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380 1) 厚生労働省:「オンライン診療の適切な実施に関する指針」平成30年3月(令和元年7月一部改訂) 2) 三品浩基ほか:スクリーニングの実施時期によって産後うつ傾向の陽性率は異なるか?.小児保健研究 2012; 3) 重見大介:オンラインによるEPDS評価ツールの有用性に関する後方視的検討.第395回東京産科婦人科学会 オンライン相談の限界点もある.触れることができず,怪我の程度や子どもの状況を対面外来ほど詳細に把握できない.そのうえで見逃しがあってはならない.この点に関しては,利用後アンケートに「相談後24時間以内の緊急入院の有無」を聞く設問をいれ,見逃し例の有無を確認している.2018年6月~2019年2月の小児科オンライン利用全3,253件のうちアンケートが回収できた1,498件を見直したところ,相談後24時間以内の緊急入院になったという回答は8件(0.5%)であった.その8件の相談カルテを見直したところ,全例に対して相談対応を行った小児科医は受診を勧めており,明らかな見逃し例はなかった.こちらは2019年の第66回日本小児保健協会学術集会にて発表した15).オンライン相談において認識すべき注意点として,オンラインにおけるコミュニケーションの特殊性がある.対面であれば無意識に補っている目線やうなづきなどの非言語での表現が,とくにテキストだけを用いるチャットでは欠落するため,意図的に言語化して補う必要がある.テレビ通話ではカメラと顔の位置関係で印象は大きく異なる.音声通話では声のトーンや抑揚が影響する.こうしたポイントがずれていると,意図せず「冷たい印象を受けた」「もう少し気持ちをわかってもらいたかった」といったコメントを利用者からいただくことがある.この https://www.mhlw.go.jp/content/000534254.pdf(2021年2月現在)71:46‒51例会,東京,2020年12月ようなコメントを受け,どういった対応が利用者の安心につながるのか,多くのオンライン相談を経験した医師,助産師によるquality con-trol team(QCT)を組成し,オンライン相談を分析し,ノウハウを蓄積している.得られた知見に基づき,相談対応にあたる相談員の医師や助産師へ勤務開始前の読み合わせの際,そして勤務開始後に定期的なフィードバックを実施している.今後はQCTの活動を通して得られた知見から,オンライン上での医療コミュニケーションを体系的にまとめたいと考えている. 非感染性疾患中心の疾患構造になったいま,妊産婦・保護者と医療者がオンライン上の接点をもつことの意義は大きい.オンライン相談は,スマートフォンという妊産婦・保護者の手のひらに接点をもち,病院で待っているだけでは届かなかった不安や孤立にリーチを可能とする.同時に,かかりつけ医,自治体への連携を常に意識し,オンラインで閉じることのない運営が重要である.産婦人科,小児科領域におけるオンライン相談はまだ新しい手法であり実績の蓄積に乏しい.世界一とも称される小児科,産婦人科医療を実現したわが国から,with/postコロナ時代の母子保健におけるオンライン相談の活用方法の理想形およびエビデンスを世界へ発信できるよう,今後の事業運営に努めたい.小児科 Vol. 62 No.4 2021文 献  オンライン相談の限界点・注意点おわりに

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