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8構音の問題―発音がおかしい表3特異な構音操作の誤り(異常構音)1.小児の構音障害をきたす関連疾患異常構音の種類側音化構音口蓋化構音歯音・歯茎音の構音点が後方に移動したもの.舌尖ではなく,舌背と口蓋で狭めを作って音を生成する.タ行→カ行に近い音,サ行→ヒに近い歪み音が聴取される.鼻咽腔構音軟口蓋と咽頭壁で作られ,音声や呼気がすべて鼻腔から出される.イ列音・ウ列音に多い.「ン」「クン」に近い音として聴取される.声門破裂音声門で作られる破裂音.硬起声の母音に近い音で,軽い咳払いのように聴こえる.鼻咽腔閉鎖不全例に多い.咽頭摩擦音咽頭で作られる摩擦音.舌根部が喉頭蓋を含めて後方に引かれて,咽頭後壁で狭いスペースを作って摩擦音が生成される.咽頭破裂音咽頭で作られる破裂音.舌根と喉頭蓋が後方に引かれて咽頭後壁で閉鎖し,それが離れる時に破裂音が生成される.構音器官が左右非対称に動き,音声や呼気が口腔の中央でなく側方から出る歪み音.イ列音が多い.キやヒに近い歪み音が聴取される.特徴蓋裂は見逃されやすい疾患である.形態的な特徴として口蓋骨後端正中の骨欠損,軟口蓋正中部の溝,口蓋垂裂がみられ(図1-a),Calnanの3徴候7)8)とよばれる.他にも滲出性中耳炎の合併,開鼻声などがみられる.乳児期には,哺乳障害や鼻からミルクの漏出がみられることがある.口腔内の視診だけでは診断が難しく,口蓋骨の骨欠損の触診や光を当てて軟口蓋の透過性をみる.また開鼻声や鼻咽腔閉鎖不全の有無を確認する. 先天性鼻咽腔閉鎖不全症も一見,視診上異常がなく見逃されやすい.開鼻声,ミルクの鼻漏れなどがある場合には慎重に口腔内を観察し,短口蓋(short palate)(図2)7),深咽頭(deep pharynx),軟口蓋の運動不全(palatal paresis)など鼻咽腔閉鎖不全をきたす所見に注意する7)9). 舌小帯短縮症はその程度はさまざまであるが,臨床上問題になるのは,挺舌するとハート形になる場合である.舌小帯短縮による影響が出やすい音はラ行音である.ラ行がダ行に聞こえたり,発話速度が速くなると急激に不明瞭な発話になったりする.ラ行音は獲得の遅い音で治癒が期待できる. 構音障害とは,話し手が属する言語社会の音韻体系のなかで,話し手の年齢からみて正常とみなされている語音とは異なった語音を産生し,それが習慣化されている状態を指す5).そのため小児の構音障害は発達の段階や成育環境を考慮して評価を行う必要がある. 構音障害をきたす関連疾患として,難聴,口蓋裂・粘膜下口蓋裂・鼻咽腔閉鎖不全,舌小帯短縮症,脳性麻痺などがある.また,構音障害を合併しやすい疾患として,知的障害や言語発達障害,自閉スペクトラム症などの発達障害,発達性協調運動障害,吃音などがある. 軽・中等度難聴では,周波数が高い/s/音(サ行)のような子音が聞きとれず,構音に歪みが出やすい6).3歳児健診においてはまず聴力検査を行い,軽・中等度難聴があれば早期に聴覚補償を行う必要がある7). 口蓋裂は生後すぐに発見されるが,粘膜下口小児科 Vol. 65 No.12 20241244小児の構音障害

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