Ⅳ 網膜硝子体おわりに5目的とする。従来のレーザー光凝固ではレーザー後の暗点形成やatrophic creepの合併症が起きるため,適応は中心窩外に漏出点がある症例に限られる。また,乳頭黄斑線維束直下の漏出点に対しても施行できない。近年,マイクロパルスレーザーやエンドポイントマネージメントといった低侵襲な閾値下レーザーが登場し,網膜組織を破壊しない条件,あるいは再生する程度の低エネルギーの条件でのレーザー照射が可能となった。これにより,従来のレーザー光凝固では適応外であるCSCを閾値下レーザーを用いて治療することができるようになった。漏出点が明瞭な場合は漏出点を直接照射し,漏出点が不明瞭,もしくは中心窩中央からの漏出の場合は閾値下のグリッドパターン照射を行う。一方,PDTはインドシアニングリーン蛍光眼底造影で観察される脈絡膜血管透過性亢進の範囲に施行し,脈絡膜血管からの漿液の漏出を減弱させることでSRDを消退させることを目的とする。照射範囲はインドシアニングリーン蛍光眼底造影の結果を指標として決定するため,慢性化して漏出点が不明瞭なCSCに対しても施行可能である。また,照射範囲に中心窩を含めることができるため,中心窩中央から漏出があるCSCも治療が可能である。ただ,PDTは保険収載されておらず,適応外治療であるため,倫理委員会の承認を得た専門施設が自費診療で行うハードルの高い治療である。合併症を防ぐためにAMDに対して行う標準的なPDTより設定を減じた低侵襲PDTが行われるが,減じる条件には静脈内投与するベルテポルフィン,レーザー照射時間,レーザー出力があり,施設間で統一されていない。現在保険承認を目的としたCSCに対するレーザー照射エネルギー減量PDTの有効性および安全性を検証する第Ⅲ相多施設共同医師主導治験が京都大学,東京女子医科大学,千葉大学,関西医科大学で行われている。低侵襲PDTは現時点でCSCに対する最も治療効果の高い治療とされているが5),PDT施行時の視力不良と高齢はPDT不成功の要因であることから7),漫然と経過観察をせずに適切な時期に施行することが重要である。紹介元から逆紹介された 後の対応紹介先での治療によりSRDが消失し,その後の経過観察目的に患者が逆紹介された後も,前述のCSCのリスク因子を取り除く努力を継続する。また,前述のようにCSCの一次的原因は脈絡膜にあることから,脈絡膜に注目して診察を行う。OCTに脈絡膜観察モード(Choroidal mode, EDIモード)がある場合には,そのモードで撮影すると通常モードよりも脈絡膜の描出が良好になるので活用する。脈絡膜厚には日内変動があることから,可能であれば来院する時間帯を毎回同じにする。CSC眼にPDTを施行すると脈絡膜大血管が細くなることで脈絡膜厚が減少するが,我々の研究ではPDT後にSRDが持続するCSCでは脈絡膜厚が減少しなかった8)。また,PDT後にSRDが再発する際に脈絡膜厚が増加したとの報告もあり9),PDT後にもかかわらず脈絡膜が肥厚したままの症例は再発に注意する必要がある。CSCの視力予後は良好と考えられていることが多いが,SRDが長期に遷延すると視力が不可逆的に0.1程度まで低下する症例も経験する。治療選択肢が広がり,今日では治療ができないCSCは稀である。永続的な視機能障害が起きる前に治療ができるよう,日頃から紹介のタイミングを考えて診療にあたる。1272
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