皮膚・爪 爪を切りすぎる,むしるなどにより爪周囲に傷ができると,皮膚の炎症を起こして発赤を生じる(症例5).幼児ではひどい肉芽を生じるまで悪化することは少ない.テーピングで爪と皮膚を離すように引っ張ると炎症が治まってくる.この際の皮膚の炎症は細菌感染が原因ではないので,抗菌薬よりもむしろステロイド薬の外用のほうが効果的なことが多い. 前述したように乳児の爪は薄く小さいため,大人用の梃子型の爪切りでは切ることが困難である.乳児の爪は専用爪切りハサミで,手指の先端の形態に沿って丸く切ることが望ましい.または先端の長さに合わせて直線状に切り,角をやすりで落とすとよい.「角を落としてはいけない」とする意見もあるが,手の爪の端に角があると顔を傷つけやすいので留意する.足趾の爪も角を深く切りすぎることは深爪の誘因となるので避けるべきであるが,全体を丸く切ることは問題ない.爪の遊離縁(爪床から離れたところ)の「白いところを切るように」している人も少なくない.筆者は「爪の白いところを残してはいけない」と小学生の時に保健指導された記憶があり,同様な発言は患者からも聞かれる.しかし爪は手指・足趾の先端の皮膚を守る働きもあるので,先端は多少残すようにしたほうがよい4). 靴を履くようになると,足趾や爪の形態に大きな影響を及ぼす.靴による足趾の圧迫がある いわゆる大人の巻き爪と似た状態は,まだ歩き始めていない乳児にみられることがある.爪は足趾先端に荷重がかかることにより平坦化するため,成人でも正常な歩行ができない場合は爪が巻いてくる2).例えば寝たきりであったり,足趾の変形があって踏み返しができない足趾の爪は巻き爪となってくる.歩行が可能になって踏み返しができるようになると爪の巻きは平坦化してくることがほとんどである3). 歩き始めて踏ん張るようになり足趾の先端に力がかかると,やはり末節骨の存在しない末梢部分の皮膚が背側に押されて爪が反ってくることがある.病的な意味はないことが多い.幼児では裸足で遊ぶ場合に多く,靴を履くようになるとそりが改善するという4). 爪の形態は末節骨の形態に大きく依存している.先天的に末節骨がない場合は当然のことながら爪も生えてこないが,この場合は生後すぐに気づかれる.四肢の爪が他指(趾)より小さい,または短い場合は,その手指または足趾の末節骨自体の形成不全の場合がある.単純X線撮影を行うと判明するが,正確な手指の正面像を撮影して比較することは骨成長が不十分な小児では読影が困難なこともある.機能的に問題がなければ心配は不要であると伝える(症例4).小児科 Vol. 65 No.12 20241335爪が巻いている(横方向)爪が反っている爪が小さい爪の周囲の発赤爪の切り方について靴の影響
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