皮膚科における遠隔診療く診る皮膚疾患における遠隔診療の活用について触れ,当科での取り組みと,日本遠隔医療学会皮膚科遠隔医療分科会で調査した子育て・就労世代のオンライン診療に対する意識調査について紹介する。9102221.痤瘡 これまでに重度の痤瘡患者69人を対象とした無作為化比較試験が行われている1)。この研究において,患者は4週間間隔で対面診察を受ける群と,2週間ごとに遠隔診療を受ける群に振り分けられた。フォローアップの期間は,両群とも24週間であった。遠隔診療に割り付けられた患者において,治療に対する積極性は,対面診療を受けた患者群と同様に保たれたと報告されている。また2018年には,写真を用いた遠隔診療で評価された痤瘡の重症度スコアリングは,その後に行われた対面診療でのスコアリングと遜色がなかったと報告されている2)。2.アトピー性皮膚炎 2015年に,156人の成人および小児のアトピー性皮膚炎患者を対象に,対面診療と遠隔診療の有用性を比較した無作為化比較試験が実施された3)。この研究では,すべての患者は初診時に対面診療が実施された。その後,1年の間,半数の患者は2カ月ごとに皮膚科医の対面による診察を受けた。残りの半数は,皮膚の写真を遠隔地の皮膚科医に送ることで,定期的に遠隔診療を受けた。症状の重症度は,スコアリングシステムを用いて,初診時とフォローアップの各時点において評価され,両グループにおいて症状の一様な改善が示された。2017年には,同様にデザインされた研究で,遠隔診療を受けたアトピー性皮膚炎患者の生活の質(quality of life;QOL)は,対面診療と同程度に改善したことが報告されている4)。3.乾癬 乾癬においても遠隔診療の有用性が示唆されている。10人の乾癬患者を組み入れた研究では,遠隔診療による乾癬の重症度評価の正確性を検討している5)。患者が撮影した患部の写真を,遠隔地にいる2人の皮膚科医が評価し,0週目,1週目,2週目,その後2週間ごとに,最終的に12週目までの重症度を算出した。この2人の医師とは別の皮膚科医が対面診療で,0週目,1週目,6週目,12週目に重症度スコアを算出した。遠隔診療で算出された重症度スコアは,対面診療と同程度であったと報告されている。また,遠隔診療は,乾癬患者に高い満足度とQOLの向上をもたらしたことが見出されている6)。さらに規模を大きくして,2018年には296人の患者を対象としたランダム化比較試験が行われている7)。この研究では12カ月間の観察期間において,フォローアップにおいて遠隔診療を用いることで,対面診療と同等の患者管理が可能であったと報告されている。Ⅱ日常診療でよく診る皮膚疾患における遠隔診療の 文献的報告
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