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小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩Ⅸ宇井牧子 Makiko Ui CS眼科クリニック(東京都)小児眼科領域における病診連携小児眼科領域における病診連携その他33はじめにはじめに 小児の視覚感受性は1歳半までが最も高く,その後徐々に低下するが,視機能発達は8歳頃まで続くとされる1)。一方で小児は自ら症状を訴えることが難しく,医療者が的確な所見をとって早期に異常を発見し,適切に対応する体制が求められる。 地域の小児を専門とする眼科医は,小児科や保健所からの紹介を受けて正常と異常を見極め,必要に応じて高次医療機関への紹介を判断する役割を担っている。また,症状が落ち着いた段階で地域の一般眼科へ逆紹介を行うなど,双方向の病診連携も重要である。さらに,学校健診や保育施設での視力スクリーニング結果をもとに,異常の早期発見と支援体制の構築を行うことも,小児の視覚発達を促す支えとなる。ロービジョン児への対応には,医学的診断に加え心理的・教育的支援を含む盲学校との連携が重要であり,保護者にとっても,正しい情報と支援への早期のアクセスが生活の質を大きく左右する。本稿では,医療連携が求められる場面について,臨床的な例をもとに整理していく。小児科との連携小児科に依頼するケース1 児の所見を的確にとったうえで,全身疾患の関与が疑われる場合や,眼科単独での対応が困難と判断される場合には,臆せず小児科に紹介する姿勢が重要である。具体的には,以下のような所見が該当する。 ⚫固視不良,追視不良や原因不明の視力不良 ⚫後天発症の斜視や変動を伴う斜視 ⚫後天発症の眼球運動異常や眼球運動障害 ⚫後天発症の眼瞼下垂 ⚫ ぶどう膜炎,視神経乳頭腫脹,視神経低形成 など これらの所見は,中枢性疾患,重症筋無力症,自己免疫疾患,感染症,血液疾患,各種症候群などの可能性を含んでおり,精密検査を小児科に依頼することが望ましい。特に乳幼児においては画像診断に鎮静を要するため,入院可能な小児科との連携が必要となる。 また,強いアレルギー症状を伴う巨大乳頭結膜炎やアトピー性眼疾患についても,小児科や皮膚科で未診断の場合があり,アレルギーの原因検索と全身的管理を依頼することが治療による根本的改善につながる。心因性視力障害やチックといった機能性疾患は,児のストレスと関連があり,経過観察で自然軽快する例が多いが,長期化する場合には小児精神科の関与が望ましい。また,小視症や大視症,歪視,色の変化などを訴える「不思議の国のアリス症候群」ではまず眼科を受診することが多いが,小1小児眼科,視機能発達,病診連携,学校健診,盲学校Key WordsInterdisciplinary and interfacility collaboration in pediatric ophthalmology1124

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