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が,安定して良好な視力を得るには,-0.5~-1Dがおおむねのカットオフ値となるだろう。逆に3歳未満の幼児では,不同視や斜視がなければ,-3Dより軽い近視は矯正不要と考えられている2)。調節運動と近視の過大評価 一般に幼児・小児の屈折検査では協力が得られにくく,自覚的検査より他覚的検査のほうが信頼性が高い。このため眼鏡処方するかどうかの判定には,裸眼視力だけでなく,他覚的検査から得られた近視の強度(D)を重視すべきである。ただし他覚的検査においても,正確な屈折度数の評価は容易ではない。なぜなら,この年齢層では10Dを超える強い調節力があり,検査中にボランタリーな調節運動が加わると,近視は過大評価されるためである。調節麻痺下の屈折検査 この問題を解決するには,調節麻痺薬(表2)が有効である。特に調節緊張(仮性・偽近視)が鑑別診断として疑われる場合には必須となる。 サイプレジン®1%点眼液(シクロペントラート塩酸塩,参天製薬)は,強力な調節麻痺効果が得られる。点眼による羞明や近見障害は1~2日続き,眠気や結膜充血が約18%にみられる3)。筆者は,まずベノキシール®点眼液0.4%(オキシブプロカイン塩酸塩,参天製薬)を点眼した後,5分間隔でサイプレジン®1%を2回点眼し,45~60分後に屈折検査を行っている。サイプレジン®はpHが低く点眼時の刺激が強いため,反射性流涙で薬液が希釈され効果が低下しやすい。追加点眼を繰り返せば,希釈薬液は鼻粘膜から吸収され,中枢神経症状や発熱を引き起こすリスクがある。またベノキシール®によって,角膜透過性が向上し,薬液の前房移行が促進されるという利点もある。 ミドリン®P(トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩,参天製薬)は,調節麻痺と散瞳効果の持続が短く,刺激も少ないため使いやすい。5分間隔で2回点眼し,30分後に屈折検査を行う。調節麻痺は比較的弱く,検査中の調節運動を軽減させることができるが,完全ではない点に留意する4)。23- 0.5 D- 1.0 D- 2.0 D0 D2.01.00.50.2視 力13426578瞳孔径(mm)0図1 瞳孔径と裸眼視力の関係 (文献3より改変して転載)表2 調節麻痺薬の比較商品名アトロピン点眼液1%サイプレジン®1%点眼液ミドリン®P点眼液使用法1日3回3~5日間10分間隔で2回点眼点眼開始60分後5分間隔で2回点眼点眼開始30分後効果強力強力不完全持続時間10~15日間1~2日3~6時間主な副作用羞明,近見障害心悸亢進,頭痛,発熱顔面紅潮羞明,近見障害結膜充血,眠気羞明,近見障害禁忌緑内障緑内障緑内障Vol.67 No.10 2025925

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