動的検影法による オーバーレフラクション 定期検査において毎回,調節麻痺薬を使用するのは,患児にも医療者にも負担となるかもしれない。近視を主とする症例では,動的検影法(図2)を用いて,およその眼鏡処方や再処方のタイミングを判断することができる。 動的検影法は他覚的調節検査に分類され5),静的検影法で必要な前置レンズを使わない。代わりに,調節視標(高空間周波数・高コントラストで,患児の興味を引く図形や人形など)を,レチノスコープ直前の同軸上に掲げ,これを患児に注視させながら検査する。視標は実空間にあり,両眼開放下で検査するため,一般的なオートレフと比べ,ボランタリーな調節運動が介入しにくい。 近視の強度を評価する場合には,まず1mの距離で光束(開散光)をスキャンする。眼底反射が中和パターンを示せば,調節遠点は1mより遠方にあり,-1Dを超える近視はない。眼鏡処方は不要で,視力の経過観察のみでよいかもしれない。反射光が逆行パターンを示せば,調節遠点は1mより近く,-1Dより強い近視がある。視力検査の結果と整合すれば,眼鏡矯正の必要性について患児や保護者に説明する。さらに検者は,スキャンを繰り返しながら,レチノスコープと視標とともに徐々に眼に接近する。初めて中和パターンが観察された距離が調節遠点(m)に相当し,その逆数が近視の屈折度数(D)である。たとえば,0.2mで中和されれば,屈折度数は-5Dである。 この測定はスキャンした経線方向の情報に限られる。乱視の有無を判断するには,スキャン方向を変えて異なる経線で確認する必要がある。あらかじめオートレフで一定の乱視があると判断される場合は,4b中 和aaRTFPA中 和b逆 行cc図2 動的検影法による調節遠点(近視強度)の評価レチノスコープ(R)と調節視標(T)を手に持ち,被検者に視標を注視させ,検者と視標はゆっくりと検眼から後方へ移動する。眼底反射が中和から逆行に変化する位置が調節遠点(FPA),その逆数が近視の強度(D)である。水平経線における評価を示す。Ⅲ 近 視926
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