手術

消化器外科手術の論点2020─誌上ディベートと手術手技

2020年03月臨時増刊号(74巻 04号)

企 画
定 価 8,800円
(本体8,000円+税)
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特集 消化器外科手術の論点2020−誌上ディベートと手術手技
食道外科
1.胸腔鏡下食道癌根治術の最適アプローチ
・左側臥位の立場から
大塚 耕司
・腹臥位の立場から
小柳 和夫
2.食道癌根治術における胸管合併切除
・必要の立場から
宇田川 晴司
・不要の立場から
豊住 武司
3.縫合不全を最小とする胃管再建法
・細径胃管の立場から
菊池 寛利
・亜全胃の立場から
今井 健晴
4.食道切除後の標準的再建ルート
・後縦隔再建の立場から
大木 進司
・胸骨後再建の立場から
渡邊 雅之
胃外科
5.胃切除術における標準的アプローチ
・腹腔鏡手術の立場から
木下 敬弘
・ロボット支援手術の立場から
中村 健一
6.噴門側胃切除後の再建法
・ダブルトラクト法の立場から
江藤 弘二郎
・観音開き法の立場から
黒田 新士
7.幽門側胃切除後の再建法
・Billroth-I法の立場から
佐川 弘之
・Roux-en-Y法の立場から
油谷 知毅
8.胃全摘後の食道空腸吻合
・サーキュラーステープラーの立場から−経口アンビルを用いた食道空腸吻合
山内 卓
・リニアステープラーの立場から−Overlap 法による再建
山本 将士
大腸外科
9.横行結腸癌に対する腹腔鏡手術の最適アプローチ
・頭側アプローチの立場から
五井 孝憲
・内側アプローチの立場から
大塚 幸喜
10.直腸癌手術の最適アプローチ
・経腹アプローチの立場から−直腸癌に対するロボット支援下直腸前方切除術
板谷 喜朗
・経肛門アプローチの立場から
佐々木 剛志
11.直腸癌手術における最適な剥離層
・浅い剥離層(いわゆるa層)の立場から
田澤 美也子
・深い剥離層(いわゆるb層)の立場から
戸田 重夫
12.大腸全摘後の再建法
・回腸嚢肛門吻合術(IPAA)の立場から
池内 浩基
・回腸嚢肛門管吻合術(IACA)の立場から
石井 博章
肝胆膵外科
13.解剖学的肝切除術における亜区域描出法
・門脈染色法の立場から
川野 文裕
・肝門アプローチ法の立場から
加藤 悠太郎
14.腹腔鏡下肝切除における肝離断法
・Clamp crushing法の立場から
八木 直樹
・CUSA 法の立場から
小倉 俊郎
15.ALPPS手術の意義
・有りの立場から
阪本 良弘
・無しの立場から
武冨 紹信
16.ss胆嚢癌に対する肝切除領域
・肝中央下区域(S4a+S5)切除の立場から
細川 勇
・胆嚢床切除の立場から
今井 俊一
17.早期十二指腸乳頭部粘膜癌に対する術式
・縮小手術の立場から
北郷 実
・膵頭十二指腸切除術の立場から
木村 憲央
18.膵頭十二指腸切除後の再建法
・Child変法(PD-II)の立場から
山田 豪
・今永法(PD-III)の立場から−幽門輪温存膵頭十二指腸切除・今永法再建(PpPD今永法)
松井 淳一
19.膵頭十二指腸切除における幽門の処理
・幽門輪切除膵頭十二指腸切除(PrPD)の立場から
川井 学
・幽門輪温存膵頭十二指腸切除(PpPD)の立場から
渡邉 雄介
20.腹腔鏡下胆道拡張症手術における再建法
・肝管空腸吻合の立場から
渡辺 稔彦
・肝管十二指腸吻合の立場から
米倉 竹夫
 多くの先達によって確立された日本の消化器外科手術の標準術式は、合併症発生率、長期成績、いずれの観点からも世界に冠たる高いレベルを誇っていることは、皆さま、異論のないところと存じます。「手術」誌は、この日本の伝統的技術を次の世代に脈々と継承していくうえで、一定の貢献をしてきたものと自負しております。
 一方、標準的術式のなかで、さまざまな「流儀」が存在していることも事実です。これまで、リンパ節郭清範囲の比較や、各領域における低侵襲手術の安全性および長期成績の検証を目的に、ランダム化比較試験が行われてきましたが、臨床試験を行うことが事実上困難な課題も数多く残されています。標準的術式のなかに包含されている個々の外科医の「流儀」や「方針」は、科学的根拠に加え、それぞれの外科医の経験と信念に基づいて形成されていることも少なくありません。今回はあえて、「異なる」あるいは「対立する」主張が存在する領域、トピックを選択し、現時点2020年における誌上ディベートを、「手術」誌の臨時増刊号特集として企画いたしました。
 それぞれの主張には、客観的なデータだけでなく「こうすれば上手くいく、こうすることで解決する」といった外科医ならではの「コツ」が存在しています。そうした観点から今回は、主張を裏付ける理想の「手術手技」についても解説していただくことといたしました。
 私どもが主催させていただく第120回日本外科学会定期学術集会(2020年8月13〜15日、パシフィコ横浜ノース)でも、重要な企画としてチームディベートセッションを設け、聴衆の意見をリアルタイムにアンケートしながら、演者同士が真っ向から対決する場を設けました。セッションの最後には医学的な観点からの聴衆の意見に加え、「ディベートとしてどちらが優れていたか」を判定する機会も設けています。国民性として「相手を攻撃し、自らの正当性、優越性を主張するディベート」は日本人に向いていないと言われています。しかし、これからの外科学を担う日本の若手には、是非ともディベート力をつけて世界で闘って欲しいと願っています。日本の優れた消化器外科手術を普及させるには、科学的検証に加えてディベート力も重要であると考えています。
 本特集では、各領域の最前線でメスを握っているエキスパートの先生方に執筆をお願いし、舌鋒ならぬ「筆鋒」鋭く、論戦を展開していただきました。本特集の大きな目的の1つは、まったく異なる意見を平等かつ公平に並べることで、読者自身にしっかりと考えていただくことだと思っています。また、本特集に収載された「論点2020」の本当の答えは、何年かののちに「歴史」が示してくれるものと思います。2020年の消化器外科医たちがどのように考え、どのようなビジョンをもって消化器外科標準手術のさらなる発展に取り組んでいたのか、貴重な歴史的資料にもなるものと期待しています。
 本特集の発行にあたり、貴重な時間とデータをご提供くださったすべての執筆者の皆さま、ワクワクしながら本書を手に取って下さっている読者の皆さまに心より感謝申し上げます。

2020年3月

「手術」編集委員
北川 雄光
慶應義塾大学一般・消化器外科教授