-15.1℃-9.4℃-4.8℃-0.9℃1.9℃6.5℃1時間2時間3時間4時間6時間RT:20℃910停電後の時間冷凍室一般保冷室2.8℃4.3℃7.0℃9.5℃11.9℃15.2℃小児科 Vol. 61 No.6 2020き込む,または自動車のエンジンを1日まわして,ボンネットをあけたままバッテリーから電気を取るというのは現実的ではない.大容量の蓄電池を日頃から蓄電しておき,必要な時にだけ非常電源として切り替えるのがスマートな対応であろう.発電機の場合,維持管理においても何らかの燃料の備蓄が必要で,ガソリンを備蓄しておくのは管理上難しく(長期保存できない),かつ危険でもある.ガスボンベならば使い勝手は良さそうだが,これとて大量の保存は怖い.そのうえ別途エンジンオイルも必要だと言われると,値段はともかく,手間だけで退いてしまいそうである.加えて,保冷庫の消費電力は少なくない.冷蔵庫に書いてある消費電力は一見大きくないように思えるが,持続的に使用する安定期の使用電力とスイッチを入れた時の負荷電力は別のものであることを知っておく必要がある.一時的にでも記載量の3倍強の負荷に耐えられる電力を供給できないと,供給側は稼働しないこともある.保冷庫は案外,電気食い虫なのである.かなり高額な蓄電システムを整えても,3日も4日も停電された日には,電子カルテシステムをはじめとしたさまざまな電力需要にすべて対応することは難しい. 次に,停電時に冷蔵庫を開けないことで,どれだけ庫内の温度が保たれるかを検証した.使用した冷蔵庫は一般家庭用の中型冷凍冷蔵庫で,なかにはワクチンも薬品も保冷剤もない状態で温度センサーのみを保冷室と冷凍室に各々設置し,室温を20℃設定にした.電源を切った後の経過を表₄に示す.標本数1の結果ではあるが,一般保冷室は2時間足らずで7℃に達し,冷凍室ですら6時間経つと6.5℃まで上昇していた.たくさんのワクチンや保冷剤を詰め込んである状態ならば,もう少し低温状態が保たれるであろうが,扉を開けないというだけで保冷効果の維持を期待することは難しい. では,保冷維持のために蓄電池システムの購入が不可欠かと問われれば,必ずしもそうではない.筆者は発泡スチロールと保冷剤による保冷実験を行った(図₁₀).用意する物は,幅60 cm大の蓋付き発泡スチロールの容器1つ,大きめの保冷剤を数個,それと外部センサー付最高最低温度計を1つのみ.全部新しく購入しても,5,000円でお釣りがくる.発泡スチロールの内側6面をあらかじめ冷凍室で凍らせておいた大きめの保冷剤で囲み,その中央に布で包んだ生ワクチンの在庫を保管.蓋の中央から最高最低温度計の外部センサーを刺して,センサーの先端をワクチン保存部にセット.蓋をガムテープで固定して冷気が漏れないように封印し,数時間ごとの温度変化を記録した(図₁₀︲a).室温設定は20℃とした.こちらも標本数1ではあるが,結果は図₁₀︲bの折れ線グラフに示すように,封印後48時間までは温度上昇がほとんどみられなかった.しかし0℃を超えたところで温度上昇は加速し,72時間経ったところで9℃に至った. 厚生労働省のワクチンガイドラインQ & Aにおいては,「停電等があっても,温度管理されており,上昇がないことが確認されれば使用に差し支えない」と回答されている.大丈夫で表₄ 家庭用冷凍冷蔵庫における停電後の温度変化03.非常用電源以外の対策
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