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最 新563産後すぐの母親支援や教育保育現場での性教育活動に加え,放射線環境下での子育てや放射線に対する過度な不安を和らげる相談や,オムツやミルクなどの配給を行った。 2012年初頭,筆者は当時警視庁から福島県警察本部に赴任したばかりの小笠原和美氏(現警察庁捜査支援分析管理官)と同窓が縁で出会った。筆者らの活動を紹介し,大変興味を持っていただいたとともに,氏がライフワークとしている性暴力の撲滅と性被害者の救済活動との連携を模索した。当時福島県医師会副会長かつ郡山医師会長であった父と協働し,福島県では『SACRAふくしま(性暴力等被害救援協力機関)』が,郡山市では『リ・プロダクティブヘルスアンドライツプロジェクトチーム』が発足するに至った。前者は,ふくしま被害者支援センター・福島県産婦人科医会・福島県警察・福島県・福島県教育委員会の五者が連携・協力して,性暴力等の被害者支援ネットワーク活動として「性暴力等被害専用電話」を開設している。一方 従来,子どもの健康教育は学校と家庭とが連携することが大前提であったが,社会情勢の変化から徐々に難しくなってきている。震災がきっかけとなり,妊婦支援が性教育へ拡大したことや,肥満などの健康課題がより重要視された。しかし,成果として現れるには多くの課題があり,子ども自身が考え行動するように行動変容を促す取り組みが鍵を握る。震災により大きな影響を受けた福島が,何を学び,そしてこれからどこへ向かうのか。真の復興に向けたこれからの取り組みが問われている。* S. Kikuchi 菊池医院1.妊婦や産褥期のお母さん支援から性教育への拡大 わが国に前例のない大規模放射線拡散事故では,その後に何が起きるのかまったく不明であった。唯一参考になったのは,1986年に発生したチェルノブイリ原発事故である。チェルノブイリでは,放射線の被曝による直接的な健康被害と,人々の生活環境の変化などで生じる間接的な被害があった。特に,間接的な健康被害の例として,アルコール依存症や自殺者,人工妊娠中絶数の増加があった。筆者らの活動『郡山市震災後子どもの心のケアプロジェクト』では,こうした点にも早期から注目していた。 郡山市内では,助産師らが中心となって「リプロダクティブ・ヘルスを考える会」(代表:宗形初枝 郡山市介護病院看護部長)を2005年に結成し,子育て支援と性教育活動の普及に努めていた。同会のメンバーには当初からプロジェクトに参加していただき,それまでの妊娠中や産婦人科の実際 Vol.67 No.5 20183 福島から子どもを育む理想的な社会を創る連載3回菊池信太郎*東日本大震災と福島県郡山市の子どもたち

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