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306おそらく被災した他の市町村ではそう多くはなかったと思われる。4.屋内遊び場の設置 屋内のみに制限された生活環境は,子どもにとっては非常に厳しいものであった。子どもは動きたくても動けない,外に出たくても出られず,家では静かにしていることを強要され,学校・幼稚園でも思いっきり体を動かすことができない状況がしばらく続いた。子どもの毎日は,成長(体が大きくなること)と発達(いろいろなことができるようになること)の連続の時間であり,身体を動かす経験が様々な身体能力を伸ばす。年齢と発達段階に応じた経験が必要であり,外部からの様々な刺激を受けなければならない。特に運動能力に関しては,幼少期のうちに36種に及ぶ様々な身体の“うごき”を,いかに多種類,長時間にわたって経験したかが,その後の能力向上に影響を及ぼすと指摘されている(図2)4)。 保護者が安心できる環境で子どもが体を思い切り動かして遊べる場所を作ることはできないかと考えていたところ,偶然にも全国で遊び場事業を展開している株式会社ボーネルンド(本社 東京)からの支援を受けることができた。震災の年の夏に3日間という限られた時間ではあったが,街中のビルの空きスペースに遊び場を作り,約3,500人の子どもが遊びに来た。夏の終わりにもかかわらず,子どもの肌は一様に白く,久しぶりに汗だくになって遊んでいる姿は,喜ばしくもあり痛々しくもあった。子どもにとって身体を使って遊ぶことが,何よりこれほど大切なことであることを改めて感じた瞬間であった。 このイベントがきっかけとなり,郡山市内に本社を構える株式会社ヨークベニマル(大手スーパーチェーン)の大髙善興社長より,「土地,建物,金銭面において支援をするので,是非常設型の遊び場を考えてほしい」との申し出を受けた。「郡山の子どもたちへのクリスマスプレゼント」を合い言葉に,市内に1,900 m2の大規模屋内遊び場を設置するに至った。筆者が提案したコンセプトをベースに,関係企業や行政の必死な努力により震災同年の12月23日にオープンした。提案からオープンまでわずか3カ月という超短時間で完成に至ったが,この施設は地域の大人が気持ちを1つに,地域の子どものために全力を注いだ宝物であった。全世界にその名を届くことを願い,『PEP Kids Kori-yama』と命名した。「PEP」とは「元気な」とバランスをとる動き平衡系動作体を移動する動き移動系動作用具を操作する動き力試しの動き操作系動作〔©中村和彦(山梨大学大学院教育学研究科),©NPO法人 郡山ペップ子育てネットワーク〕 図2 運動神経がよくなる36の動作

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