が,嚢胞部と充実部が混在する腫瘤の場合は,嚢胞性腫瘤に充実部を伴っているのか,充実性腫瘤に嚢胞を含んでいるのかを判定する。ただし,いずれかの判別が難しいことも珍しくはない。嚢胞性腫瘤の場合は,単房性か多房性(単一の嚢胞内が隔壁により多数の小房に分かれる:原発性・転移性の粘液性腫瘍など)か多嚢胞性(複数の嚢胞が集簇して腫瘤を形成する:卵巣甲状腺腫や黄体化過剰反応など)か,また推定される内容成分について(表1),さらに壁在結節や隔壁の肥厚(3 mm以上が基準とされる)の有無などを観察して記載する。また,嚢胞壁の厚さや信号パターン,造影効果についても評価する。例えば,黄体嚢胞の均一に厚く拡散強調像にてT2 shine—through効果による高信号・造影にて濃染を呈する嚢胞壁は診断の一助となる4)(図3)。また嚢胞性腫瘤の捻転では偏心性の壁肥厚や出血性梗塞を反映したT1強調像および拡散強調像での壁の信号上昇が診断の一助となる5)。 充実性の腫瘤や嚢胞性腫瘤の充実部については,T2強調像の信号強度と,拡散強調像およびADCマップで評価する拡散制限の有無が重要であり,卵巣腫瘍の良悪性鑑別のためのスコアリング・システムO—RADS(Ovarian—Adnexal Reporting & Data System)ではT2強調像と拡散強調像の両者で低信号を呈する病変はスコア2(まず良性)と判断される6)。また,脂肪抑制を含めたT1強調像による出血と脂肪の同定,造影効果の有無と程度(通常は子宮筋層と比較)およびダイナミック検査を施行した場合は造影パターンを記載する。なお,特徴的な形態(卵管病変を示唆するソーセージ状の形態,漿液性境界悪性腫瘍を示唆するイソギンチャク様の外向性発育パターンなど)や様々なサインについては適宜コメントするが,基本的にはサインの名称だけではなく実際の所見を併記することが望ましい。 腫瘤の充実部はT2強調像にて中等度~軽度高信号を呈することが多いが,骨格筋と同程度1424AA図1 変性神経鞘腫(ancient schwannoma) A , B :MRI(T2強調斜横断像)30歳代。超音波検査で卵巣腫瘍が疑われた。骨盤部右背側に境界明瞭な嚢胞性腫瘤を認め,内部には出血を示唆するヘマトクリット効果を伴っており,辺縁部には充実成分もみられる。両側卵巣(▷)は腹側に同定され,直腸()を左腹側に圧排しており,卵巣ではなく後腹膜腔由来と考えられる。右の神経孔と連続し(→),変性神経鞘腫が示唆される。BB臨床放射線 Vol. 67 No. 11 2022
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