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図5Candida角膜炎の軽症例病巣部は上皮欠損のサイズより奥に広がる膿瘍のほうが広い「氷山の一角」パターンを示す。早期の軽症例では比較的充血も軽度で前房蓄膿も認めない。病巣部以外の角膜浸潤も軽度である。本症例では病巣部よりC. albicansが検出された。角膜移植後の症例。3角膜擦過諸検査と診察が終われば,病巣部角膜の擦過を行う。初診時に必ず行うことが重要である。擦過時の感触は病原体の推定に有用である。Candidaでは細菌と同様に融解傾向が強いことが多い。一方,糸状菌では角膜実質のlamella構造が保たれていることが多い。塗抹検鏡にて酵母形(図8A,B)を示す場合は,大きさは3〜4μmでグラム陽性球菌よりも明らかに大きく,類円形から楕円形の形態を取る。一方,仮性菌糸(図8C)の場合は節状構造が観察できる。いずれの場合もファンギフローラYⓇ染色で観察可能である。1050発症し,進行するとrecipient側に広がる。時に,数日の経過で急速に進行することもある(図6)。一般的に融解傾向も強く,進行例では角膜穿孔(図7)をきたすこともある。Candida角膜炎の多くの症例では病巣はひとつのみで衛星病巣を認めない。Candida角膜炎では角膜移植眼と非角膜移植眼で分けて考えるとわかりやすい(表1)。自験例ではCandida角膜炎は,特にC. albicansにおいて角膜移植後の症例が多かった。典型的にはステロイド点眼中で縫合糸が残存している症例で,いわゆる縫合糸感染が疑われた。類円形の膿瘍を示す典型的なものが多い一方,進行すれば治療は非常に困難で,治療的角膜移植などの外科的治療が必要となる症例も多い。急速に進行する症例もあるので十分に留意が必要である。角膜移植後のCandida角膜炎の発症の予防のためには移植後の一定の時期における縫合糸の全抜糸とステロイド点眼の中止が有効と思われる。しかしながら,眼外傷時の創離開や重症化の予防の観点からは必ずしも全抜糸が良いとは言えない。また,角膜移植後に長期経過した症例であってもステロイド点眼の中止により拒絶反応を発症することをしばしば経験する。これらの点については今後,さらなる研究が必要と言える。一方,非移植眼にはC. al-bicansの症例もあるものの比較的C. parapsilosisの症例が多い印象である。病巣は類円形を呈するものは少なく不規則な形状のものが多い。薬物治療のみで完治する症例がC. albicansと比べて多い印象である。また,角膜感染症では眼底は透見不能であることが多いため,初診時に超音波検査により硝子体混濁の有無を確認しておく必要がある。

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