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4.内服薬1799も可能である。鼠径部ヘルニアは短期滞在型手術の普及を含め,近年術後入院期間が急速に短縮してきた分野である。その大きな理由はtensionfree法や腹腔鏡手術の普及によって,術後長期安静の必要がなくなったことや,術後疼痛が少なくなってきたことにある。ただし,早期退院可能を術後鎮痛不要と勘違いしてはいけない。むしろ,術後十分なNSAIDs(non-steroidalanti-inflammatorydrugs)投与などで疼痛発生を予防しておくことが望ましい。また,入院期間を短縮するということは,術前検査や術後フォローを原則として通院で行うということでもある。患者のADLや自宅から施設までの通院の難易度など,疾患以外の患者特性と地域特性も考慮せねばならない。なお,短期滞在型医療が医療費削減など国策として正しいことに間違いはないが,必ずしもすべての患者が短期滞在を望んでいるわけではなく,実際には術後数日は入院していたいと希望する患者も少なくないことも一考を要する。日帰り手術を行っていない施設であったとしても,入院は短期間なので,クリニカルパスなどを用いてあらかじめシステム化しておくことが望ましい(図1)。とくに,日帰り入院手術を行うにあたっては,入院前日の自宅で準備や,術後翌日の電話再診などもこのシステムに含めるべきである。システム化や実際の運用にあたっては,医療クラークなどコメディカルの協力が必須であることも強調したい。2.経口摂取当然ながら周術期の飲食制限は麻酔方法によって変わってくる。鼠径部ヘルニア手術,とくに鼠径部切開法は,全身麻酔,下半身麻酔(脊椎麻酔),局所麻酔のいずれでも執刀可能な手術であるという特性がある。自己の所属施設の主たる麻酔方法が何であるのかを確認し,麻酔科担当医がいる場合は,術前通院中に麻酔科受診を済ませて麻酔方法を決定しておかないと,厳密な意味での経口摂取管理はできない。一般には,どの麻酔方法であっても,手術前日までの食事制限は不要である。日帰り手術を行う施設では,手術当日の軽い朝食も可としていることも少なくない。飲水は手術予定時刻によるが,執刀3〜4時間前まで,300mL程度のclearwater摂取を勧める。まれではあるが,腸管非還納性ヘルニアの事例で,腸内容物を減らしておいたほうが術中の腸管還納が安全かつ容易となることもあるので,術前数日の低残渣食摂取を勧める場合もある。術後は麻酔が覚醒すれば,飲食の制限はないが,実際には手術当日は食思のない患者も少なくない。腸管切除などを行った場合を除けば,経口摂取不能期間の長くなる手術ではないので,ERAS®(enhancedrecoveryaftersurgery)の概念に基づいた早期経口摂取再開にこだわる必要もない。必要であれば,飲水摂食ができなかった分の水分は輸液で補えばよい。3.術前腸管処置原則として下剤や浣腸などの術前腸管処置は不要である。ただし,鼠径部ヘルニア手術直後は,補強部に強い腹圧をかけないほうがよいということも考慮せねばならない。もともと便秘傾向の患者の場合,術後排便時の腹圧を軽減するために,手術前夜の下剤投与や手術当日の浣腸処置を行っておいたほうが,結果的に術後の安楽を得られる場合もある。腹腔鏡手術の前に結腸内容物を減らしておいたほうが,操作スペースが確保しやすい場合もある。下剤や浣腸が周術期管理に悪影響を及ぼすことはほとんどないので,病態に応じて臨機応変に考えればよい。手術当日朝までclearwaterとともに薬剤内服は可能である。術後も,飲水再開と同時に内服再

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