がん免疫療法ガイドライン

免疫チェックポイント阻害剤の適正使用と副作用管理を主とした本邦初のガイドライン!

編 集 日本臨床腫瘍学会
定 価 2,160円
(2,000円+税)
発行日 2016/12/20
ISBN 978-4-307-10183-7

B5判・130頁・図数:36枚

在庫状況 あり

ニボルマブの登場は、がん免疫療法を取り巻く状況を一変させた。更にイピリムマブ、ペムブロリズマブも承認され、今後も多くの癌腫に対する適応拡大が期待されている。一方、従来のがん治療で経験したことのない免疫関連有害事象(irAE)の出現や、効果が一部の症例に限られること、高額な薬剤費など課題も多い。本ガイドラインでは、免疫療法の基本、irAEの管理、各癌腫に対する免疫療法のエビデンスについて最新の情報をまとめた。
がん免疫療法ガイドライン作成にあたって

1章 がん免疫療法の分類と作用機序
1.免疫チェックポイント阻害剤
 1)CTLA-4阻害剤
 2)PD-1阻害剤
 3)PD-L1阻害剤
 4)その他の免疫チェックポイント阻害剤
2.共刺激分子に対するアゴニスト抗体
3.がんワクチン療法
 1)がんペプチドワクチン
 2)腫瘍細胞ワクチン
 3)樹状細胞ワクチン
 4)その他のがんワクチン
4.エフェクターT細胞療法
 1)非特異的エフェクター細胞輸注療法
 2)標的抗原特異的エフェクターT細胞輸注療法
 3)非自己細胞を用いた細胞療法
5.その他
 1)サイトカイン療法
 2)BRM(biological response modifier)

2章 免疫チェックポイント療法の副作用
1.総論
2.皮膚障害
3.肺障害
4.肝・胆・膵障害
5.胃腸障害(下痢・大腸炎)
6.腎障害
7.神経障害・筋障害
8.糖尿病
9.下垂体機能障害
10.副腎機能障害・副腎不全
11.甲状腺機能障害
12.眼障害
13.サイトカイン放出症候群
14.Infusion reaction
15.ステロイド不応性・難治性の免疫関連有害事象に対する免疫抑制剤の使用について

3章 がん免疫療法の癌腫別エビデンス
1.造血器腫瘍
2.食道癌
3.胃癌
4.大腸癌
5.肝癌
6.胆道癌
7.膵癌
8.肺癌
9.頭頸部癌
10.婦人科癌
11.腎細胞癌
12.尿路上皮癌
13.前立腺癌
14.脳腫瘍
15.悪性黒色腫
16.骨軟部腫瘍
17.乳癌
18.小児癌

索引
<発刊にあたり>

 近年の免疫療法、特に免疫チェックポイント阻害剤の効果には目覚ましいものがあります。免疫療法の歴史は古く、以前より免疫療法は盛んに研究されていましたが、悪性黒色腫や腎細胞癌など免疫療法が奏効する一部の腫瘍に対する治療という概念がぬぐえず、一般的な固形がんに対する治療としての効果は、極めて限られていました。これを一変させたのが、抗PD-1抗体であるニボルマブの登場であり、第I相試験で悪性黒色腫、腎細胞癌とともに非小細胞肺癌に対する奏効例が報告され、幅広い癌腫に対して免疫治療の開発が行われる契機になったと思われます。
 日本でも悪性黒色腫に対するイピリムマブに続き、ニボルマブが悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、ホジキンリンパ腫に対して、ペムブロリズマブも悪性黒色腫に対して承認されています。今後も頭頸部癌など多くの癌腫に対して適応が拡大するものと期待されています。その一方で、これまでのがん治療では経験したことのない免疫関連の有害事象が出現することや、効果が一部の症例に限られているものの無効例を選別するバイオマーカーが確立していないこと、高額な薬剤費など、解決すべき課題も多く存在しています。さらに、一部の医療機関で行われている不適切な免疫チェックポイント阻害剤の使用状況も社会問題となっています。
 このように今後も益々臨床応用が進むと期待されている免疫療法ですが、その使用においては多くの課題を抱えていることも事実です。日本臨床腫瘍学会では日本での免疫治療の適正使用を推進するために、日本がん免疫学会、日本臨床免疫学会の協力のもと本ガイドラインを発刊することになりました。本ガイドラインでは、免疫療法の基本概念、免疫関連有害事象の解説および対処法、各癌腫に対する免疫療法のエビデンスが記載されています。免疫関連有害事象の対処方法に関するエビデンスはそれほど多いものではありませんが、これまでの臨床試験での経験から現時点で最善と思われるものを記載してあります。癌腫ごとの免疫療法のエビデンスの記載は、日進月歩の免疫療法に追いつくことが非常に困難ですが、今後も定期的な改訂を行ってup to dateな情報提供が必要になると思われます。
 最後に、本ガイドライン作成にご尽力いただいた和歌山医大の山本信之教授をはじめとする作成ワーキンググループの諸氏に心から敬意を表するとともに、発刊に関する業務をしていただいた金原出版株式会社の担当者へ深謝いたします。本ガイドラインが有効に活用され、日本での免疫治療が適正に実施され、一人でも多くのがんに苦しむ患者さんのお役に立つことを祈念しています。

2016年12月
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
理事長 大江 裕一郎



<発刊によせて>

 2014年7月4日、抗PD-1抗体であるニボルマブの悪性黒色腫に対する日本での製造販売が承認された。本剤の悪性黒色腫に対する承認は、日本が米国や欧州に先駆けて取得した。既に米国、欧州では悪性黒色腫に対して、抗CTLA-4抗体であるイピリムマブが承認取得されていたが、日本でのイピリムマブの承認はニボルマブに遅れること1年、2015年7月のことであった。その後、ニボルマブは、日本において、2015年12月非小細胞肺癌、2016年8月腎細胞癌、2016年12月ホジキンリンパ腫に対しそれぞれ承認された。また、同様の抗PD-1抗体であるペムブロリズマブは、2016年9月に日本で悪性黒色腫に対する治療薬として承認され、現在、非小細胞肺癌で承認申請中である。ニボルマブやペムブロリズマブの抗PD-1抗体は、上記に続いて、2017年には頭頸部癌、胃癌に対して、日本での承認を得ると思われる。
 このように、従来の殺細胞性抗がん剤や分子標的治療薬とは異なる作用機序を有する免疫チェックポイント阻害剤が次々と承認され、急激な勢いで臨床現場に導入され始めている。免疫チェックポイント阻害剤を代表とする免疫療法の特徴は、特有の副作用を有すること、また、癌腫にもよるが腫瘍縮小効果は必ずしも高くない一方、長期にわたるresponderが一定の割合で存在し、全体として良好なoverall survivalが期待できる点、pseudo-progressionの存在など、従来の抗悪性腫瘍薬とは異なる点も多く、適正使用上、留意すべきことが多岐にわたる。免疫チェックポイント阻害剤承認の前後より、免疫療法に関する臓器横断的な適正使用についてのガイドラインの必要性を強く感じ、公益社団法人日本臨床腫瘍学会こそがその策定にもっとも相応しい組織と考えた。作成責任者(ワーキンググループ長)を日本肺癌学会から出されている「肺癌診療ガイドライン」委員長として実績のある山本信之先生に依頼し、すぐに快諾を得た。山本信之先生自身もこの分野のガイドライン策定の必要性を強く感じていたのではないかと考える。その後、短期間でこの重要なガイドラインを刊行できたことは、山本信之ワーキンググループ長の傑出したリーダーシップはもとより、日本がん免疫学会、日本臨床免疫学会の協力が得られたこと、作成や評価にあたった各領域の専門家の方々や日本臨床腫瘍学会事務局メンバー、金原出版など、関係された方々皆の多大なるご尽力によるものにほかならない。この場を借りて、本ガイドライン作成に関わったすべての関係者に厚く御礼申し上げたい。
 今後、がん免疫療法ががん治療の大きな役割を担うことは必至であり、さまざまな癌腫に対しさまざまな免疫療法が臨床現場に入ってくると予想される。本書が、実地臨床の診療ガイドラインとして多くの医師およびメディカルスタッフにお役立ていただけることを願って止まない。同時に、適切かつ定期的な改訂を行って、up-to-dateな診療指針として皆様のお手元にお届けできるように努力していきたい。

2016年12月
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
ガイドライン委員長 室 圭