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最 新417が,このようにすべての子どもを対象に行っている地域はとても珍しく,おそらく被災地域ではほとんどないであろう。この調査結果を参考に各学校現場では様々な取組が行われている。 図1は市内の小学校5年生における2010~2017年度の体力・運動能力テスト結果の推移を示す。全国の平均を偏差値50点として,郡山市の偏差値の経年的変化をみてみると,震災前よりすでに全国に比して,特に走・跳・投といった運動の基本的3要素に加え持久力の低下が認められていた。震災後はさらにこの傾向は強まり,6年経過して徐々に改善傾向に向かってきているものの,いまだ震災前の水準に戻っていない項目もある。小学校5年生のデータのみを掲載したが,ほぼすべての学年で同様の傾向が認められる。このような結果はある程度予想されていたが,運動専門家や学校関係者はこれほどまでに深刻な結果になるとは考えられなかったようである。そして,震災から時間が経過しても,一度低下してしまったこうした能力はなかなか容易に改善しないことも判明した。 東日本大震災が子どもに及ぼした影響に関する報告が,徐々に発表されるようになった。郡山市では,震災翌年から小・中学校のすべての子どもの体力・運動能力を把握し,また生活習慣に関する調査を継続的に実施している。これまでのデータの分析から判明した問題点を現場にフィードバックし,今後の対策に役立てられている。また,災害が発達障害に及ぼす影響も懸念され始めた。郡山市での知見を紹介する。* S. Kikuchi 菊池医院1.子どもたちの体力・運動能力の低下 震災直後から郡山市では屋外での活動が制限された。学校や園では校庭・園庭が使用できず,さらに地震の影響によって体育館や講堂が損壊した所も多く,長期間児童生徒が廊下や階段などで体育の授業を行っていたところもあった。また,ほとんどの学校の屋外プールが使用できず,運動会も中止を余儀なくされた。こうした屋外での活動制限が長期化することにより,子どもの体力や運動能力の発達が阻害され,肥満傾向児が増加することが危惧された。 子どもの体格や体力・運動能力の現状をしっかり把握し,その後の推移を見守るとともに,どのような対策を取ればよいかを検討する必要があった。筆者らは2012年度から市内のすべての小中学生に対し,体格,体力・運動能力に関する調査を開始した。10年間以上の長期にわたって継続調査が必要と考え,初期の3年間は(株)学研ホールディングスの支援をいただくことができた。全国的には,一部の抽出された子どもを対象に文部科学省が調査を行っている産婦人科の実際 Vol.67 No.4 20182 震災による子どもたちの変化と対応連載3回菊池信太郎*東日本大震災と福島県郡山市の子どもたち

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