1CChとは,Bell現象や眼球運動などの機械的な結膜に対する作用により,結膜が強膜から剥離した状態を指し,その発症には,結膜下組織の加齢性変化〔膠原線維の密度が減少し,弾性線維が変性・断裂して,結膜組織の張り(弾性)が低下〕が大きく関与する1)2)。CChの本体は,結膜の弛緩というより,結膜の支持組織の退行性変化に基づく結膜の強膜からの剥離といえる。眼科を受診する60歳以上の患者の98%以上で少なからずCChがみられるというデータもある3)。両眼性であるが,所見や症状に左右差がある場合もある。弛緩結膜結膜弛緩症(CCh)がみられる眼は,涙液層の破壊,瞬目摩擦の増強,涙液の流路の遮断の観点から評価し,最適と思われる点眼治療を1〜3か月ほど試み,改善がみられない場合に,CChを外科的に治療できる施設に紹介する。CChそのものは,点眼治療で解その理由消するわけではないが,CChは,①涙液層の破壊,②瞬目摩擦の増強,③涙液の流路の遮断の3つのメカニズムを介して,さまざまなKey words結膜弛緩症,涙液層の破壊,瞬目摩擦の増強,涙液の流路の遮断,上輪部角結膜炎,3分割切除法(横井法)慢性の眼不快感の原因となる。①,②には,効果のある非手術的治療があり,③は①,②のメカニズムをその上流に持つため,①,②の治療が有効な場合がある。そして,①,②に対する治療が無効な場合,手術治療が必要となる。また,たとえ弛緩結膜に対して切除法以外の手術でCChが改善しても,症状改善が不十分であったり,再発したりする場合は,切除法が必要となるため,それが可能な施設に紹介する。はじめに紹介を考えるタイミング角結膜横井則彦 Norihiko Yokoi 京都府立医科大学眼科学教室CChとは11281128Ⅰ結膜弛緩症(conjunctivochalasis:CCh)は,結膜の弛緩というよりは結膜の支持組織の退行性変化に加えて結膜に対して機械的な作用が加わることにより,結膜が強膜から剥離した状態である。CChは眼科を受診する60歳以上の患者のほとんどで少なからずみられるといわれており,基本的に両眼性であるものの,所見や症状に左右差がある場合もある。今回はCChをクリニックで診療しつつ,どのようなときに外科治療を考慮し紹介を考えるかについて述べる。結膜弛緩が原因と考えられる 主訴の患者の見極め方11
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