047512022125T
5/11

小こ林ばやし 博ひろ司しⅢ先端医学・難病対策* 東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター遺伝子治療研究部(小児科学講座・遺伝診療部 兼任)1539 世界の遺伝子治療の薬事承認件数は臨床実装の現実化を反映し増加の一途をたどっている.現在の研究開発の主流はウイルスベクターによる遺伝子付加法だが,近未来の技術として遺伝子編集と生殖細胞への遺伝子治療が挙げられる.前者は相同組換えにより変異自体を正常配列に組み換える方法で,オフターゲットなどの課題があるが一部臨床試験も始まっている.後者は超早期治療につながり,次世代以降の発症予防も期待できるが,遺伝子治療の安全性がまだ確立されていない現在においては禁止されている.遺伝子治療研究は今後,より倫理的側面が重視されるが,不治とされた難病の根治が実現し始めていることも事実であり,小児科医にとって今後も重要なテーマの1つといえる.遺伝子治療,ウイルスベクター,遺伝子編集,生殖細胞,受精卵* 遺伝子治療とは「治療を目的として遺伝子または遺伝子導入した細胞を体内に投与すること」と定義され1),狭義では単一遺伝子病などに対し正常遺伝子を導入(遺伝子付加:adding gene therapy),もしくは相同組換えで変異遺伝子を改変して機能を改善(遺伝子編集:editing gene therapy)することにより「遺伝子を治す」治療,広義ではがんなどに対し遺伝子を導入することで二次的に抗腫瘍免疫機能を改善するなど「遺伝子で治す」治療と説明される(図).なお,ヌクレオチドを基本骨格とし遺伝子発現を介さず(タンパク質を合成せず)に直接生体に作用し化学合成により製造される核酸医薬品とは区別して考えられている. 現在の臨床試験の主流はウイルスベクターを用いた遺伝子付加である.1970年代より遺伝子組換えなどの基礎技術の知見が蓄積され,1990年に世界初の遺伝子治療として原発性免疫不全症のアデノシンデアミナーゼ(adenosine deaminase:ADA)欠損Key words要旨遺伝子治療とは現在の遺伝子治療15遺伝子治療

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る