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622や癌の遺残を術中迅速病理診断で確認することも有用である。また,上腸間膜動脈前面では背側膵動脈が分岐することがあるため,あらかじめCTで確認しておく必要がある。癌の浸潤が脾静脈合流部あるいは門脈に及んでいる場合は門脈合併切除を要する。体尾部切除の場合,膵頭部や十二指腸間膜が剝離されておらず,膵頭部や膵鉤部から流入する静脈も残存しているため,門脈が十分に遊離できない。このため切除長が短くても端々吻合による再建は緊張がかかり難しく,無理に端々吻合すれば術後高率に門脈狭bac手術 2025年4月臨時増刊号Ⅱ-5-3開腹膵体尾部切除術囲の剝離を行うが,結腸間膜浸潤がなければ前方から上腸間膜動脈へのアプローチが可能である。結腸間膜浸潤を認める場合は結腸間膜背側から,いわゆるmesenteric approachを行う。上腸間膜動脈を神経叢の外側で確保し,根部に向けて剝離を行うが,腫瘍が神経層に近接,浸潤すると神経叢外層での剝離が困難となるため,神経叢を剝離して動脈外膜あるいは動脈中膜を露出する層で剝離する(arterial divestment)。膵体部癌では前方あるいはやや左側から浸潤するが,必ずしも半周切除などの定型的な切除にこだわらず,癌の遺残がないよう必要な範囲を切除し,無用な神経叢切除は避けるべきである。必要に応じて神経叢浸潤腫瘍a)脾動脈根部浸潤のない症例b) 脾動脈根部浸潤例。左胃動脈根部に浸潤が及んでいないため,左胃動脈は温存可能である。c) 脾動脈根部から左胃動脈根部に浸潤が及んでいる症例。この場合には左胃動脈を合併切除するDP-CARが必要である。図8. 腫瘍進展範囲による動脈の切離位置 C 門脈 / 上腸間膜静脈浸潤例

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