小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩Prescribing glasses for myopic eyes of infants and childrenⅢ長谷部 聡 Satoshi Hasebe 川崎医科大学眼科学2教室幼児・小児近視眼への眼鏡処方幼児・小児近視眼への眼鏡処方近 視33はじめにはじめに 昨年,日本弱視斜視学会,日本小児眼科学会,日本近視学会,日本眼光学学会,日本視能訓練士協会は,連携して「小児眼鏡処方の手引き」を作成し,日本眼科学会のホームページに公開されている(https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=762&dispmid =909)。しかし,眼鏡処方には学派や慣習に違いがあり,必ずしも眼科医の中で一定のコンセンサスがあるわけではない。本稿では,幼児・小児の近視眼への眼鏡処方に関する考え方や注意点について私見を述べたい。眼鏡処方のタイミング 表1に,文部科学省の視力判定区分を示した。この区分では,視力が0.7以上であれば,教室の後ろの席からでも黒板の文字を読むことができるとされており,これが眼鏡を処方(再作)するかどうかのひとつの基準となるだろう。また,視力0.3~0.7の範囲では,「必要に応じて眼鏡を使用する」とされているため,少なくとも眼鏡は手元に用意しておくとよい。 しかし,判定区分は近視の症状の一側面を示すに過ぎない。図1はAtchisonらの報告1)に基づき,瞳孔径と裸眼視力の関係を近視度数別に比較したものである。瞳孔径が1~2mm以下では回折の影響で視力が低下するため,2mm前後で視力は最大値をとる。さらに瞳孔が拡大すると網膜像のボケにより,再び視力は低下する。-1Dでは明所の瞳孔径(2~3mm)で視力0.7以上が得られるが,瞳孔径が4~6mmに広がると0.5以下に低下する。一方,-0.5Dなら瞳孔径1~5mmで視力0.7以上を維持可能である。乱視や高次収差の影響もある1近視,眼鏡処方,小児,調節麻痺,動的検影法,myopia, spectacle prescription, children, cycloplegia, dynamic retinoscopyKey Words表1 文部科学省の視力判定区分判定区分視力症状A1.0以上後ろの席から黒板の文字が良く読めるB0.9~0.7後ろの席から黒板の文字がほとんど読めるC0.6~0.3後ろの席では黒板の文字が読み難いD0.3未満前の席でも黒板の文字が十分読めない924
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