放射線治療 基礎知識図解ノート

圧倒的な図解と臨床視点で、放射線治療が理解できる新しい教科書

監 修 榮 武二 / 櫻井 英幸
編 集 磯辺 智範
定 価 7,020円
(6,500円+税)
発行日 2016/03/10
ISBN 978-4-307-07102-4

B5判・312頁・図数:241枚・カラー図数:185枚

在庫状況 あり

圧倒的な図解と写真が特徴の教科書『MR・超音波・眼底 基礎知識図解ノート』に「放射線治療」が登場! 知識ゼロの学生でも、この一冊で放射線治療の基礎を幅広く、モレなく理解できる。前作同様、物理や生物が苦手な学生でもわかるように、豊富な図解でカンタンに解説。また、まとまった知見が少ない「放射線治療」における臨床のプロが執筆陣であることから、基礎に加えて、臨床でのポイントやテクニックまで一気にわかる。
第1章 総論
 1 放射線治療の原則と特徴
  1 腫瘍について
  2 がんの病期分類
  3 がんの統計(死亡率)
  4 がんの治療法
  5 放射線治療の特徴
  6 放射線治療の原則
  7 奏効率(response rate)
  8 日本における放射線治療の現状と展望
 2 放射線治療の適応と選択
  1 放射線治療の適応
  2 放射線治療による正常組織の反応
  3 正常組織の放射線感受性
  4 正常組織の耐容線量と有害事象
  5 腫瘍制御線量
 3 放射線治療の術式
  1 放射線治療の照射術式
  2 高精度放射線治療
 4 放射線治療に携わる職種
  1 放射線治療におけるスタッフ構成と役割
  2 放射線治療プロセスにおける各職種の関わり

第2章 知っておきたい基礎知識
 1 基礎のキソ
  1 放射線が人体に当たった場合
  2 ヒトの生命活動に支障をきたす標的
  3 正常細胞とがん細胞の違い
 2 細胞生存率曲線
  1 標的理論(target theory)と生存率曲線
  2 生存率曲線の見方
  3 LQ モデル(linear quadratic model)
  4 α/β値
  5 α/β値と分割照射
  6 正常組織のα/β値
  7 生物学的効果線量(biological effective dose:BED)
 3 放射線の修飾効果
  1 細胞周期(cell cycle)
  2 線量率効果
  3 酸素効果
  4 温度効果
  5 放射線増感剤
  6 線エネルギー付与(linear energy transfer:LET)
  7 生物学的効果比(relative biological effectiveness:RBE)
 4 放射線損傷からの回復―4つのR
  1 回復(repair)
  2 再分布(同調)(redistribution)
  3 再酸素化(reoxygenation)
  4 再増殖(repopulation)

第3章 外部放射線治療装置
 1 医療用直線加速装置(linear accelerator:Linac、ライナック、リニアック)
  1 分類
  2 ライナックの外観
  3 ライナックの内部構造
  4 治療ビーム発生の流れ
 2 医療用円形加速装置
 3 その他の治療装置

第4章 照射関連補助器具
 1 照射野整形器具
  1 遮蔽金属ブロック
  2 シャドウトレイ
  3 照射筒(ツーブス、コーン)
  4 遮蔽用鉛板
  5 側視鏡
  6 マルチリーフコリメータ(multi leaf collimator:MLC)
 2 線量分布修正器具
  1 ボーラス
  2 ウエッジフィルタ(物理ウエッジ)
 3 患者固定器具
  1 シェル
  2 固定具
 4 照準器具
  1 レーザ照準器
  2 光学距離計

第5章 放射線治療計画
 1 外部照射における放射線治療の流れ
 2 放射線治療に用いられるさまざまな体積
  1 標的(target)
  2 マージン(margin)
  3 変動(variation)
  4 リスク臓器(organ at risk:OAR)
  5 直列臓器と並列臓器
 3 各種線量の定義
  1 iCRU基準線量
  2 線量評価に際して必要な指標
 4 シミュレーション
  1 シミュレータ
  2 治療前に行われるシミュレーションの一般的な流れ
  3 放射線治療計画装置への画像取り込み
  4 CT 画像による線量計算
  5 放射線治療計画装置(radiotherapy treatment planning system:RTPS)
   1 放射線治療計画立案の流れ
   2 位置照合
   3 線量体積ヒストグラム(dose volume histogram:DvH)
   4 治療計画の手法
   5 線量計算アルゴリズム

第6章 線量計測・線量分布 ミニマム基礎知識(X線・電子線)
 1 線量計測
  1 線量計測とは
  2 線量計測が必要な理由
  3 水吸収線量を正しく評価す
  4 線量計測に使用する器
  5 電離箱を用いた線量計
  6 水吸収線量の決定
  7 線量計測における電離箱線量計のセットアップ
 2 線量計測に関する用語(略語
 3 線量分布
  1 深部量百分率(percentage depth dose:PDD)
  2 深部電離量百分率(percentage depth ionization:PDi)
  3 軸外線量比(off-axis ratio:OAR)
  4 組織ファントム線量比(tissue-phantom ratio:TPR)
  5 組織最大線量比(tissue-maximum ratio:TMR)
  6 組織空中線量比(tissue-air ratio:TAR)
  7 出力係数(output factor:OPF)
  8 等線量曲線
  9 線量分布
  10 モニタ設定値(monitor unit:モニタユニット値・MU値)
   模範解答

第7章 外部放射線治療法
 1 照射法
  1 概要
  2 固定照射
  3 運動照射(moving field irradiation)
 2 照射技術
  1 概要
  2 呼吸性移動対策
  3 Tilting techniqu
  4 ハーフビーム法
  5 中央遮蔽(center split field)
  6 Field-in-field
  7 原体照射
  8 ノンコプラナー照射
  9 マントル照射(その他:ミニマントル照射、逆Y 字照射、全リンパ照射、亜全リンパ照射)
 3 高精度照射技術
  1 定位放射線照射(stereotactic irradiation:STi)
  2 強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:iMRT)
  3 画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy:iGRT)
  4 その他の照射技術
   1 全身照射(total body irradiation:TBi)
   2 術中照射(intra-operative radiation therapy:iORT)
   3 全脳全脊髄照射
  5 分割照射

第8章 密封小線源治療法
 1 概 要
  1 分類
  2 線源
  3 特徴
 2 装置、器具
  1 RALS(remote after loading system)
  2 装置
  3 器具
 3 線 源
  1 一般的事項
  2 各種線源
  3 線源配列
 4 腔内照射
  1 概要
  2 治療例(子宮頸癌)
 5 組織内照射
  1 概要
  2 治療例(前立腺癌)
 6 治療計画から照射まで(RALS を例に)
  1 全体の流れ
  2 治療計画の流れ(三次元治療計画)
 7 法令のポイント
  1 診療用放射線照射器具を永久的に挿入された患者の退出について

第9章 非密封核種内用療法
 1 概 要
  1 治療原理
  2 特徴
  3 Riの条件
  4 Riの物理特性
  5 種類
  6 安全管理
 2 131iによる治療
 1 Na131iによるバセドウ病(甲状腺機能亢進症)の治療
 2 Na131iによる甲状腺癌の治療
 3 131i-MiBGによる神経内分泌腫瘍の治療
  3 89Srによる治療
  4 90Yによる治療
  5 α線による治療

第10章 粒子線治療
 1 粒子線治療
  1 粒子線とは
  2 粒子線治療の特徴
  3 物理学的特徴
  4 生物学的特徴
  5 照射範囲の最適化
  6 粒子線治療装置
  7 粒子線治療のビーム形成
  8 粒子線治療の照射方法
 2 中性子捕捉療法
  1 中性子捕捉療法の概要
  2 BNCTにおける照射体系
  3 BNCTの薬剤
  4 BNCTの実際

第11章 QA・QC
 1 QA・QC の必要性
  1 概要
  2 照射事故からみるQA・QC の必要性
  3 QA・QCの目的
  4 臨床的QA、物理的・技術的QA
  5 許容レベルと介入レベル
  6 精度と正確度
 2 点検項目
  1 外部放射線治療装置のQA・QC
  2 外部放射線治療装置に関連するQAガイドラインと規格
  3 外部放射線治療装置の品質管理項目
  4 iMRTの線量検証
  5 密封小線源治療装置のQA・QC

第12章 部位別 放射線治療の概要と治療法
 脳
 頭頸部
 胸部
 消化器
 泌尿器
 婦人科
 血液・リンパ・皮膚・骨・軟部
 小児

参考文献
索引
監修の序 ─ 物理的・技術的観点から ─

 近年、放射線治療分野では飛躍的な技術の進歩により、臨床現場で必要となる役割が複雑かつ多岐にわたっています。欧米諸国における放射線治療分野では、この状況に対応するため、医師・看護師を除く医療技術職を「Medical Physicist」「Medical Dosimetrist」「Physics Assistant」「Radiation Therapist」といった多くの職種に細分化し、治療業務を明確に分担して遂行しています。
わが国での状況はどうでしょうか? 放射線治療計画用CTの撮影、治療計画の立案、線量検証、照射装置への治療計画データ転送、放射線照射、放射線治療装置や関連機器の品質管理など、多くの業務を診療放射線技師と医学物理士とで実施しているのが現状です。
 つまり、わが国における診療放射線技師・医学物理士には膨大な知識と技術、そして経験が求められます。放射線治療は、臨床医学の知識はもちろんのこと、放射線生物学・放射線物理学・放射線計測学といった放射線の基礎知識と、理工学や物理学を医学に応用させた医学物理学といった多くの学問を基礎として成り立っています。そのため、これから放射線治療を学びたいと思っている学生さんや大学院生、さらには若手の医学物理士や診療放射線技師にとって、放射線治療分野は、全体を理解するにはなかなか難しい分野の1つといえるでしょう。
 本書は、診療放射線技師養成の教育教材として磯辺智範先生が講義で使ってこられた内容を、多くの著者の協力のもとに教科書としてまとめたものです。診療放射線技師養成の教科書としてはもちろん、医学物理士教育においても十分に役立つ参考書として利用することができます。
 また、多くの学問で成り立っている放射線治療を系統的にまとめてあります。さらに、これら多くの内容(情報)を図表化することにより、視覚的に理解できるように工夫されており、放射線治療に対する全体的な考え方が身に付きます。そして、多くのコラムが設けられ、臨床で役立つ知識なども豊富に盛り込まれています。
まとめられた情報量はかなりの量となります。しかし、全体を読むことにより、臨床現場で役立つ実践的な知識を基礎から系統的に学ぶことができます。診療放射線技師・医学物理士を目指す学生さんや若手技師の方はもとより、他の医療従事者の方々にもご活用いただければ幸いです。

2016年2月
筑波大学附属病院 放射線治療品質管理室 室長
筑波大学医学医療系 医学物理学 教授
榮 武二



監修の序 ─ 臨床的観点から ─

 知識として机の上ではわかっているはずのことが、実際の診療のときには意外に応用できないことがあります。また、伝統的に先輩に教えてもらって行っていることが、どんな意味があるのか実際には不明確なまま、長年の間、なんとなく行われていることもよくあります。
たくさんの経験を積むことにより、だれでも身につけた知識を有益な行動として表現できるようになっていくものですが、長年の修業の末に一人前になる板前さんや大工さんと違って、医療者は経験の乏しい初心者であっても、一定以上の診療レベルを求められてしまうものです。経験を増やすには多くの時間がかかりますが、できるだけ早くできないものでしょうか? そのためには、知識と体験を連結(統合)して理解する能力を鍛えること、つまり想像力が豊かな学習をすることが大切だと思います。
 本書は、放射線治療の基礎から臨床までが、豊富な図表を用いることでわかりやすく記載されています。各章をめくると、まるで診療の現場で実際の体験をしたような気持ちになるように、著者らのさまざまな工夫が織り込まれています。図表には、最新鋭のx 線治療、小線源治療、陽子線治療、中性子線治療や温熱療法など、豊富な機材をもつ筑波大学とその関連施設の写真がふんだんに掲載され、現場の想像力をかきたてる助けとなっています。
本書を一読していただくと、放射線治療の基礎から臨床までの全体像がつかめるとともに、日常で行われている診療行為にどのような意味があるかをよく理解できるようになると思います。また、ほぼ全領域が網羅されていますので、各治療施設の放射線治療の場に1 冊置くことで、わかりやすい辞書として用いることができます。
良質の教科書として、医学および医療系の学生はもとより、若い研修医、診療放射線技師、看護師、医学物理士の方にもぜひ一読をお勧めします。

2016年2月
筑波大学医学医療系 放射線腫瘍学 教授
筑波大学附属病院 陽子線治療センター 部長
櫻井 英幸



編集の序

 放射線治療の実施にあたっては、基礎医学(解剖、生理、病理など)や放射線科学(放射線物理、放射線計測、放射線生物など)をベースに、治療機器、照射技術、品質管理、治療計画などの臨床的知識と技術が求められる。すなわち、放射線治療の業務を任されるにあたっては、多岐にわたって勉強する必要がある。
勉強に取り組むうえでまず必要なのは、広範囲を網羅できる教科書である。私が放射線治療を勉強し始めた頃を思い返してみると、放射線科学から臨床まで多くの書籍を購入し、読み漁った記憶が残っている。それらの書籍はどれも専門書であり、それぞれの分野に特化した内容(深く掘り下げたもの)がほとんどであった。そのため、まずは放射線治療の全体像を把握しようしていた当時、初学者の私には、必ずしも適しているとはいえなかった。
「もっと放射線治療の全体を網羅できる教科書があれば、効率よく勉強できるのでは?」と学生ながらに考えていたものである。医療従事者を目指す者やこの分野を学ぼうとする初学者にとって必要なのは、基礎や臨床のいずれかに偏ることなく、基礎から臨床までの知識を網羅的に知ることができ、臨床に応用できる基礎知識を修得できる教科書ではないだろうか? ここでいう「臨床に応用できる基礎知識」とは、「学生が臨床実習に臨む前(この分野を学ぼうとする初学者も同じ立場)に最低限必要な知識」を意図している。本書はこれを満たすことを念頭において作成した。
 従来の教科書の記載法は、図・表・画像が少なく、冗長な文章を羅列した、いわゆる“読む教科書”が多かった。また、図・表・画像があっても、その説明は不十分で執筆者の意図が伝わりにくい教科書も散見された。
文章を入念に読むよりも、視覚を利用して情報を修得する方が読者の理解には効果的であり、図・表・画像がわかりやすく説明されている方が読者の理解を円滑にすると私は考える。本書では、「視覚的理解」をkeywordにした。すなわち、図・表・画像を主体とし、冗長で難解な記述をできる限り排除しながらもわかりやすく十分な解説を付けるという記載法を採用した。本書のタイトル通り、基礎知識を図・表・画像で理解し、ノート的に利用できる点が最大の特徴である。
 本書は、診療放射線技師養成校の学生諸氏を主な対象としているが、医学物理士教育にも役立つ内容となっている。また、臨床経験の少ない資格を持った初学者に対しても使いやすく、必要にして十分な情報を盛り込んだ放射線治療全体を網羅できる教科書になったと自負している。
 最後に、本書の発刊にあたり、編集に協力していただいた杏林大学保健学部助教 佐藤英介先生、そして、監修の労を賜った筑波大学医学医療系放射線腫瘍学教授 櫻井英幸先生、ならびに筑波大学医学医療系医学物理学教授 榮武二先生に感謝申し上げる。また、長期間にわたり編集にご尽力いただいた石黒大介氏をはじめとする金原出版編集部のスタッフの方々に深甚の謝意を表したい。

2016年2月
筑波大学附属病院 放射線治療品質管理室 副室長
筑波大学医学医療系 医学物理学 准教授
磯辺 智範