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 表に記載のある病名はあくまで統計用に作成し,断定的に利用者に伝えてはいないが,「産婦人科オンライン」「小児科オンライン」に寄せられるよくある相談の内訳は表の通りになっている.育児相談が多いことが目立っている.「下の子が生まれて上の子が赤ちゃん返りをしてしまった.どう対応すればよいか」「外出自粛でストレスがたまったのか,これまでなかった爪噛みが始まった.家での対応を教えてほしい」といった相談である.外来ではじっくりと時間をとらないとなかなか訴えとしては聞き取ること377特 集  With COVID-19時代のシミュレーション教育・オンライン診療染性疾患中心の疾患構造にシフトした社会においてオンライン相談が果たし得る役割である. 日本小児科学会は2020年11月に公表した小児のコロナウイルス感染症2019(COVID-19)に関する医学的知見の現状第2報において「子どもでは,COVID-19が直接もたらす影響よりもCOVID-19関連健康被害の方が大きくなることが予想される」と見解を述べた10).COVID-19が小児では重症化しにくいという疫学調査の結果が出ている一方,外出自粛や集団健診の延期をはじめとした社会ストレスによって保護者の育児ストレスが増強し,虐待増加,産後うつ増加,DV増加の可能性が指摘された.さまざまな要因はありつつも,コロナ禍での妊娠,出産,子育てへの不安も重なり,2020年5月の妊娠届けの受理数は前年同期比で17.6%の減少になった11).コロナ禍前より叫ばれていた小児における非感染性疾患への対応強化の必要性をコロナ禍はより強調し,そして社会へ,既存の考えにとらわれない変革の加速を迫った. コロナ禍における国民の健康不安に対して,経済産業省が「令和2年度補正遠隔健康相談体制強化事業」12)を公募し,産婦人科・小児科オンラインは産婦人科,小児科に特化した窓口として選定を受け,委託事業者となった.本事業では2020年5~8月に全国民へオンライン医療相談を無償提供し,数万件の相談に対応した.厚生労働省は事務連絡『「母子保健事業等の実施に係る自治体向けQ & A(令和2年6月2日時点)」について』13)を2020年6月に全国の自治体に向けて発信し,新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点より母子保健事業におけるオンラインの活用も検討される,と通達した.日本の現在の母子保健の課題に対応すべく制定された「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」14)いわゆる「成育基本法」が2018年12月に公布され,2019年12月に施行された.筆者も参加した本法律の骨子案を決める協議会では,母子保健におけるICTの活用は活発に議論され,2021年2月9日閣議決定された基本方針のなかで,「子育て世帯や関係行政機関等における手続負担の軽減や利便性向上等に向けて,関連情報の発信に努め,ICT等の活用による成育医療等の各種施策を推進する」「電話やオンラインも活用した妊産婦や乳幼児に対する相談支援や保健指導,乳幼児健診の個別健診化等については,今般の新型コロナウイルス感染症対策としての実施状況の把握及び検証を行い,その結果をふまえ,必要な検討を行う」といった文章が書き込まれた.with/postコロナ時代の母子保健においてオンラインの活用は必須となるだろう.小児科 Vol. 62 No.4 2021コロナ禍で強調された子育ての孤立国もオンライン活用を後押し寄せられる相談の内訳

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