図5遷延性角膜上皮剝離の症例三者併用療法の角膜上皮剥離施行後1日目(左上)。4日後に角膜上皮は一時的に被覆されたが(中上,右上),角膜上皮の接着障害により角膜上皮剥離を繰り返した(左下,中下)。血清点眼と治療用ソフトCLの装用で治癒した(右下)。1058重要である。それに加えて,消毒剤や抗真菌薬の点眼加療や抗真菌薬の全身投与によりアメーバの増殖を防ぐ三者併用療法が効果的な治療方法である10)。病巣搔爬は初期から必ず行い,点眼麻酔下で病巣部を擦過する。初期には上皮,移行期や完成期には潰瘍底の実質部も擦過する必要がある。病勢の強い時期は週2〜3回病巣搔爬し,角膜の病変改善とともに漸減する。消毒剤点眼には主に0.02〜0.05%グルコン酸クロルヘキシジン,0.02%ポリへキサメチレン・ビグアナイド,0.1%プロパミジン・イセティオネイトなどが用いられる。抗真菌薬点眼には5%ピマリシン,0.2%フルコナゾール,0.05〜0.1%ミコナゾールが用いられる。上記の消毒剤と抗真菌薬を組み合わせ30分ごとの点眼より開始し,角膜の病変改善とともに漸減する。改善がみられ点眼を中止する時は副作用の強いものから中止する。抗真菌薬全身投与にはフルコナゾール,イトラコナゾールの内服やミカファンギン,ミコナゾールの点滴静注などが用いられる。点眼薬と重複しない薬剤を1種類選択し全身投与するが,副作用が強ければ中止する。AK治癒後に病巣搔爬の繰り返しと薬剤毒性により遷延性の角膜上皮剥離を合併する場合は血清点眼や治療用ソフトCLも検討する必要がある(図5)。アカントアメーバに著効する薬剤がないのが現状であり,基本的には薬剤耐性をもつアメーバのシスト化が治療抵抗性の原因となるため,最近では新規治療薬開発に向けさまざまな研究がなされている。そのひとつとしてオートファジー阻害剤がある。アカントアメーバのシスト形成にはオートファジー関連蛋白質が重要な役割を果たしているため,オートファジーを阻害することでアメーバのシスト化を防ぎ,消毒剤や抗真菌薬に敏感なトロホゾイトの状態でアメーバ数を減少させる狙いがある。またオートファジー阻害剤を投与することで,消毒剤や抗真菌薬がより低濃度で使用で
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