569際にはそれらの課題はおそらくかつてから存在していた問題や,あまり注目されなかったことだったのかもしれない。震災後の福島では,今の日本全国の子どもがおかれている不安定な状況や,日本が抱えている様々な問題点を顕著に見せてくれたのだと思う。 また1つの教訓として,私たちには科学というものを素直な心で理解するという姿勢と,常に客観的な立場で物事を判断する力が不足していたということが挙げられる。今回の震災では,氾濫する雑多な情報のなかから適正な情報を選別して入手し,情報の裏に隠れた背景や意味を読み取る力が必要であり,情報リテラシーの力量を試された。不安という感情を,知性がどうコントロールすることができるのか。その能力を唯一高める方法は,幼少期からの教育にあるのではないかと考える。極度な人口減少に瀕した日本では,働く人口を増やして経済を活性化することが主眼となり,待機児童の解消と保育料無料化が喫緊の課題のような議論がなされているが,本当に必要なことは,いかに子ど謝辞: 震災から7年というこれまでの出来事を振り返るには丁度よい時期に,このような貴重な機会をいただきました。改めて様々なことを思い出し,今後の活動方針を考えるきっかけとなりました。ご推挙いただきました本誌編集委員の末岡浩先生にこの場を借りて深謝いたします。文 献 1) 桜井 秀:リ・プロダクティブヘルスアンドライツプロジェクトチームの活動について.郡山医師会報86:3-4,2017もが安心していられる居場所を社会が創り,健やかな心と身体を育みながら,子どもが自ら考え判断できる能力を持てるような教育をしっかりと行うことではないかと思う。震災が教えてくれた様々な課題と教訓を私たちはしっかりと受とめ,新しい日本の社会を創造する糧にしなくてはならない。 図4 Joyful子育て福島プロジェクト産婦人科の実際 Vol.67 No.5 2018
元のページ ../index.html#22