アドバンストステージ00Ⅲ治療を再開した患者の割合 当院では専門として全身性強皮症(systemic sclerosis;SSc)診療を行っており,日本で唯一の診療科横断的な強皮症センターを設置している。来院するSSc患者は年間で1,500例を超え,北は北海道,南は沖縄まで広く日本中のSSc患者の診療にあたっている。2019年12月頃より顕在化してきたCOVID—19は,本邦においても2020年4月に初回の緊急事態宣言が発令されるなど,世界中に大きな影響を与えた。このような状況において,多くのSSc患者が当院へ定期受診する手段を著しく制限されていた。このためわれわれは,当時,時限的措置として,電話等を用いた遠隔診療が可能となったこともあり,SSc患者に対する電話による遠隔診療を用いたフォローアップを行ってきた。そこで,遠隔診療の有用性を検討すべく,2020年1月6日から3月31日までの間に当院を外来受診した,同意が得られた419人のSSc患者を対象とし,4月の緊急事態宣言後に診療が途切れた期間を後ろ向きに解析した8)。遠隔診療として電話診療を受けた患者と,受けなかった患者の背景情報において,両群間に有意な差は認められなかった。遠隔診療を受けた群では,治療を中断した患者数が有意に少なく(p=0.002),治療中断期間も顕著に短かった(p=0.001)。さらに遠隔診療を受けた群では,治療を中断していた患者に早期の治療再開をもたらしていた(p=0.002;図1)。今回の検討によって,電話を用いた遠隔診療はコロナ禍において,SSc患者の治療継続に役立つ可能性が示唆された。同時に,遠隔診療は治療を中断した患者に,診療再開を促す役割をもつことが示唆された。SScは間質性肺炎や腎クリーゼ,肺223911図1遠隔診療の有無による治療再開までに要した期間の比較電話遠隔診療を用いた群では,すべての患者が60日以内に治療を再開した。電話遠隔診療を用いなかった群では,すべての患者に治療が再開されるまでに要した期間は154日であった。両群間におけるlog rank検定によるp値は0.002であった。皮膚科の臨床 Vol.65 No.6 2023電話遠隔診療を用いた群電話遠隔診療を用いなかった群p=0.00280120(%)1005040160(日)当施設における全身性強皮症に対する遠隔診療を 用いた取り組み
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