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細菌感染症表1309917皮膚科の臨床 Vol.64 No.5 2022わが国の皮膚非結核性抗酸菌症 患者数・原因菌の推移1969~1996年(28年間)原因菌M. marinumM. fortuitumM. aviumcomplexM. chelonaeM. abscessusM. kansasiiM. gordonaeM. peregrinumM. scrofulaceumM. smegmatisM. vaccaeM. shinshuense合計患者数累計 人(%)161(64.1%)26(10.4%)19(7.6%)18(7.2%)11(4.4%)9(3.6%)2(0.8%)1(0.4%)1(0.4%)1(0.4%)1(0.4%)1(0.4%)251(文献5)より引用)2000~2020年(21年間)原因菌M. marinumM. chelonaeM. abscessusM. fortuitumM. haemophilumM. intracellulareM. aviumcomplexM. kansasiiM. massilienseM. peregrinumM. scrofulaceumM. mageritenseM. gordonaeM. szulgaiM. immunogenumM. smegmatisM. farcinogenesM. shinshuense不明合計患者数累計 人(%)170(31.0%)155(28.2%)70(12.8%)53(9.7%)14(2.6%)9(1.6%)9(1.6%)6(1.1%)5(0.9%)4(0.7%)4(0.7%)4(0.7%)3(0.5%)3(0.5%)2(0.4%)2(0.4%)1(0.2%)26(4.7%)8548(筆者調べ)mophilumの報告が増えてきている。 海外のデータでは,米国の1施設の皮膚非結核性抗酸菌症78症例では,最多の原因菌はM. abscessus group(M. abscessusとM. chelonae)41.0%,M. fortuitum 23.0%,M. marinum 18.0%であった6)。タイの1施設の皮膚非結核性抗酸菌症88症例のまとめ(2011~2017年)では,M. abscessus 61.4%,M. haemophilum 10.2%,M. marinum 8.1%,M. fortuitum 6.8%であった4)。データ収集の条件がそれぞれ異なるため単純な比較はできないが,検出される非結核性抗酸菌症の菌種の内容や頻度が以前とは変化しており,また地域ごとに原因菌種の頻度に違いがあることが示唆される。前腕に好発する。硬結,結節,膿瘍,紅斑から潰瘍が生じ,腱鞘炎や関節炎,骨髄炎など深部組織へ進展することもある。まれに肺感染症を生じることもある。罹患者の8割が熱帯魚飼育者や魚取扱者であり,半数に何らかの外傷歴がある7)。 本来,ヒト結核菌への特異的感染検査であるインターフェロン-γ遊離検査(クオンティフェロン,T-SPOT)は,M. marinum感染でも陽性になる。検査の際に用いる抗原蛋白(ESAT—6,CFP—10)をM. marinumも産生するためであり,ほかにM. kansasii,M. szulgai,M. gordonae感染でも陽性となる8)。b)M. haemophilum 近年,ヒト免疫不全ウイルス(以下HIV)感染による重症の免疫不全患者,腎臓,骨髄,心臓移植後,リンパ腫,関節リウマチや全身性エリテマトーデス(以下SLE)患者,抗TNF-α抗体製剤使用者などでの報告がある9)。小児では,免疫能の低下がなくても頸部リンパ節炎の原因となる。 菌学的な特徴は,至適発育温度は30℃と低く,さらに発育に鉄(ヘモグロビン,ヘミン)を要求5.非結核性抗酸菌種の種別の特徴❶ 遅発育菌a)M. marinum 世界中の淡水・海水に存在しする。至適発育温度は22~33℃で37℃では増殖しない。そのため,体表温度が低く外傷を受けやすい手指から手背や

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