図1アカントアメーバのシストAK患者のソフトCL保存液には多数のシストがみられる。1原 因本症は,淡水や土壌など自然界に広く生息する原生動物のアカントアメーバが,傷害された角膜に侵入増殖することで発症する。アカントアメーバは栄養体(トロホゾイト)とシストの2つの形態をもち,トロホゾイトは細菌などを餌として増殖するが,悪条件下ではシスト化する。シストは乾燥や熱に強く薬剤耐性をもつ(図1)。AK発症の原因としてはコンタクトレンズ(contact lens:以下,CL)によるものが約9割,外傷によるものが約1割,CLによる症例では約9割がソフトCL,1割がハードCLといわれている9)10)。なかでも* Takayoshi SUMIOKA 和歌山県立医科大学医学部眼科学講座K ey words :アカントアメーバ,角膜感染症,コンタクトレンズ1055アカントアメーバ角膜炎(Acanthamoeba kera-titis:以下,AK)は1974年にNagingtonら1)により欧米で初めて報告され,本邦では石橋ら2)により初めて報告された難治性の角膜感染症である。進行が早く,適切な対処がなされないと重篤な視力障害をきたす病態となる。初期では角膜病変が軽微であるにもかかわらず強い毛様充血と眼痛を訴えるのが特徴的である。誤って副腎皮質ステロイド点眼薬を投与してしまうと一時的には病状が軽減したかに見えるが,その後に一層深刻な病態となり重篤化や遷延化の原因となる3)〜8)。強い炎症と疼痛を伴う角膜炎に対し消炎効果を期待した副腎皮質ステロイド薬の点眼が処方され,一過性に改善するものの治癒しないため患者は転医し,別の医師から紹介される症例に遭遇することがある。早期診断が必要であるが,アメーバ検出による確定診断に至らない症例も多いため,本症例を疑った場合いかに初期に対処するかが重要なポイントとなる。また本稿では迅速かつ簡便にAKを診断できる可能性のある新しいアメーバ検出方法をトピックとして紹介する。住岡孝吉*角膜真菌症アップデートはじめに5アカントアメーバ感染症
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