図1916308第章 細菌感染症結核菌群Mycobacterium tuberculosis complexヒト病原性抗酸菌非結核性抗酸菌Non-tuberculousmycobacteria迅速発育菌M. abscessus M. abscessus M. bolletii M. massiliense M. fortuitum M. fortuitum M. peregrinum M. porcinum M. chelonae M. mucogenicum M. smegmatis主な病原性抗酸菌の分類 (文献11)をもとに作成)Mycobacteriumleprae lepromatosis遅発育菌M. avium complex M. aviumM. intracellulare M. chimaeraM. kansasii M. marinum M. ulcerans M. haemophilum M. xenopi M. simiae M. malmoense らい菌ものを迅速発育菌とし,それ以上の日数を要するものを遅発育菌としている。注意点としては,大量の菌を接種した場合,遅発育菌であっても1週間で発育することがあり,また,Mycobacterium(以下M.)marinumは遅発育菌に分類されるが,28℃の培養では1週間で発育する。結核菌は37℃の培養で遅発性に培養され,らい菌はいまだ人工培養はできない。3.皮膚非結核性抗酸菌症の臨床症状 皮膚の非結核性抗酸菌感染症は,皮膚や軟部組織への直接接種,深在性感染巣からの局所伝播,血行性播種によるものがある。皮膚や軟部組織への直接接種では,外傷や手術創などから感染するが,外傷の既往が明らかではないことも多い4)。 臨床病型は皮膚限局型,皮膚リンパ管型,播種型に分けられる。リンパ管型は列状に,飛び石状に結節性の皮膚病変が連なる。免疫状態が低下している患者では,リンパ管型や播種型に移行しやすい。紅斑,結節,皮下膿瘍,潰瘍,瘻孔など多彩な皮疹を呈し緩徐に進行する。4.皮膚非結核性抗酸菌症の疫学 本邦での皮膚非結核性抗酸菌症は,結核のように届出義務や定点報告の対象ではないため,正確な統計データはない。1969~1996年の28年間の皮膚非結核性抗酸菌症の症例報告は251症例であった5)。原因菌は,M. marinumが64.1%(161/251人)で最多で,次いでM. fortuitum 10.4%,M. avium-intracellulare complex 7.6%,M. chelonae 7.2%,M. abscessus 4.4%,M. kansasii 3.6%であった5)。2000~2020年の21年間に本邦で報告された皮膚非結核性抗酸菌症症例は548症例であった(医学中央雑誌調べ)。原因菌の内訳は,M. marinum 31%,M. chelonae 28.2%,M. abscessus 12.8%,M. fortuitum 9.7%であった(表1)。1969~1996年のデータと比較すると,皮膚非結核性抗酸菌症の報告患者数は本邦でも増加しており,世界的にも増加していることと一致する。原因菌の最多はM. marinumであるが,その割合は半分に減少し,代わってM. chelonaeが増加している。また,以前はまれであったM. hae-
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