小児科 Vol.63 No.13 2022AAV:アデノ随伴ウイルス,ZFN:zinc finger nucleases,TALEN :transcription activator-like effector nucleases,CRISPR Cas9:clustered regularly interspaced short palindromic repeats-associated protein 9.1540in vivo AAV症の治療が行われたことで世界の注目が急速に高まったが,1999年先天代謝異常症(尿素回路異常症)のオルニチントランスカルバミラーゼ(ornitine transcarbamy-lase:OTC)欠損症に対するアデノウイルスベクターによる治験で死亡事故,2002年X連鎖性重症複合型免疫不全症のレトロウイルスベクターによる治験で白血病事例が発生し,開発は一時停滞した2). しかしこの間,副作用事例の原因についての調査研究,およびレンチウイルス(len-tivirus:LV),アデノ随伴ウイルス(adeno-assooiated virus:AAV)など安全性・有効性の高いウイルスベクターが開発されて,2009年に発表された副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystrophy:ALD)に対する遺伝子治療の成功を皮切りにADA欠損症,血友病,異染性白質ジストロフィー(metachromatic leukodystrophy:MLD),βサラセミア,脊髄性筋委縮症と薬事承認が相次いでなされている.また広義の遺伝子治療もがん抗原認識抗体とT細胞受容体シグナルドメインのキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)発現遺伝子をLVで患者T細胞に導入することでヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)型に依存しないがん免疫療法が可能になり,リンパ性白血病やリンパ腫,多発性骨髄腫に著効し各国で薬事承認されている(表). 近年ではウイルスベクターではアデノウイルス,レトロウイルスに代わり,AAV,LVが臨床開発の主流になっている.(adding gene therapy)ex vivolentivirus造血幹細胞大きく分けて遺伝子付加(adding gene therapy)と遺伝子編集(editing gene therapy)がある.遺伝子付加変異はそのままにして,ベクターの遺伝子を加える図 狭義の遺伝子治療の説明図遺伝子編集(eding gene therapy)変異そのものを正常配列に置き換えるZFNTALENCHRISPR Cas9
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