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小児科 Vol.63 No.13 20221602ウトブレイクが起こる事態までは至らなかった. 乳幼児健診が滞ると,小児が抱える種々のトラブルを早期に見出し早期に介入する機会を失ってしまうだけではなく,母親の育児不安を察知しサポートする機会も逃してしまう.子育て支援活動もパンデミック下で滞ってしまった地域は多く,マルトリートメントの増加につながってしまった.世界的にもロックダウンの影響で子ども虐待の件数が増えていることが報告されている. パンデミックという非日常のなかで日常的な医療・福祉を維持することはきわめて困難である.感染症の性質(伝播様式,感染力の強さ,病原性の強さなど)を見極めたうえで,過不足ない対応をとる以外にはないが,予防接種も乳幼児健診も個別で行うか集団で行うか,それぞれの地域での工夫で対応すべきであろう.子育て支援も対面だけではなくオンラインでの実施も検討すべきである.後述するように,オンラインには対面にはない利点もあり,両者を上手に組み合わせていくことがpostコロナ時代の新しい医療・福祉のあり方になるかもしれない. パンデミックという非日常は子どもにも親にも大きな心理社会的ストレスを与える.2019年(パンデミック前)とくらべ2020年(パンデミック下)では,子どもの自殺数がいきなり100名増えて過去最高となり,10代前半・後半とも死因の第1位になった.もちろんその増加分すべてがパンデミックの影響といいきることはできないが,子どもにとってはCOVID-19の身体的・直接的影響よりも精神的・間接的影響のほうが大きいと考えられる. パンデミック到来以前からいわれてきたことではあるが,子どもの心の診療の重要性は増しており,数少ない専門家(子どものこころ専門医,児童精神科医など)のみに丸投げするのではなく,すべてのプライマリ・ケア小児科医が真摯に対応し,困難な症例のみを専門家へ紹介すべきであろう.またオンライン診療はこの分野においてもメリット・デメリットそれぞれあり,とくにパンデミック下で外出・受診が困難な状況では積極的に導入すべきであろう. 2009年,新型インフルエンザのパンデミックの際,多くの日本人は「大したことなかったね」ととらえていたし,実際日本国内における死亡者数・致死率はそれほど高いものではなかった.しかし世界的には明らかに季節性インフルエンザよりも死亡者心のケアの重要性新型インフルエンザ2009とCOVID-19 ―2つのパンデミックへの国内対応の違い

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