小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩Non-corticosteroid systemic immunosuppressive therapy for pediatric uveitisⅥ佐田幾世 Ikuyo Sada 広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学原田陽介 Yosuke Harada はらだ眼科(広島県)ステロイド以外の小児ぶどう膜炎ステロイド以外の小児ぶどう膜炎の全身性免疫抑制療法の全身性免疫抑制療法ぶどう膜炎33はじめにはじめに 小児ぶどう膜炎では自覚症状の訴えが少ない傾向にあり,特に非感染性ぶどう膜炎の多くは慢性の経過を特徴とする。そのため眼科を受診した時点で既に慢性炎症に伴う合併症を発症しているケースも少なくない。近年の海外の研究では,小児ぶどう膜炎患者の約70%が少なくとも1つ以上の眼合併症を有し1),成人患者に比べ視力喪失のリスクが高いと報告されている2)。眼・全身合併症 合併症は炎症に起因するものと,ステロイド治療やその他の要因により二次的に発生するものがある。炎症による眼合併症は,帯状角膜変性,虹彩後癒着,続発緑内障,併発白内障などが挙げられる3)。ぶどう膜炎・基礎となる全身性疾患の治療により起こり得る眼合併症は,グルココルチコイド(GC,ステロイド)による高眼圧症(ステロイド緑内障)や白内障(ステロイド白内障),免疫抑制による感染性網膜炎などがある。また,GC全身投与に伴う全身性の副作用で,小児において比較的高頻度に認められるものとして,成長障害と骨粗鬆症が挙げられる。近年の海外の症例集積研究では,小児ぶどう膜炎において,1つ以上の合併症を有する頻度は約70~ 76%であり4),白内障が44~52%,緑内障が23~ 33%,帯状角膜変性が13~37%,虹彩後癒着が 19~54%との報告がある(図1)。治療総論 非感染性慢性ぶどう膜炎の初期治療は,ステロイド点眼による局所治療が基本であるが,局所治療に抵抗性を示す症例,点眼の減量により再燃をきたす症例,炎症遷延化により眼合併症をきたす症例などにおいては,全身的な免疫抑制療法が必要となる。主要な薬剤として全身性GCが用いられるが,長期間の使用は骨粗鬆症,成長抑制,副腎機能低下などの重篤な副作用を引き起こす可能性がある。そのためGC以外の免疫抑制剤の使用は,GCの使用量を減らし副作用を軽減する目的(steroid sparing effect)で重要な役割を果たす。近年,海外では早期の全身性免疫抑制療法の導入が合併症の予防に有効であるとの報告が増えており5),特に疾患修飾性抗リウマチ薬(disease-modifying antirheumatic drugs:DMARDs)が標準治療とし12小児ぶどう膜炎,非感染性ぶどう膜炎,疾患修飾性抗リウマチ薬,DMARDs,全身性免疫抑制療法Key Words1030
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