図9C. parapsilosisによる角膜炎に対するボリコナゾール点眼による治療経過A:ボリコナゾール点眼投与前。Recipient側にも感染巣が確認できる。B:ボリコナゾール点眼投与開始後約5か月。Recipient側も含めて感染徴候は消失した。1053ABでの間,薬物治療をしっかり行うことも重要である。病巣範囲のz軸方向へ深達度の評価が正確に行われればPKP(penetratingkeratoplasty),DALK(deepanteriorlamellarkeratoplasty),LKP(lamellarkeratoplasty)などの術式の選択も精度高く行うことができるが,現状では一般的に困難と言わざるを得ない。角膜移植により前房内に穿破して菌体が前房内に侵入することに抵抗があると思われるが,実際にはPKPを行ったとしても,術中に抗真菌薬を用いて術野の洗浄を行えば,眼内炎にまで進展することはまれと思われる。以下に当院で行っているCandida角膜炎に対する外科的治療の一考を記す。当院では病巣の除去を一義的な目的と考え,基本的には全層で角膜移植を施行している。通常,当院では角膜移植時のrecipientの切除には7.5mmもしくは8.0mmのサイズのトレパンを用いることが多い。病巣を囲いきれるかぎり,より小さいサイズである7.5mmのパンチを用いる。術後は,臓器移植であるためステロイド点眼は通常の角膜移植と同様に行う。角膜移植後に発症したCandida角膜炎において発症時の「病巣の位置」が治療方針の決定に役立つ。移植眼の場合,病巣がgraft内に限局してサイズが小さければ,穿孔していないかぎり薬物治療で完治する可能性ておいたほうが良い。 1 薬物治療Candida属にはボリコナゾールが非常に有効である1)。移植眼でrecipient側にも進行した病巣がボリコナゾール点眼で鎮静化が得られ,治療的角膜移植を回避できる場合もある(図9)。その他,ピマリシン眼軟膏やフルコナゾールの点眼なども有効である。詳細は真菌性角膜炎に関する多施設共同前向き観察研究1)にあるので,是非そちらを参考に自施設で利用可能な薬剤を,諸手続きを取得のうえ,選択すると良い。この多施設共同前向き観察研究の結果を参考にすれば,以前よりかなり精度の高い薬物治療が可能と思える。しかしながら,進行例は薬物療法のみでは難治であり,治療的角膜移植などの外科的治療の準備が必要となる。 2 外科的治療術式については施設間,あるいは術者により考え方が違うと思われる。感染性角膜炎で行う角膜移植は,あくまで治療的角膜移植であり一義的な目的は病巣すなわち病原体の除去である。超緊急の場合は,保存角膜を用いる場合もあり得るが,治療的角膜移植であっても術後に意外と長期間移植片が透明維持できることも多いので,できるかぎり新鮮角膜を用いたい。移植片を手配できるま
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