかった。そこで、S3という記載により破裂の存在が記録できるようにした上で、今後の症例蓄積を待つことになった。すなわちT因子は破裂の有無では変えず、「破裂=T4」というこれまでの扱いは廃止した。
 「リンパ節転移」については、第5版までT因子に関わらず、N1であればStage IVAとしていたが、充分な根拠はなかった。そこで、全国調査データから病理学的にリンパ節転移が証明された切除症例を拾い上げ、Stage IVAを「T4/n0」、「any T/n1」の2群に細分類した上で、各Stage間で予後を比較した。その結果、「T4/n0」と「any T/n1」には有意差がなく、かつStage IIIおよびStage IVBとの間にはそれぞれ有意差が確認されたため、T4もしくはN1の存在により、Stage IVAとする従来の規約の妥当性がデータによって示された。以上、前規約委員長の幕内雅敏先生が挙げられていた2つの課題、破裂とリンパ節転移の問題がここで一つの解決を見たわけである。
 肝内胆管癌の進行度分類は今回変更が加えられた。日本肝癌研究会全国原発性肝癌追跡調査で登録された外科切除例データの解析結果から、漿膜浸潤や静脈浸潤ではなく門脈・動脈・主要胆管への浸潤をT因子の構成項目とした。また、N1でもT1¬?3の場合はStage IVAに格上げして切除の対象となり得ることを明示した。肝門に浸潤した肝内胆管癌と胆道癌取扱い規約で扱う肝門部胆管癌との異同について胆道癌取扱い規約委員会との合同委員会で意見交換したが、完全な意見の一致を見ず、胆道癌取扱い規約第6版では「肝門部領域胆管癌」という広い概念が採用された。原発性肝癌取扱い規約第6版では肝内に腫瘤を有する胆管癌は肝門部への浸潤の有無に関わらずすべて肝内胆管癌としてこれまで通り扱うことにした。
 病理組織学的事項では2010年の消化器腫瘍WHO分類(第4版)の改訂をうけて胆管上皮内腫瘍性病変を胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)と胆管内上皮内腫瘍(BilIN)に分類した。肝嚢胞性腫瘍についても膵粘液嚢胞性腫瘍(MCN)のcounterpartとしての肝MCNの概念が記載された。
 今後の課題として、わが国とは違う進行度分類となってしまっているUICC/AJCCのTNM分類との協調・協力がある。不完全な統合ステージングでありながら現在世界で最も広く使われているBCLC/AASLD/EASL stagingよりも優れたステージングを提案するためにお互いに歩みよることができるのか、データに基づいた対話を開始する予定である。
 最後に本改訂にご協力、ご尽力頂いた多くの会員に心より感謝する次第である
 2015年7月
 國土 典宏