森もり内うち 浩ひろ幸ゆきⅤ救急医療・集中医療* 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・小児科学1600 パンデミックのような非日常的出来事に対しては,普段からの備えがないと対応できない.今回のCOVID-19パンデミックで,われわれ日本人の備えが不十分であること,もともとの医療体制に余裕がなく連携もとれていないことが明らかになった.症例レジストリーをただちに構築し感染症の疫学・臨床像を明らかにしていく準備が必要だ.患者情報の電子化と一元管理,リアルタイムでの集計と分析,そして施策にただちに活かすことも必要だ.普段から診療情報を電子化し共有プラットフォームでさまざまな医療機関が協力できるシステムを構築し,対面診療にオンライン診療も組み合わせ,子どもの心と体の健康を守る体制を整えていくことが望まれる.医療逼迫,オンライン診療,症例レジストリー,新型コロナウイルス感染症, 電子カルテシステム共通プラットフォーム* 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックはわれわれの生活を大きく変貌させ,それは小児医療の現場にも広く暗い影を落とした.幸いなことにCOVID-19は小児に対してはRSウイルス感染症やインフルエンザほどの重篤な感染症ではなかったが,過度な恐れから受診控え(予防接種,健診,子育て支援などを含む)が起こって二次的な健康被害が生じたり,心理社会的ストレスが子どもたちの心の健康を損なってしまったりした.また子どもの感染が激増した折には医療の逼迫が生じ,助かったかもしれない命が救えない事態が生じてしまった. 世の中は少しずつwithコロナ時代に移って行こうとしている.しかしそれで喉元過ぎれば熱さを忘れるようなことにしてしまってはならない.21世紀に入ってすでにいくつもの新興感染症パンデミックが起こっており,規模の程度はさまざまであれ必ず遠からずまた新興感染症のパンデミックは起こる.今回の経験を活かし,次のパンデミックにおける小児医療のあり方を学会や医師会,行政がともに真剣に議論し,備えておくべきである.Key words要旨はじめに22パンデミックにおける小児医療
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