* キッズクリニックさの佐さ野の 正ただし903* 近年,大震災には至らないまでも,大型の台風,局地的豪雨,それに伴う強風や河川の氾濫など,予期しない規模の災害が各地で多発している.これら風水害に伴って発生しやすいのが停電である.大規模停電の発生頻度は,ここ数年急増しており,その回復にも思いのほか時間を要する.これらの停電は,家庭生活を脅かすだけでなく,クリニックの一般診療にも大いなる支障をもたらす.とくに,近年接種回数が増え,院内の保冷庫に多くのワクチン在庫を抱える小児科医にとって,長期の停電はその対策を講ずべき大きな課題の1つとなる. 今回,静岡県小児科医会(以下「県医会」と略)会員を対象に,日常のワクチン管理(主に保冷庫管理)についてのアンケートを実施し,日頃からどのような対策を立てているのかを調査した(アンケート ①).折しも,その調査の最中に東海地方に大型の台風21号が接近し,中部電力管内で大規模停電が発生したため,その際の停電時間と被害状況,および停電に伴って実際に取られた対策を追加質問した(アンケート ②).アンケート ① の質問内容は表₁に示したもので,兵庫県小児科医会で作られたアンケートを参考に作成した.アンケートの対象者は,県医会メーリングリストに登録されているクリニック開設者(以下「Clinic」と略)136名と病院の小児科科長(以下「Hospital」と略)36名で,うち回答があったのは,Clinic 63名(46%),Hospital 23名(64%)であった.また,台風21号到来時(2018.10.1)に実際どのように対処したかについては,クリニック開設者15名から別途アンケート ② の回答を得た.本稿は,このアンケートの回答結果を中心に話を進めたい.KEY WORDS停電,保冷庫,管理,災害,ワクチン要 旨 静岡県小児科医会会員に対し,保冷庫管理を中心とした日常のワクチン管理についてアンケート調査を行った.クリニック開設者₆₃名(₄₆%)と病院勤務医₂₃名(₆₄%)から回答を得た.調査中に大規模停電が生じたため,急遽その被害状況と対策についても追加調査を行った.保冷庫内は,扉の開閉なしでも停電₃時間後に₁₀℃近い環境となるため,早期の対応が求められる.停電被害報告をいただいた₁₅施設中₂施設でワクチン破棄が確認された.本稿ではアンケートと実証実験の結果をもとに,停電時の保冷管理と日常の備えについて検討した.ト ピ ッ ク スはじめにワクチンの保冷庫管理と大規模停電―静岡県小児科医会アンケート結果を中心に
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