図4 流涙症状を訴える結膜弛緩症の手術前(上),手術後(下)切除法〔3分割切除法(横井法)〕では,外眼角から涙点までの涙液メニスカスの完全再建と結膜弛緩を意味する結膜の皺襞の消失が,術後にほぼすべての例で得られるが,本症例では,術前に上方球結膜にも弛緩があり(右上),それが,術後に切除されて消失している(右下)。また,半月ひだ切除も併用しているため,涙点の存在部まで,下方涙液メニスカスの遮断がみられない。Ⅰ 角結膜おわりに結膜弛緩症に対する ベストの手術CChには,単純型と円蓋部挙上型があり,円蓋部挙上型にはCPF(capsulopalpebral fascia)の弛緩が関与する。そのため,結膜嚢円蓋部の再建を行ってから,結膜弛緩症に対する手術を行う7)9)。円蓋部の再建は,CPFを部分切除して,角膜下方の弧状の結膜切開縁を下直筋レベルで,強膜に縫着することで得られる。先に述べたように,結膜弛緩症は,結膜疾患というよりも結膜下疾患といえ,結膜下に異常の主座がある。したがって,結膜だけを対象とした治療では,結膜下の異常が処理されないため,完全な治療とはなりにくいことに注意が必要である〔特にリンパ管拡張やリンパ嚢胞を伴っている例では,結膜下の処理が鍵を握る(図5)〕。また,CChに対する手術では,結膜の起伏の可及的消失および外眼角から涙点までの涙液メニスカスの完全再建を目標とする。開瞼器をつけたとたん,これらの治療目標を見失うため,結5膜下の異常を処理したうえで,結膜を伸展させながら,デザインしていくことが最も効果的な手術方法となる。結膜弛緩症の手術に王道はなく,あくまでもテーラーメード的に術後を想定しながら,術中にデザインしていく必要がある。CChを手術可能な近医に紹介する場合,CChのみならず,DE,MGDの合併の有無も調べ,それらが非手術的治療で改善しない場合に,手術適応と考えて紹介する。適切な手術が施行された場合,90%程度,症状は改善するが,100%ではないこと,および,結膜下にリンパ管拡張が発達しており,その異常が顕著な場合(図5)は,結膜下の異常を処理しないと改善し得ないことを考慮して,最適の施設に紹介することが,患者満足度を高めるうえで重要である。1132
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